射手の統領

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射手の統領081 キラーミンク討伐

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射手の統領
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№81 キラーミンク討伐

 朝餉はヤマホウシと一緒に摂った。ヤマホウシは西都に帰るので、アーカに寄る俺たちと、アーカまで一緒に行くことになった。

 今日は、アーカまでの中間地点のノツタの衛兵に野盗を引き渡し、そのままノツタで泊る。明日はアーカに入って泊る。明後日、俺たちはオミョシ分家との交渉があるが、ヤマホウシはそのまま西都に向かってアーカを発つ。

 出発時には、宿の主人から大層お礼を言われた。下帯一丁の野盗どもには、
「軽いジョギングになるけどついて来い。コケても止まらずにそのまま引きずるからな、痛いだけだぞ。」と警告して出発した。
 ヤマホウシは、最初のうちは北斗号に乗るのを遠慮していたのだが、俺が説得を試みた。
「徒歩なら遅れるし、ずっとジョグで付いて来るのもしんどいぜ。」
「大丈夫でっせ。わしらジョグで、野盗どもが遅れんように目を光らせながら付いて行きまっさ。」
「でもなぁ、ずっとジョグだと、いざ思わぬ襲撃があったときにベストの対応ができないだろ。野盗どもの監視は見張台からやってくれよ。」
「そうでんなぁ。」
 結局ヤマホウシが折れてくれて、ヤマホウシには見張台に上がってもらうことになった。

 野盗どもを走らせてるので30分ごとに休憩しつつ、谷を川沿いにしばらく南下してから南東に小高い山越えた。
 キョウちゃんズは、いつも通り見張台で式神3体ずつ計6体を飛ばして警戒任務に就いている。それを見ていたクラマが聞いて来た。
「アタルはん、キョウちゃんズは何してまんのや?」
「ふたりはそれぞれ式神を同時に3体も飛ばせるんでな、進行方向の警戒だな。」
「「「「!」」」」ヤマホウシの連中は大層驚く。
「そないな使い方があったんか。」ウジが呟いた。
「アタルはんが考えたんでっか?」クラマが聞いて来たので答えた。
「いや。発案はうちのアキナだ。アキナもサキョウとウキョウの手ほどきを受けて式神を飛ばせるようになったんでな、山道に入ったら警戒任務に加わるぞ。」
 再び川沿いに南下してサヨの農村で昼餉休憩。
 サヨの農村から、南東に小高い山越え、その後は川に沿って南東へ。流石に捕虜の足並みが乱れて来た。この間、獣との遭遇はなし。狼でも出てくれりゃぁ、野盗どもの足取りが速まるのになぁ。

「アタル、真正面1㎞先の川岸に、獣がいます。結構大きいですね。」アキナから第1報が入った。
 俺は伝声管で御者台に知らせた。
「12時の方向1㎞先の川岸に獣。速度を緩めて警戒。」
「承知した。」
「鼬のようですがずいぶん大きいです。あっ。やられました。こっちを見たと思ったら、映像が切れました。」
「近寄り過ぎたか?」
「いいえ、上空からの偵察ですから、距離はありましたよ。」
「アタル兄、捉えたで。」「うちも捉えたで。」キョウちゃんズが、それぞれ式神3体のうちの1体を寄せて獣を捕捉した。

「危な!」
「どうした?」
「なんか飛ばして来よった。」ウキョウは間一髪で式神を謎の襲撃から躱させた。
「風の属性攻撃やな。真空刃とかウインドカッターみたいな奴や。」横から式神で見ていたサキョウが報告して来る。
「てことは飛ばして来たのはカマイタチだな。鼬の妖獣、キラーミンクで間違いないぞ。」
「なんやて!」ウジが唸り、ヤマホウシの4人に緊張が走る。
 俺は再び伝声管で伝えた。
「鼬の妖獣、キラーミンクだ。カマイタチを使うぞ。ホサキ、御者を代わってもらって盾の準備をしてくれ。」
「承知した。」

「私が代わったわぁ。」よし、馬の扱いがダントツのタヅナに御者が代わった。
「今、キラーミンクはどっち岸にいるんだ?」
「川の左岸、あっち岸や。あと600m。」
「よし、200mになったら仕掛けるぞ。サキョウとウキョウは式神で、奴の注意を引き付けてくれ。カマイタチを食らうなよ。」
「「オーケー。」」

