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射手の統領080 秘境温泉宿の救援
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射手の統領
Zu-Y
№80 秘境温泉宿の救援
朝餉の後、昨日のうちに受けておいた短期貸付の大金貨10枚を、朝イチで男の忍の者3人に渡すと、3人はすぐに宿を発って行った。
くノ一5人は残ったので嫁たちの影の護衛だな。
宿屋を発ってギルドに行くと、すぐさまギルマスルームに通された。
橙土龍攻略が、依頼を受けた翌日に達成だったので、倍増しで大金貨6枚。さらに、サヤ姉とサジ姉はAランク、ホサキはBランク、キョウちゃんズはCランク、アキナとタヅナはDランクとなり、バーティランクはBランクに上がった。
なお、Dランク以上は一気に上げられないと言うことでアキナとタヅナはDランクだが、本来なら十分Cランクなのだとか。次のクエストをこなせばCランクになるそうだ。
キョウちゃんズももうすぐBランク、ホサキももうすぐAランクらしい。七神龍を攻略すると一気に経験値を稼げるのだ。
トリトは西和の北岸なので、山越えで西和の南岸のセットの内海に出る予定だ。冬ともなると獣たちの活動は少なくなるので、獣の討伐クエストはほとんどない。
クエストが貼り出された掲示板と睨めっこしているとギルマスのヨルハンから声が掛かって、再びギルマスルームに通された。
「セプトがアーカに行くと言うのはホンマか?」
「そうだ。山越えしてセットの内海に出てから東進するつもりだ。」
「ならば、アワクは通るやろな?」
「そうだな。アワク、ノツタで宿泊するつもりだ。」
「ああ、天の恵みや!」
「どうした?」
「アワクの秘境御温泉宿がな。野盗に眼を付けられとる。立ち退けとの脅迫が来とって、宿屋の主人から救援要請が来とるんや。報酬は金貨1枚や。あと、討伐までの滞在費は宿屋持ちや。」
「引き受けた。」なんといいタイミングか!即答でOKだ。
「頼むで。」俺はヨルハンから依頼書を受け取った。
キノベ陸運トリト営業所で北斗号を受け取り、山髙屋トリト支店でトリト特産の和紙とらっきょう漬をごっそり購入して、昨日の短期貸付大金貨10枚を、今までの売上と橙土龍討伐の賞金で、すべて返済した。
結局借りないでもよかった気がする。笑
トリトの港町を発って、センデの河を遡るように南下し、支流沿いにクネクネと南東に進んで行く。昼にはヅッチの農村を通り過ぎ、昼餉休憩を取ってから、南東方面へ沢沿いを登って行くと徐々に道は狭くなり急峻になった。
この季節、峠は大して深くない雪に覆われていたが、馬は元々寒さに強いので、体から湯気を出しながら雪の山道を難なく登って行く。
タヅナによると、馬着(馬の防寒具)は、馬車を曳いている今は要らないらしい。止まって体が冷えるときに着せるのだそうだ。
野盗が出ると言うので、キョウちゃんズとアキナによる式神の索敵が続いている。
峠を越えてしばらく経ってから、雪がまばらになって来た頃、サキョウとウキョウから報告が来た。
「アタル兄、10時の方向300mの森の中に3名、こっちを窺うとるよ。」
「アタル兄、こっちにもおるよ。2時の方向300mの森の中に3人。」
「仕掛けて来そうか?」
「いや、見とるだけやね。でも全員、弓矢は持っとるよ。」
「こっちもそうやね。今んとこ、見張っとるだけで動いとらんよ。」
そのまま奴らの横を通り過ぎると、両方とも森の中から山道に向かって下り出した。
式神による野盗の監視を、左右前方担当のキョウちゃんズから、後方担当のアキナに引き継いで少ししてから、アキナから報告が来た。
「合流して6名になりました。そのまま付いて来ます。300m後方です。」
「何もして来なければ、泳がせといていいぞ。差を詰めて来たらすぐ報告な。上からだから矢の攻撃だけ注意しろよ。
サキョウ、ウキョウ、挟み撃ちかもしれないから前方の索敵に念を入れてくれ。」
「「了解。」」
伝声管で御者台に連絡する。
「後ろから付けられてる。300m後方6名。相手は徒歩で弓矢あり。いつでも速度を上げられるようにしといて。」
「分かりましたぁ。」この声はタヅナか。ちょうどよかった。
