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射手の統領098 ガタニ出航
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射手の統領
Zu-Y
№98 ガタニ出航
昼まで睡眠を取り、大人嫁たちは実家へ、俺とキョウちゃんズはガタニへ帰還する。皆で世話になった村長へ別れを告げに中央広場へ行った。
「村長、世話になったな。」
「アタルさん、とんでもねぇことになってるすけ、聞いてくんろ。」
俺たちが黒焦げにしたキラートレントは巨木、人面樹も26体が黒焦げで、黒焦げになってない33体は、12体が袈裟切り、9体がすっぱり輪切り、9体がへし折られ、3体が立ち枯れてたそうだ。立ち枯れてた3体は、サジ姉の状態異常攻撃を受けた後、サヤ姉たちに寄ってトドメを刺されずに枯れてった奴だろう。
「木炭も材木も薪もすんげぇ量ら。回収には何日も掛かるらろな。売ったら飛んでもねぇ金額になるすけ、全部貰う訳にはいかねぇって村の者も言うとるら。」
「いいよ、いいよ。昨日の夕餉の礼だって言ったろ。人面樹に荒らされた村の田んぼの復興資金にして、あとは村人たちに手間賃をはずんでやってくれよ。それからギルドに、セプトに世話になったって、俺たちを売り込んどいてくれたらありがたいな。」
「そりゃぁもう、実際世話になってるすけ、目一杯売り込むけろもな。」
「じゃぁ俺たちはこれでな。」
「ちょっと待ってくんろ。今夜は村で宴をやるすけ、ぜひ参加してってくんろ。」
「いやぁ、でもなぁ。俺たちは旅の途中でさ、廻船の修理が終わったら出航するんだよ。」
「そんなぁ。廻船の修理は今日、終わるらか?」
「いや、分からんな。じゃぁ、ガタニでそれを確認して、修理にまだ掛かるようならトヨサにもう1泊するよ。」
「そうしてくんろ。」
「分かった。
じゃぁそういう訳だからさ、もう1泊することになったら、ガタニからトヨサまで、流邏矢でピストン輸送するよ。」大人嫁たちは頷いた。
俺は皆を待たせておいて、流邏石でガタニに飛び、廻船の修理状況を確認した。修理の完了は明日、出航は明後日の昼と言う予定を確認して、流邏矢でガタニに戻った。ガタニにもう1泊することを村長と嫁たちに告げた。
昨日、俺から伯母御たちに西都織の反物を渡したから、サヤ姉とサジ姉は笹団子を手土産に、ホサキとアキナとタヅナは、笹団子と西都織の反物を手土産に、それぞれ流邏石で実家に飛んで行った。
大人嫁たちは、実家で各家当主に対して、橙土龍攻略から、オミョシ分家代替わりへの介入と婚姻同盟の締結、オミョシの隠居=前の権座主追放への加担、各家副拠への表敬訪問、次ノ宮殿下からの朝廷指名依頼のクエストの受注までを、報告しに行ったのだ。
午前中に回収した木炭と材木は、馬車に積まれてガタニへ運ばれて行った。この回収が人面樹3体分だと言うから、午後も同じだけ回収するとして、人面樹だけでちょっこら10日は係りっ切りになるな。キラートレントは相当でかいから、ギルドに回収を頼むことになるかもしれん。
村長夫人が仕切っていた村の女衆による炊き出しは、木炭と材木の回収から、昼にいったん戻って来た男衆に昼餉を供した後、そのまま夜の宴の準備に引き継がれて行った。
俺は村長に、西都で仕入れた西都織の反物や千枚漬、商都で仕入れた装飾品や化粧品を出店していいかと尋ねると、ふたつ返事でOKが出た。大人嫁たちが帰って来たら、臨時店舗開店の相談をしよう。
午後はキョウちゃんズと一緒に、のんびり馬たちの手入れを行った。ブラッシングすると、どいつもこいつも喜ぶ。足回りもしっかり見て、蹄鉄の装着具合も確認した。すべて良好だった。