 残り300mでウキョウが各種バフの術を皆に掛けた。徐々に近付き、残り200m。サキョウが各種デバフの術をキラーミンクに放った。
「シン、5倍。」5倍震撃矢をキラーミンクの奥、左岸の奥の林の端に射込んだ。
 ドッゴーン!前方で派手に木々が舞う。木っ端微塵って奴だ。キラーミンクの注意を惹いた。
「ウズ、5倍。」5倍水撃矢をキラーミンクの手前に射放った。
 生じた激流がキラーミンクを飲み込んで押し流す。
「流されたで!泡食っとる。」
「こっち岸に泳ぎ着いたで。今、ブルブルやっとる。」
「ライ、5倍。」5倍雷撃矢を3連射した。
「近くに着弾。よっしゃ。感電しよったで。」
 サジ姉が追い撃ちで麻痺の術を放った。
「はぁ、妖獣相手に一方的って何なんや?いくら何でもおかしいやろ。」クラマがなんか言ってやがる。笑

 白眼を向いて泡噴いてひっくり返ってるキラーミンクを確保。それにしてもでけぇ。仔馬くらいの大きさがあるんじゃないか?俺はとっととトドメを刺して収納腕輪に仕舞い込んだ。キラーミンクなら毛皮がかなりいい値になる。
 移動を再開すると、野盗どもの足並みが非常によくなっていた。笑

 山道を抜けて平野に出ると真っ正面の南に見える海はセットの内海だ。もうしばらくするとノツタの町に到着である。
 今日の行程は、小高いとはいえ、山越えがあったにも拘らず、結構な距離を走破した。野盗どももなかなかの体力ではないか。これだけの体力があれば、質の高い犯罪奴隷としてよき労働力になるだろう。
 今まで散々人様に迷惑を掛け、やりたい放題の無法を働いて来たのだから、残りの人生は人様の為になるように、鉱山なり何なりで大いに働いてもらおう。

 町に入って馬車の速度を徒歩の早さに落とし、下帯1枚の野盗27名を曳いて、町中を移動すれば、当然のことながら野次馬が付いて来る。
 野盗どもを衛兵詰所へ連行して、装備品やアジトのお宝を全部渡した。戦利品は人数割りにすることで、ヤマホウシとの話が付いていた。セプト8人、ヤマホウシ4人だから2:1である。
 セプトの取り分を、セプトが取り返したと宣伝してもらう条件で、これから1年間に申告された被害の中で、確認できたものの補償に充てることにすると提案したら、ヤマホウシもその話に乗ると言う。
 結局全額預けて、1年後の残金を、セプトとヤマホウシで2:1で分け、ギルドの口座に振り込んでもらうことにした。

 それから山髙屋ノツタ支店に行って北斗号を預け、ノツタ冒険者ギルドに行ってヤマホウシと一緒に野盗退治のクエスト報告をした。その際、戦利品を衛兵詰所で被害者の補填に充ててもらう契約をして来たことを告げると、ギルドからは大層喜ばれた。
 なお、ヤマホウシたちは、このクエストを一昨日、このギルドで受けていたので、3日目と言う速い達成に驚かれていた。

 それから、道中にキラーミンクの討伐をしたことを報告して、素材買取を頼むと、キラーミンク討伐クエストが出てたので、それを達成した扱いになった。カマイタチでかなりの被害が出ていたそうだ。
 なお、キラーミンクについては、自分らは見てただけやがな。と言って、ヤマホウシが分け前の受け取りを固辞した。
 野盗どもの戦利品を被害補填基金に当てることに賛同して来たことといい、キラーミンクの分け前を固辞したことと言い、物凄く金にきれいになっている。
 昔はキョウちゃんズの分け前をピンハネしようとするなど、金に汚かったクラマだが、変われば変わるものだと感心した。

 諸々の査定と確認に時間が掛かるので、明日、再びギルドを訪れることになって、ギルド近くに宿屋を探した。俺たちは4人部屋と、ツインと、デラックスダブルを1部屋ずつ取った。デラックスダブルは、もちろん今夜の輪番、サヤ姉となのだ。むふふ。

 宿に入るのが遅かったので、夕餉は宿屋の食堂で摂った。ヤマホウシたちは軽く呑みに出るそうだ。ちょっとそっちも行きたい気分だが、夜のことを考えてやめた。

 今夜の輪番はサヤ姉だ。サヤ姉は肉食系なので、夜遅くまで淫靡な営みに没頭した。本番抜きなのだけが口惜しい。
 例のアレの開発はまだか!

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設定を更新しました。R4/6/26

更新は月水金の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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