伝声管からサヤ姉が聞いて来た。
「アタル、少人数のようだけど、やっちゃわないの?」
「奴ら、例の野盗だろ?これで全員じゃないはずだ。ついて来てるのは斥候だから下っ端だよな。雑魚をやっちまったら俺たちが温泉宿にいる間は警戒して仕掛けて来ないよ。雑魚相手に敢えて慌てて温泉宿に逃げ込む風を装う。そうすりゃ、俺たちもまとめて獲物だと思うだろ?」
「アタル、あんた、日増しに強かになるわね。」
「褒めてくれてありがとう。」
しばらく後を付けられている。膠着状態のままだ。
「タヅナ、少しずつペースを上げてくれ。」
伝声管での指示に北斗号のペースが徐々に上がる。
「向こうもペースを上げて付いて来ます。」
そのまま山道を抜け、川沿いの道になった。俺たちは、アワクの秘境温泉宿に逃げ込む風を装って入った。
「奴らはどうしてる?」
「遠巻きにこちらを監視して…。あ、引き上げて行きます。」
温泉宿から主人が出て来た。
「お客はん、野盗が来るかもしれんから、日もあるし、もうひとつ先の宿場まで行った方がええで。」
ほう。自分とこが襲われるかもしれないのに、旅人を気遣うのか。なかなかできた主人だな。
俺は依頼書を出して宿の主人に見せた。
「これで来た。」
「おお、トリトのギルドからわざわざ。そりゃおおきに。先程もノツタで依頼を受けてくれた西都のパーティが来てくれたとこや。」
「そうか。宿代はいくらだ?」
「そんなん、貰えんがな。」
「いや、俺たちはアーカに行く途中でな。ここには最初から泊まるつもりだった。だから今夜の分は支払う。連泊するつもりはなかったから、野盗退治で連泊になったら、そのときは甘えるよ。」
「そうでっか。おおきに。」
和室の大部屋があったのでそこを取った。
「ところでご主人、もうひとつのパーティはどうしてる?顔合わせをしておきたいが。」
「夜まで英気を養うように、ゆったりと温泉に浸こうてもろてますわ。」
「そうか。どうせ襲撃は夜だろうから、夕餉までには紹介してくれ。」
「お客さんたちもそれまでに旅の疲れを落としとくとええ。うちの温泉はラジウム泉と言う珍しいのやで。」
「そうか、それは楽しみだな。」
俺たちは大部屋に入った。全員で同部屋なのは久しぶりだ。多分、廻船の雑魚寝以来か。
今でこそ生殺しだが、本拠に帰って正式に式を挙げたら、俺の部屋にデーンと超でかいベッドを用意して皆で一緒に寝るのだ!むふふ。
「アタル…変なこと…考えてる…でしょ…?」は!我に返る俺。
「考えてない。」やばい、思わず眼を逸らしてしまった。汗
全員のジト目が飛んで来た。
「ところでアタル、野盗は今夜、襲撃して来るだろうか?」ホサキ、ナイス話題転換。GJ!
「恐らくな。明日になれば俺たちが発つと思うだろうからな。俺たちの積荷を狙っている以上、今夜、仕掛けて来る可能性が高いと思うぞ。それよりも今のうちに温泉に入って疲れを落としとこうぜ。」
で、俺たちは大浴場に向かった。先陣を切るのはキョウちゃんズ。
「こっちや。」「皆、早う!」
燥いでる。まだまだ子供だなぁ。笑
「あれー、フシミはんにカツラはんやないのー!」
「なんや、キョウちゃんズかい。随分背ぇが伸びよったなぁ。」
「東都に行っとったんちゃうんか?」
サキョウとウキョウの知り合いか?
「おーい、サキョウ、ウキョウどうした?
ん?お前ら、どっかで会ったよな。」
そこへ別のふたりが現れた。
「アタルはんやおまへんか!」
「「あ、クラマはん!」」声を掛けて来た男にキョウちゃんズが反応した。
「え?あ、サキョウとウキョウやんか?お前ら、背ぇ伸びたなぁ。見違えたで。」
「「ウジはんもおる!」」
「おう、元気でやっとるようやな。それにしてもこないな所で会うとはな。」
「ノツタから来たパーティってヤマホウシだったのか。」俺も会話に加わった。
取り敢えず積もる話は後ってことで、俺たちは一旦別れて温泉に向かった。宿の主人に顔合わせを頼んどいたから、おそらく夕餉は一緒だろう。
ここの温泉はラジウム泉と言う珍しい泉質だ。ゆっくり湯に浸かると旅の疲れが飛ぶ。相変わらず女湯からは、キャッキャとはしゃいだ声がする。いいなー、あっち行きてぇ。
待てよ?泊りは俺たちとヤマホウシだけだよな?ならば俺は女湯でもいいんじゃね?