馬たちはのんびり干し草を食んでいるが、実は塩と砂糖が好きなので、おやつとして上げると喜ぶ。塩はミネラルの補給、砂糖は糖分の補給だ。もちろん上げ過ぎは禁物だがな。
馬の世話が終わった昼下がりにガタニギルドへ飛ぶと、サジ姉とアキナが帰って来ていた。すぐにふたりにハーネスを装着させて、流邏矢でトヨサに飛んだ。
村長から、夜の宴での出店許可をもらったことを告げ、ひと息ついたら出店準備をしてくれるように頼んだ。再びガタニギルドへ飛んで、残りの3人を待つついでにギルドへトヨサクエストの達成報告をすると、受付が大慌てで奥へ報告に行き、ギルマスが出て来た。
「あんたがセプトのアタルか?」
「ああ、そうだが。」
「俺はガタニのギルマスのコシジリら。
さっき、トヨサの衆からすんげぇ量の木炭と材木が運び込まれてな、買取部門は大わらわなんらけろも、セプトがひと晩で人面樹59体とキラートレント1体を倒したっちゅーのは、ほんとのことらろか?」
「ああ、そうだな。討伐個体の回収と、ギルドでの換金はトヨサの衆に頼んだ。」
「キラートレントらけれも凄ぇのに、人面樹もとんでもねぇ数らすけ、クエストの評価と報酬を見直さなきゃなんね。すまんけろも、明日また来てくれるか?」
「ああ、いいぜ。」
「じゃ明日な。」コシジリはギルマスルームに帰って行った。
その後、サヤ姉、ホサキ、タヅナもガタニギルドに戻って来て、順次、トヨサにピストン輸送した。
中央広場で大きな篝火が焚かれ、夜の宴が始まった。村人総出で篝火のまわりで呑めや歌えや踊れやの大騒ぎである。人面樹の木炭や材木や薪の売り上げが、村人に分配されたのも大きい。
北斗号は移動店舗を開き、懐の潤った村人が、トヨサでは珍しい西都織や千枚漬、商都の装飾品や化粧品に群がって、商品は飛ぶように売れた。在庫のほぼ1/4が掃けたところで、村人のほとんどに商品が行き渡り、店は一段落着いた。
今夜の売上はざっと大金貨2枚分。なんか今日のギルドでの、木炭などの売上の倍以上の金が、出張店舗で売上げられてるんだけどいいのかな?笑
ま、これから10日間は臨時収入が続くし、きっと大丈夫なのだろう。
その後、俺たちも宴に加わって、呑めや歌えや踊れやと大騒ぎした。大人嫁たちも村長のどぶろくを呑んで絶賛し、キョウちゃんズは干し柿と笹団子ときな粉の粽を腹いっぱい食い、俺はようやく村長と一緒にどぶろくを酌み交わすことができて、楽しい夜を過ごしたのだった。
翌日、村長宅で朝餉を馳走になった後、楽しかったガタニを後にして、北斗号は約2時間の道程をガタニに帰った。
昼前にはガタニに着いて、キノベ陸運ガタニ支店に北斗号を預け、ガタニギルドに出向いた。
濃紺の外套を身にまとった俺たちがギルドに入ると、そこら中から注目の視線が集まる。
受付に行くと、報酬は大金貨2枚にもなっており、アキナとタヅナがBランクへ昇格した。これにより、セプトはAランクパーティに昇格したのだ。
俺たちが来たと聞いて、ギルマスのコシジリも出て、ギルマスルームに案内された。
「噂には聞いてたけろも、濃紺の規格外ちゅーのはほんとに規格外らな。」
「今回は運が良かっただけさ。」
「何を言うとるんら。ところれ、あんたら、二の島に行くんらな。」
「ああ、藍凍龍が暴れてて、シカオの畜村が雪に埋もれて閉じ込められてると言うので、藍凍龍を狩って、シカオへの補給物資の搬入するクエストだ。」
「藍凍龍を狩るんけ?操龍弓と封龍矢がないと無謀ら。あ、アタルは射手らな。もしかしてユノベ所縁の者け?」
おっと、コシジリはいきなり核心を付いて来た。操龍弓と封龍矢を知ってると言うことは、ユノベ本拠のテンバかユノベ副拠のガハマにいたんだろうか?
