射手の統領

Zu-Y

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射手の統領066 披露目当日の騒動

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射手の統領
Zu-Y

№66 披露目当日の騒動

 この日は朝からてんやわんやだった。

 御用宿の食堂で、二の叔父貴も交えて嫁たちと朝餉を摂る。キョウちゃんズがいつにも増して気合を入れて食べていた。
 なんだか食い過ぎっぽいが大丈夫か?

 朝餉の後、隊列を整えて、御用宿から披露目会場の宿屋へ移動。徒歩の弓隊を先頭に、二の叔父貴と重臣2名が乗るユノベの外交用馬車、最後尾に北斗号が続く。
 北斗号の御者はタヅナ、御者席の両横にホサキとアキナ、御者席の後部座席にサヤ姉とサジ姉、屋根の見張台の指揮所に俺とキョウちゃんズ。
キョウちゃんズはテンションが上がりまくってるのか、見張台の中をあちこちに動き回っている。

「おい、ウキョウ、乗り出したら危ないぞ。サキョウ、走るな。」
 とうとうしびれを切らした俺は、むんずとふたりの襟首を捕まえて確保し、そのまま両脇に抱えて、じたばたするふたりを、指揮所で俺の両隣に座らせた。
「外からも丸見えだし、じっとしてろよ。」
「「ええやんかー。」」
「これから、旅の間中、持ち場はここでいいからさ、今は一応、東都内を行軍中だし、おとなしくしててくれ。」
「「むー。」」ふくれっ面もかわいい。

「言うこと聞かないとこうだぞ。」再びふたりを両脇に抱え込み、パッドごと胸を揉みしだいた。あれ?いつもはスカッと潰れるパッドだが、今日は微かにむにょんとなるな。まぁいいか。頂を捉え、しばらくくりくりしてるとふたりはなまめかしい吐息とともにおとなしくなった。ふむ、これでよし。

 ふたりが両隣からしな垂れて来た。ん?ふたりとも、眼がとろんとしてるぞ。子供がそんな目をしちゃいかん。
「アタル兄、どないしよ。」「何や、体の中がジンジンしよる。」
 ふたりしてモジモジしている。なんかやばくね?
「最近、アタル兄が忙しゅうて、久々のマッサージやったから、あかんようになってもうた。」マジかよ。
「うちもや。続きは…ここじゃ無理やろねぇ。」当たり前じゃ!
「悪かった。深呼吸して、落ち着いてくれ。」まぁ、でもおとなしくなったから当初の目的は達成だ。
 そんなこんなしてるうちに、披露目会場の宿屋に到着した。

 馬車から降り、二の叔父貴とふたりで、出迎えの山髙屋社長と挨拶を交わす。そのままハンジョーに案内されて、ユノベの控室へ入った。控室は、小規模な宴会ができそうな部屋が3つだった。俺と嫁たち、二の叔父貴と重臣2人、護衛9人でそれぞれ部屋に入った。控室にはフリードリンクといろいろなプチケーキが用意されており、嫁たちは喜んで食べていた。
 お前ら、俺の護衛だろーが!笑

 ユノベは一番乗りで、次々と他家の到着が知らされて来る。最後に次ノ宮殿下の到着が知らされると、すぐに次ノ宮殿下からの伝令が来た。
「帝居衛士のサエモンである。ユノベ・アタルどのはいらっしゃるか?」
「サエモン、久しいな。」
 サエモンはビシッと敬礼し、
「ユノベどの、次ノ宮殿下から内々のお召しです。」あ、なるほど。今は衛士モードな訳ね。
「承知した。案内を頼む。」
「はっ。」またビシッと敬礼した。「では、先導致します。」
 俺はついて来ようとする嫁たちを制した。
「内々のお召しだから目立ちたくない。俺ひとりで行って来る。」

 廊下を歩きながら、小声でサエモンに話し掛ける。
「サエモン、今はふたりだけだからいいだろう?」
「ああ、さっきは他人行儀ですまなかったな。職務中なのでな。」サエモンも小声だ。
「内々のお召しと言ったな?」
「そうなのだ。殿下は内々を強調せよとの仰せだ。アタルはそれで分かると。」
「そういうことか。俺たちの冒険用の馬車を御覧に入れる約束なのだ。」
「なるほどな。殿下は相変わらずよな。」