俺は、女湯に声を掛けた。
「なー、俺、そっち行ってもよくね?」
「ダメに決まってるでしょ。」
「だって他の客、いないだろー。」
「いらっしゃるわよぉ!」
「え?」他の客、いたの?マジ、超ハズいんですけど。
「アタル兄、うちらに恥掻かさんといて。」
「ホンマ、堪忍して欲しいわぁ。」
「すいませんでしたぁ。」やっちまったぜ。泣
後で分かったが、護衛のくノ一5人だった。風呂場までとは護衛が徹底している。つーか、いつの間に嫁たちとは仲良くなってんの?俺はろくに顔を見たことないのに。
夕餉はヤマホウシと一緒だった。
ヤマホウシは、クエストでこっち方面へ遠征して、たまたま達成報告に寄ったノツタのギルドから直接このクエストを紹介されたそうだ。トリトでの俺たちもそうだったが、このクエストは貼り出されていない。依頼を公にすればすぐ野盗にバレて、敵対行動に出たとして宿屋が襲われるからだろう。
この手のクエストを紹介されるとは、ヤマホウシはかなり信頼されているパーティらしい。聞くと全員Cランクに上がっており、パーティランクもCランクだった。最初に会ったときはEランクだったから2ランクも上がったのだ。すでに中堅やや上と言ったところだ。あれから相当真面目に頑張って来たのだな。
深夜を回った頃、予想通り野盗どもが襲撃して来た。総勢27名だから結構な規模だ。
しかしまあ何と言うか、宿と商人と舐めてたのか、もしくは頭がバカなのか、考えられない正面からのゴリ押しで、ウキョウの各種バフの術を受けたセプトとヤマホウシのメンバー、合わせて12名に対して、サキョウの各種デバフの術を受けた27人などまったく相手になるはずもなく、途中から、犯罪奴隷で売るから殺すなと、指示を出すくらい一方的な戦いだった。
遠距離攻撃の援護組もいち早く逃走を図ったが、サジ姉の睡眠の術を受けて暢気に爆睡である。近距離攻撃の突入組は、セプトの近距離攻撃部隊であるサヤ姉、ホサキ、タヅナと、近距離攻撃特化のヤマホウシで殲滅した。
瀕死の野盗5名をヤジ姉が回復の術で治し、捕虜にした全員から武器と装備をすべて剥いで、セプト式下帯一枚の数珠繋ぎにして宿屋の庭の木に拘束。
ヤマホウシのメンバーからは、久しぶりのキョウちゃんズの陰の術は、改めて凄いと絶賛の嵐となったのだが…、クラマがキョウちゃんズに見切りを付けられた原因になったことを大いに悔やんで、他のヤマホウシのメンバーに土下座すると、ウジもフシミもカツラも、クラマを攻めてる訳ではないと言って、それ以上は言わなくなった。
活躍した嫁たちとヤマホウシにはゆっくり宿で休んでもらい、俺ひとりで、野盗どもの数珠繋ぎを引きずり回して、野盗のアジトのお宝を根こそぎ分捕って来た。もちろんすべて野盗どもに運ばせたがな。
え?野盗どもは素直に言うことを聞いたかって?