「コシジリさん、あんたも射手か?もしやテンバかガハマに来て修行したのか?」
「そうらよ。俺も射手ら。30歳までテンバにおったんら。ひょっとしてアタルは、長の坊のお子か?」長の坊とはまさか親父のことか?コシジリは50台半ばってとこだな。親父が生きてたら35歳だから、コシジリが30歳までガハマにいたってことは、当時の親父は10歳ぐらいか?それなら、長の坊と呼ばれてそうだな。
「コシジリさんの言う長の坊と言うのが、亡くなったユノベの先代棟梁なら、俺の親父どのだ。」
「おお、やはりそうらったのか!今は二の坊たちがユノベの棟梁代理らと聞いてるすけ、アタルが次期棟梁なんらな。」
「ああ、そうだな。」
「テンバか、懐かしな。そう言えば、お転婆のふたりも元気け?動の嬢と静の嬢ら。確か武家に嫁いらと聞いてるんらろも…。」
「ああ、ふたりとも、今でもいい年してお転婆のじゃじゃ馬だぞ。」
「ちょっとアタル!」「アタル…言い過ぎ…。」
「ん?ひょっとして…」コシジリがサヤ姉とサジ姉の方を見て首を傾げた。
「私はトノベ・サヤ。ギルマスの言う動の嬢の娘よ。」
「私は…ヤクシ…サジ…。静の嬢の…娘…。」
「おっと、こりゃ失礼したな。嬢たちには内緒にしてくんろ。あの嬢たちは、おっかねぇすけ。」コシジリが頭を掻いて笑い、ふたりも苦笑いした。
「アタル、金剛鏑は足りてるけ?」コシジリが聞いて来た。
「取り敢えず5個はあるが、そのうち3個は使っているから、残りは2個しかない。コシジリさんは金剛鏑について何か知ってるのか?」
「3個使ってるって、3体も封じたのけ?」
「ああ。」俺は、3体の七神龍を封じたライ鏑とウズ鏑とシン鏑を取り出してコシジリに見せた。
「おおお、これは…。なるほろなー、神龍の力を宿してるなら、昨日の働きも納得ら。」
「で、金剛鏑について何か情報があるのか?」
「詳しくは知らんけろも、二の島にひとつあるって聞いたことがあるら。函府ギルドで聞いてみたらええらろ。」
「それはありがたい情報だ。まったく手掛かりがなかったからな。」
「そうけ?そらよかったら。アタル、気張りやい。」
それから俺たちは、ガタニでの商売の許可を取って、午後は、キノベ陸運ガタニ支店前で北斗号の移動店舗を開いた。
ガタニはトヨサの数倍の町の規模だが、売り上げはトヨサとほぼ同じ。というか、トヨサの方が良かったぐらいだ。やっぱ、トヨサの村の衆は、俺たちに感謝していっぱい買ってくれたのだな。
トヨサとガタニで、西都と商都で仕入れた商品のほぼ半分が売り捌けたので、山髙屋ガタニ支店でガタニの特産品を仕入れた。まずは米どころガタニの、和酒と煎餅。ガタニの煎餅はピリ辛の小粒煎餅で、カキタネという。これがガタニの和酒のツマミに持って来いなのだ。
それからガタニ上布とガタニ漆器も名が通っている。
そしてキョウちゃんズがイチ押しの笹団子。冷気の術を使う陽士が凍らせた笹団子は日持ちするのでいい。しかしこれは売り物になる前に、すべてキョウちゃんズの胃袋に収まってゆくような気がする。笑
ガタニに着いた日に泊まった宿屋の西洋料理が、大人嫁たちに特に好評だったので、再度泊まりに行くと、部屋はあったのだが、西洋料理は団体予約で満員だった。
宿屋に聞くと、近くにガタニ料理の店があると言うので、そこに行くことにした。この店の看板料理はのっぺい汁で、里芋、コンニャク、人参、レンコン、ギンナン、鮭、イクラ、シイタケやナメコなどを、薄い醤油味のダシで煮た物だ。
素朴な田舎料理で、俺はいたく気に入ったし、嫁たちも大いに満足していたから当たりである。
宿屋に戻って部屋に分かれた。4人部屋、ツイン、デラックスダブルをひとつずつ。今夜は俺とキョウちゃんズでデラックスダブルになった。キョウちゃんズは子供サイズだから、3人になってもまぁいいのである。
キョウちゃんズの成長を促す頂マッサージは、頂&秘部マッサージに、そして全身愛撫へと進化した。すでに吹っ切れた…と言うか無理やり振っ切った俺は「ロリコン」という単語を頭の中の辞書から抹消して、キョウちゃんズをたっぷり可愛がったのだった。
もちろんマイドラゴンもキョウちゃんズに弄ばれて大悦びなのだが…。唯一、俺の良心の呵責を緩和してくれるのが、キョウちゃんズが本当に育って来たことだ。巨乳が苦手で小振りが好みの俺には、今のキョウちゃんズのむにょん具合ならば、ギリセーフと言ってもいいのではなかろうか。いや、いいのである。そう思って納得するしかないのである。
翌日の昼に、廻船はガタニを出航した。キラークラーケンにへし折られたミズンマストはものの見事に修復されていた。見事としか言いようがない、いい仕事である。
明日はアタキ、明後日は函府だ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/8/7
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№98 ガタニ出航
昼まで睡眠を取り、大人嫁たちは実家へ、俺とキョウちゃんズはガタニへ帰還する。皆で世話になった村長へ別れを告げに中央広場へ行った。
「村長、世話になったな。」
「アタルさん、とんでもねぇことになってるすけ、聞いてくんろ。」
俺たちが黒焦げにしたキラートレントは巨木、人面樹も26体が黒焦げで、黒焦げになってない33体は、12体が袈裟切り、9体がすっぱり輪切り、9体がへし折られ、3体が立ち枯れてたそうだ。立ち枯れてた3体は、サジ姉の状態異常攻撃を受けた後、サヤ姉たちに寄ってトドメを刺されずに枯れてった奴だろう。
「木炭も材木も薪もすんげぇ量ら。回収には何日も掛かるらろな。売ったら飛んでもねぇ金額になるすけ、全部貰う訳にはいかねぇって村の者も言うとるら。」
「いいよ、いいよ。昨日の夕餉の礼だって言ったろ。人面樹に荒らされた村の田んぼの復興資金にして、あとは村人たちに手間賃をはずんでやってくれよ。それからギルドに、セプトに世話になったって、俺たちを売り込んどいてくれたらありがたいな。」
「そりゃぁもう、実際世話になってるすけ、目一杯売り込むけろもな。」
「じゃぁ俺たちはこれでな。」
「ちょっと待ってくんろ。今夜は村で宴をやるすけ、ぜひ参加してってくんろ。」
「いやぁ、でもなぁ。俺たちは旅の途中でさ、廻船の修理が終わったら出航するんだよ。」
「そんなぁ。廻船の修理は今日、終わるらか?」
「いや、分からんな。じゃぁ、ガタニでそれを確認して、修理にまだ掛かるようならトヨサにもう1泊するよ。」
「そうしてくんろ。」
「分かった。
じゃぁそういう訳だからさ、もう1泊することになったら、ガタニからトヨサまで、流邏矢でピストン輸送するよ。」大人嫁たちは頷いた。
俺は皆を待たせておいて、流邏石でガタニに飛び、廻船の修理状況を確認した。修理の完了は明日、出航は明後日の昼と言う予定を確認して、流邏矢でガタニに戻った。ガタニにもう1泊することを村長と嫁たちに告げた。
昨日、俺から伯母御たちに西都織の反物を渡したから、サヤ姉とサジ姉は笹団子を手土産に、ホサキとアキナとタヅナは、笹団子と西都織の反物を手土産に、それぞれ流邏石で実家に飛んで行った。