そんなの、頭と幹部ふたりの3名を木に括り付けて、頭のすぐ上に雷撃矢と水撃矢と震撃矢を打ち込んでやったから、すっげー従順だったぜ。全員の下帯が濡れていたのはご愛敬だな。
ただし、俺のこのやり方は、3人を痛めつけてないから良心的だと思うんだよ。コネハの野盗に対するサヤ姉とサジ姉の仕打ちみたく、惨たらしくはないはずだぜ。
宿に着いたのは日の出間近の薄明時。俺はそのままセプト部屋に行った。部屋は嫁7人のうら若き体臭でくらくらする。俺は何度も深呼吸し、嫁たちの匂いを満喫してから、仮眠を取った。
ふん!変態と呼ぶなら呼ぶがいい!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/6/26
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№80 秘境温泉宿の救援
朝餉の後、昨日のうちに受けておいた短期貸付の大金貨10枚を、朝イチで男の忍の者3人に渡すと、3人はすぐに宿を発って行った。
くノ一5人は残ったので嫁たちの影の護衛だな。
宿屋を発ってギルドに行くと、すぐさまギルマスルームに通された。
橙土龍攻略が、依頼を受けた翌日に達成だったので、倍増しで大金貨6枚。さらに、サヤ姉とサジ姉はAランク、ホサキはBランク、キョウちゃんズはCランク、アキナとタヅナはDランクとなり、バーティランクはBランクに上がった。
なお、Dランク以上は一気に上げられないと言うことでアキナとタヅナはDランクだが、本来なら十分Cランクなのだとか。次のクエストをこなせばCランクになるそうだ。
キョウちゃんズももうすぐBランク、ホサキももうすぐAランクらしい。七神龍を攻略すると一気に経験値を稼げるのだ。
トリトは西和の北岸なので、山越えで西和の南岸のセットの内海に出る予定だ。冬ともなると獣たちの活動は少なくなるので、獣の討伐クエストはほとんどない。
クエストが貼り出された掲示板と睨めっこしているとギルマスのヨルハンから声が掛かって、再びギルマスルームに通された。
「セプトがアーカに行くと言うのはホンマか?」
「そうだ。山越えしてセットの内海に出てから東進するつもりだ。」
「ならば、アワクは通るやろな?」
「そうだな。アワク、ノツタで宿泊するつもりだ。」
「ああ、天の恵みや!」
「どうした?」
「アワクの秘境御温泉宿がな。野盗に眼を付けられとる。立ち退けとの脅迫が来とって、宿屋の主人から救援要請が来とるんや。報酬は金貨1枚や。あと、討伐までの滞在費は宿屋持ちや。」
「引き受けた。」なんといいタイミングか!即答でOKだ。
「頼むで。」俺はヨルハンから依頼書を受け取った。
キノベ陸運トリト営業所で北斗号を受け取り、山髙屋トリト支店でトリト特産の和紙とらっきょう漬をごっそり購入して、昨日の短期貸付大金貨10枚を、今までの売上と橙土龍討伐の賞金で、すべて返済した。
結局借りないでもよかった気がする。笑
トリトの港町を発って、センデの河を遡るように南下し、支流沿いにクネクネと南東に進んで行く。昼にはヅッチの農村を通り過ぎ、昼餉休憩を取ってから、南東方面へ沢沿いを登って行くと徐々に道は狭くなり急峻になった。
この季節、峠は大して深くない雪に覆われていたが、馬は元々寒さに強いので、体から湯気を出しながら雪の山道を難なく登って行く。
タヅナによると、馬着(馬の防寒具)は、馬車を曳いている今は要らないらしい。止まって体が冷えるときに着せるのだそうだ。
野盗が出ると言うので、キョウちゃんズとアキナによる式神の索敵が続いている。
峠を越えてしばらく経ってから、雪がまばらになって来た頃、サキョウとウキョウから報告が来た。
「アタル兄、10時の方向300mの森の中に3名、こっちを窺うとるよ。」
「アタル兄、こっちにもおるよ。2時の方向300mの森の中に3人。」
「仕掛けて来そうか?」
「いや、見とるだけやね。でも全員、弓矢は持っとるよ。」
「こっちもそうやね。今んとこ、見張っとるだけで動いとらんよ。」
そのまま奴らの横を通り過ぎると、両方とも森の中から山道に向かって下り出した。
式神による野盗の監視を、左右前方担当のキョウちゃんズから、後方担当のアキナに引き継いで少ししてから、アキナから報告が来た。
「合流して6名になりました。そのまま付いて来ます。300m後方です。」
「何もして来なければ、泳がせといていいぞ。差を詰めて来たらすぐ報告な。上からだから矢の攻撃だけ注意しろよ。