大人嫁たちは、実家で各家当主に対して、橙土龍攻略から、オミョシ分家代替わりへの介入と婚姻同盟の締結、オミョシの隠居=前の権座主追放への加担、各家副拠への表敬訪問、次ノ宮殿下からの朝廷指名依頼のクエストの受注までを、報告しに行ったのだ。
午前中に回収した木炭と材木は、馬車に積まれてガタニへ運ばれて行った。この回収が人面樹3体分だと言うから、午後も同じだけ回収するとして、人面樹だけでちょっこら10日は係りっ切りになるな。キラートレントは相当でかいから、ギルドに回収を頼むことになるかもしれん。
村長夫人が仕切っていた村の女衆による炊き出しは、木炭と材木の回収から、昼にいったん戻って来た男衆に昼餉を供した後、そのまま夜の宴の準備に引き継がれて行った。
俺は村長に、西都で仕入れた西都織の反物や千枚漬、商都で仕入れた装飾品や化粧品を出店していいかと尋ねると、ふたつ返事でOKが出た。大人嫁たちが帰って来たら、臨時店舗開店の相談をしよう。
午後はキョウちゃんズと一緒に、のんびり馬たちの手入れを行った。ブラッシングすると、どいつもこいつも喜ぶ。足回りもしっかり見て、蹄鉄の装着具合も確認した。すべて良好だった。
馬たちはのんびり干し草を食んでいるが、実は塩と砂糖が好きなので、おやつとして上げると喜ぶ。塩はミネラルの補給、砂糖は糖分の補給だ。もちろん上げ過ぎは禁物だがな。
馬の世話が終わった昼下がりにガタニギルドへ飛ぶと、サジ姉とアキナが帰って来ていた。すぐにふたりにハーネスを装着させて、流邏矢でトヨサに飛んだ。
村長から、夜の宴での出店許可をもらったことを告げ、ひと息ついたら出店準備をしてくれるように頼んだ。再びガタニギルドへ飛んで、残りの3人を待つついでにギルドへトヨサクエストの達成報告をすると、受付が大慌てで奥へ報告に行き、ギルマスが出て来た。
「あんたがセプトのアタルか?」
「ああ、そうだが。」
「俺はガタニのギルマスのコシジリら。
さっき、トヨサの衆からすんげぇ量の木炭と材木が運び込まれてな、買取部門は大わらわなんらけろも、セプトがひと晩で人面樹59体とキラートレント1体を倒したっちゅーのは、ほんとのことらろか?」
「ああ、そうだな。討伐個体の回収と、ギルドでの換金はトヨサの衆に頼んだ。」
「キラートレントらけれも凄ぇのに、人面樹もとんでもねぇ数らすけ、クエストの評価と報酬を見直さなきゃなんね。すまんけろも、明日また来てくれるか?」
「ああ、いいぜ。」
「じゃ明日な。」コシジリはギルマスルームに帰って行った。
その後、サヤ姉、ホサキ、タヅナもガタニギルドに戻って来て、順次、トヨサにピストン輸送した。
中央広場で大きな篝火が焚かれ、夜の宴が始まった。村人総出で篝火のまわりで呑めや歌えや踊れやの大騒ぎである。人面樹の木炭や材木や薪の売り上げが、村人に分配されたのも大きい。
北斗号は移動店舗を開き、懐の潤った村人が、トヨサでは珍しい西都織や千枚漬、商都の装飾品や化粧品に群がって、商品は飛ぶように売れた。在庫のほぼ1/4が掃けたところで、村人のほとんどに商品が行き渡り、店は一段落着いた。
今夜の売上はざっと大金貨2枚分。なんか今日のギルドでの、木炭などの売上の倍以上の金が、出張店舗で売上げられてるんだけどいいのかな?笑
ま、これから10日間は臨時収入が続くし、きっと大丈夫なのだろう。
その後、俺たちも宴に加わって、呑めや歌えや踊れやと大騒ぎした。大人嫁たちも村長のどぶろくを呑んで絶賛し、キョウちゃんズは干し柿と笹団子ときな粉の粽を腹いっぱい食い、俺はようやく村長と一緒にどぶろくを酌み交わすことができて、楽しい夜を過ごしたのだった。
翌日、村長宅で朝餉を馳走になった後、楽しかったガタニを後にして、北斗号は約2時間の道程をガタニに帰った。