サキョウ、ウキョウ、挟み撃ちかもしれないから前方の索敵に念を入れてくれ。」
「「了解。」」
伝声管で御者台に連絡する。
「後ろから付けられてる。300m後方6名。相手は徒歩で弓矢あり。いつでも速度を上げられるようにしといて。」
「分かりましたぁ。」この声はタヅナか。ちょうどよかった。
伝声管からサヤ姉が聞いて来た。
「アタル、少人数のようだけど、やっちゃわないの?」
「奴ら、例の野盗だろ?これで全員じゃないはずだ。ついて来てるのは斥候だから下っ端だよな。雑魚をやっちまったら俺たちが温泉宿にいる間は警戒して仕掛けて来ないよ。雑魚相手に敢えて慌てて温泉宿に逃げ込む風を装う。そうすりゃ、俺たちもまとめて獲物だと思うだろ?」
「アタル、あんた、日増しに強かになるわね。」
「褒めてくれてありがとう。」
しばらく後を付けられている。膠着状態のままだ。
「タヅナ、少しずつペースを上げてくれ。」
伝声管での指示に北斗号のペースが徐々に上がる。
「向こうもペースを上げて付いて来ます。」
そのまま山道を抜け、川沿いの道になった。俺たちは、アワクの秘境温泉宿に逃げ込む風を装って入った。
「奴らはどうしてる?」
「遠巻きにこちらを監視して…。あ、引き上げて行きます。」
温泉宿から主人が出て来た。
「お客はん、野盗が来るかもしれんから、日もあるし、もうひとつ先の宿場まで行った方がええで。」
ほう。自分とこが襲われるかもしれないのに、旅人を気遣うのか。なかなかできた主人だな。
俺は依頼書を出して宿の主人に見せた。
「これで来た。」
「おお、トリトのギルドからわざわざ。そりゃおおきに。先程もノツタで依頼を受けてくれた西都のパーティが来てくれたとこや。」
「そうか。宿代はいくらだ?」
「そんなん、貰えんがな。」
「いや、俺たちはアーカに行く途中でな。ここには最初から泊まるつもりだった。だから今夜の分は支払う。連泊するつもりはなかったから、野盗退治で連泊になったら、そのときは甘えるよ。」
「そうでっか。おおきに。」
和室の大部屋があったのでそこを取った。
「ところでご主人、もうひとつのパーティはどうしてる?顔合わせをしておきたいが。」
「夜まで英気を養うように、ゆったりと温泉に浸こうてもろてますわ。」
「そうか。どうせ襲撃は夜だろうから、夕餉までには紹介してくれ。」
「お客さんたちもそれまでに旅の疲れを落としとくとええ。うちの温泉はラジウム泉と言う珍しいのやで。」
「そうか、それは楽しみだな。」
俺たちは大部屋に入った。全員で同部屋なのは久しぶりだ。多分、廻船の雑魚寝以来か。
今でこそ生殺しだが、本拠に帰って正式に式を挙げたら、俺の部屋にデーンと超でかいベッドを用意して皆で一緒に寝るのだ!むふふ。
「アタル…変なこと…考えてる…でしょ…?」は!我に返る俺。
「考えてない。」やばい、思わず眼を逸らしてしまった。汗
全員のジト目が飛んで来た。
「ところでアタル、野盗は今夜、襲撃して来るだろうか?」ホサキ、ナイス話題転換。GJ!
「恐らくな。明日になれば俺たちが発つと思うだろうからな。俺たちの積荷を狙っている以上、今夜、仕掛けて来る可能性が高いと思うぞ。それよりも今のうちに温泉に入って疲れを落としとこうぜ。」
で、俺たちは大浴場に向かった。先陣を切るのはキョウちゃんズ。
「こっちや。」「皆、早う!」
燥いでる。まだまだ子供だなぁ。笑
「あれー、フシミはんにカツラはんやないのー!」
「なんや、キョウちゃんズかい。随分背ぇが伸びよったなぁ。」
「東都に行っとったんちゃうんか?」
サキョウとウキョウの知り合いか?
「おーい、サキョウ、ウキョウどうした?
ん?お前ら、どっかで会ったよな。」
そこへ別のふたりが現れた。
「アタルはんやおまへんか!」
「「あ、クラマはん!」」声を掛けて来た男にキョウちゃんズが反応した。
「え?あ、サキョウとウキョウやんか?お前ら、背ぇ伸びたなぁ。見違えたで。」
「「ウジはんもおる!」」
「おう、元気でやっとるようやな。それにしてもこないな所で会うとはな。」
「ノツタから来たパーティってヤマホウシだったのか。」俺も会話に加わった。
取り敢えず積もる話は後ってことで、俺たちは一旦別れて温泉に向かった。宿の主人に顔合わせを頼んどいたから、おそらく夕餉は一緒だろう。
ここの温泉はラジウム泉と言う珍しい泉質だ。ゆっくり湯に浸かると旅の疲れが飛ぶ。相変わらず女湯からは、キャッキャとはしゃいだ声がする。いいなー、あっち行きてぇ。
待てよ?泊りは俺たちとヤマホウシだけだよな?ならば俺は女湯でもいいんじゃね?