昼前にはガタニに着いて、キノベ陸運ガタニ支店に北斗号を預け、ガタニギルドに出向いた。
濃紺の外套を身にまとった俺たちがギルドに入ると、そこら中から注目の視線が集まる。
受付に行くと、報酬は大金貨2枚にもなっており、アキナとタヅナがBランクへ昇格した。これにより、セプトはAランクパーティに昇格したのだ。
俺たちが来たと聞いて、ギルマスのコシジリも出て、ギルマスルームに案内された。
「噂には聞いてたけろも、濃紺の規格外ちゅーのはほんとに規格外らな。」
「今回は運が良かっただけさ。」
「何を言うとるんら。ところれ、あんたら、二の島に行くんらな。」
「ああ、藍凍龍が暴れてて、シカオの畜村が雪に埋もれて閉じ込められてると言うので、藍凍龍を狩って、シカオへの補給物資の搬入するクエストだ。」
「藍凍龍を狩るんけ?操龍弓と封龍矢がないと無謀ら。あ、アタルは射手らな。もしかしてユノベ所縁の者け?」
おっと、コシジリはいきなり核心を付いて来た。操龍弓と封龍矢を知ってると言うことは、ユノベ本拠のテンバかユノベ副拠のガハマにいたんだろうか?
「コシジリさん、あんたも射手か?もしやテンバかガハマに来て修行したのか?」
「そうらよ。俺も射手ら。30歳までテンバにおったんら。ひょっとしてアタルは、長の坊のお子か?」長の坊とはまさか親父のことか?コシジリは50台半ばってとこだな。親父が生きてたら35歳だから、コシジリが30歳までガハマにいたってことは、当時の親父は10歳ぐらいか?それなら、長の坊と呼ばれてそうだな。
「コシジリさんの言う長の坊と言うのが、亡くなったユノベの先代棟梁なら、俺の親父どのだ。」
「おお、やはりそうらったのか!今は二の坊たちがユノベの棟梁代理らと聞いてるすけ、アタルが次期棟梁なんらな。」
「ああ、そうだな。」
「テンバか、懐かしな。そう言えば、お転婆のふたりも元気け?動の嬢と静の嬢ら。確か武家に嫁いらと聞いてるんらろも…。」
「ああ、ふたりとも、今でもいい年してお転婆のじゃじゃ馬だぞ。」
「ちょっとアタル!」「アタル…言い過ぎ…。」
「ん?ひょっとして…」コシジリがサヤ姉とサジ姉の方を見て首を傾げた。
「私はトノベ・サヤ。ギルマスの言う動の嬢の娘よ。」
「私は…ヤクシ…サジ…。静の嬢の…娘…。」
「おっと、こりゃ失礼したな。嬢たちには内緒にしてくんろ。あの嬢たちは、おっかねぇすけ。」コシジリが頭を掻いて笑い、ふたりも苦笑いした。
「アタル、金剛鏑は足りてるけ?」コシジリが聞いて来た。
「取り敢えず5個はあるが、そのうち3個は使っているから、残りは2個しかない。コシジリさんは金剛鏑について何か知ってるのか?」
「3個使ってるって、3体も封じたのけ?」
「ああ。」俺は、3体の七神龍を封じたライ鏑とウズ鏑とシン鏑を取り出してコシジリに見せた。
「おおお、これは…。なるほろなー、神龍の力を宿してるなら、昨日の働きも納得ら。」
「で、金剛鏑について何か情報があるのか?」
「詳しくは知らんけろも、二の島にひとつあるって聞いたことがあるら。函府ギルドで聞いてみたらええらろ。」
「それはありがたい情報だ。まったく手掛かりがなかったからな。」
「そうけ?そらよかったら。アタル、気張りやい。」
それから俺たちは、ガタニでの商売の許可を取って、午後は、キノベ陸運ガタニ支店前で北斗号の移動店舗を開いた。
ガタニはトヨサの数倍の町の規模だが、売り上げはトヨサとほぼ同じ。というか、トヨサの方が良かったぐらいだ。やっぱ、トヨサの村の衆は、俺たちに感謝していっぱい買ってくれたのだな。