俺は、女湯に声を掛けた。
「なー、俺、そっち行ってもよくね?」
「ダメに決まってるでしょ。」
「だって他の客、いないだろー。」
「いらっしゃるわよぉ!」
「え?」他の客、いたの?マジ、超ハズいんですけど。
「アタル兄、うちらに恥掻かさんといて。」
「ホンマ、堪忍して欲しいわぁ。」
「すいませんでしたぁ。」やっちまったぜ。泣
後で分かったが、護衛のくノ一5人だった。風呂場までとは護衛が徹底している。つーか、いつの間に嫁たちとは仲良くなってんの?俺はろくに顔を見たことないのに。
夕餉はヤマホウシと一緒だった。
ヤマホウシは、クエストでこっち方面へ遠征して、たまたま達成報告に寄ったノツタのギルドから直接このクエストを紹介されたそうだ。トリトでの俺たちもそうだったが、このクエストは貼り出されていない。依頼を公にすればすぐ野盗にバレて、敵対行動に出たとして宿屋が襲われるからだろう。
この手のクエストを紹介されるとは、ヤマホウシはかなり信頼されているパーティらしい。聞くと全員Cランクに上がっており、パーティランクもCランクだった。最初に会ったときはEランクだったから2ランクも上がったのだ。すでに中堅やや上と言ったところだ。あれから相当真面目に頑張って来たのだな。
深夜を回った頃、予想通り野盗どもが襲撃して来た。総勢27名だから結構な規模だ。
しかしまあ何と言うか、宿と商人と舐めてたのか、もしくは頭がバカなのか、考えられない正面からのゴリ押しで、ウキョウの各種バフの術を受けたセプトとヤマホウシのメンバー、合わせて12名に対して、サキョウの各種デバフの術を受けた27人などまったく相手になるはずもなく、途中から、犯罪奴隷で売るから殺すなと、指示を出すくらい一方的な戦いだった。
遠距離攻撃の援護組もいち早く逃走を図ったが、サジ姉の睡眠の術を受けて暢気に爆睡である。近距離攻撃の突入組は、セプトの近距離攻撃部隊であるサヤ姉、ホサキ、タヅナと、近距離攻撃特化のヤマホウシで殲滅した。
瀕死の野盗5名をヤジ姉が回復の術で治し、捕虜にした全員から武器と装備をすべて剥いで、セプト式下帯一枚の数珠繋ぎにして宿屋の庭の木に拘束。
ヤマホウシのメンバーからは、久しぶりのキョウちゃんズの陰の術は、改めて凄いと絶賛の嵐となったのだが…、クラマがキョウちゃんズに見切りを付けられた原因になったことを大いに悔やんで、他のヤマホウシのメンバーに土下座すると、ウジもフシミもカツラも、クラマを攻めてる訳ではないと言って、それ以上は言わなくなった。
活躍した嫁たちとヤマホウシにはゆっくり宿で休んでもらい、俺ひとりで、野盗どもの数珠繋ぎを引きずり回して、野盗のアジトのお宝を根こそぎ分捕って来た。もちろんすべて野盗どもに運ばせたがな。
え?野盗どもは素直に言うことを聞いたかって?
そんなの、頭と幹部ふたりの3名を木に括り付けて、頭のすぐ上に雷撃矢と水撃矢と震撃矢を打ち込んでやったから、すっげー従順だったぜ。全員の下帯が濡れていたのはご愛敬だな。
ただし、俺のこのやり方は、3人を痛めつけてないから良心的だと思うんだよ。コネハの野盗に対するサヤ姉とサジ姉の仕打ちみたく、惨たらしくはないはずだぜ。
宿に着いたのは日の出間近の薄明時。俺はそのままセプト部屋に行った。部屋は嫁7人のうら若き体臭でくらくらする。俺は何度も深呼吸し、嫁たちの匂いを満喫してから、仮眠を取った。
ふん!変態と呼ぶなら呼ぶがいい!
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設定を更新しました。R4/6/26
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
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カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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