トヨサとガタニで、西都と商都で仕入れた商品のほぼ半分が売り捌けたので、山髙屋ガタニ支店でガタニの特産品を仕入れた。まずは米どころガタニの、和酒と煎餅。ガタニの煎餅はピリ辛の小粒煎餅で、カキタネという。これがガタニの和酒のツマミに持って来いなのだ。
それからガタニ上布とガタニ漆器も名が通っている。
そしてキョウちゃんズがイチ押しの笹団子。冷気の術を使う陽士が凍らせた笹団子は日持ちするのでいい。しかしこれは売り物になる前に、すべてキョウちゃんズの胃袋に収まってゆくような気がする。笑
ガタニに着いた日に泊まった宿屋の西洋料理が、大人嫁たちに特に好評だったので、再度泊まりに行くと、部屋はあったのだが、西洋料理は団体予約で満員だった。
宿屋に聞くと、近くにガタニ料理の店があると言うので、そこに行くことにした。この店の看板料理はのっぺい汁で、里芋、コンニャク、人参、レンコン、ギンナン、鮭、イクラ、シイタケやナメコなどを、薄い醤油味のダシで煮た物だ。
素朴な田舎料理で、俺はいたく気に入ったし、嫁たちも大いに満足していたから当たりである。
宿屋に戻って部屋に分かれた。4人部屋、ツイン、デラックスダブルをひとつずつ。今夜は俺とキョウちゃんズでデラックスダブルになった。キョウちゃんズは子供サイズだから、3人になってもまぁいいのである。
キョウちゃんズの成長を促す頂マッサージは、頂&秘部マッサージに、そして全身愛撫へと進化した。すでに吹っ切れた…と言うか無理やり振っ切った俺は「ロリコン」という単語を頭の中の辞書から抹消して、キョウちゃんズをたっぷり可愛がったのだった。
もちろんマイドラゴンもキョウちゃんズに弄ばれて大悦びなのだが…。唯一、俺の良心の呵責を緩和してくれるのが、キョウちゃんズが本当に育って来たことだ。巨乳が苦手で小振りが好みの俺には、今のキョウちゃんズのむにょん具合ならば、ギリセーフと言ってもいいのではなかろうか。いや、いいのである。そう思って納得するしかないのである。
翌日の昼に、廻船はガタニを出航した。キラークラーケンにへし折られたミズンマストはものの見事に修復されていた。見事としか言いようがない、いい仕事である。
明日はアタキ、明後日は函府だ。
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設定を更新しました。R4/8/7
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739
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言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~
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【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】
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※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。
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勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
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