 次ノ宮殿下の控室はスイートルームだった。侍従と衛士が何人もいる。まぁ、当たり前か。笑
「殿下、ユノベどのをお連れしました。」サエモンが報告する。
「ユノベ・アタルでございます。お召しにより参上仕りました。」
「アタル、内々にと申したであろう。堅苦しい挨拶は後でよい。早々に案内せよ。」次ノ宮殿下は立ち上がった。相変わらずだ。
「されば、ご案内致します。」

「殿下、どちらへ?」侍従たちと衛士たちが慌ててぞろぞろとついて来る。
「殿下、大勢引き連れますので?私は構いませんが目立ちますよ。」
「であるな。サエモン、衛士はお前ともうひとりでよい。侍従はひとりだ。他は部屋で待機させよ。ユノベの馬車を検分するだけだ。小一時間で戻る。」
 サエモンが、慌てて付いて来る侍従たちと衛士たちに殿下の指示を伝え、侍従と衛士をひとりずつ連れて戻って来た。

 俺、殿下、サエモンに、侍従ともうひとりの衛士の5人で駐車場へ向かう。
「アタル、古都では大暴れしたようだな。」
「滅相もございません。殿下から賜りました勅許に難癖を付けた不敬者を少々懲らしめただけでございます。」
「少々で、ギルドの壁を吹き飛ばし、宝物殿の外塀を崩壊させるのか?」
「なんの。どちらも小さな穴を開けただけにございますよ。殿下はなぜそれをご存じで?」

「コノエが報告して来たのだ。古都から違う内容の報告が上がったら、鵜呑みにせず、真相を確かめて欲しいと書いてあったわ。」
 コノエとは西都のギルマスのサンキのことだ。どうやらダイワからデタラメな報告が行くことを警戒して、俺のことを気遣ってくれたようである。
「で、古都からは何と?」
「報告して来んのでな、問い合わせたら、そんな事実はないと惚けおったわ。ご不信なら、壁も外塀もきれいゆえ、いつでもご検分あれと言って来おった。」
 ダイワのやつ、自腹で直したな。そりゃきれいだよな。直したてだものな。笑

「古都にいる者からの報告も、コノエの報告と一致しておるのだがな。まぁ、大した被害ではないし、館長自ら私費で修繕したというから、不問に付してやったわ。」次ノ宮殿下は愉快そうに笑った。
 古都には帝家の密偵がいるようだ。ってそんなの当たり前だよな。主だった都市には必ずいるのだろう。

 駐車場について、北斗号を隅々まで御覧に入れた。
 次ノ宮殿下はあれこれ聞いて来た。馬を気遣う幌の工夫や、見張台の指揮所が特にお気に召したようだ。
「殿下、駐車場内1周でよろしければ、お乗せしますよ。」このひと言は、後でサエモンや他の供から、さんざん文句を言われる羽目になったがな。笑
「よいのか?」次ノ宮殿下は、大層お喜びになり、この後、大きな恩返しとなって返って来て、俺はえらい恩恵を受けることになる。それは翌日のこと。

 最初は御者席の俺の隣にいたが、半周したところで、一旦止めるように言われた。何事かと思ったら、殿下は見張台に登って行き、残りはずっと見張台の指揮所からまわりを眺めておられた。
 サエモンと侍従ともうひとりの衛士は、殿下にぴったりくっついて、辺りを警戒していた。
「アタル、もう1周だけ頼む。」伝声管から殿下の声が響いて来た。
「殿下、それはお控え下さい。ユノベ統領も困りましょう?」侍従の声が続いて聞こえる。もう1周くらいなら俺は構わんぞ。侍従め、俺をダシに使うなよな!
「殿下、もう1周、承知しました。」伝声管に返答した。
「大儀。」殿下の嬉しそうな声が返って来た。

 駐車場で別れようとしたが、スイートルームまで供せよと言われたので、付いて行くと、その最中に、
「アタルよ、余は此度の外出の目的を達した。山髙屋に利用されるのは小癪ゆえ、このまま帰ってやりたいのだが、いかんか?」
 サエモン、侍従、もうひとりの衛士がぎょっとする。
「殿下、お気持ちは分かりますが、山髙屋以外の他家のこともありますし、お約束ですから、それはお控えになった方がよろしゅうございますな。
 俺が、殿下とのお約束を反故にして、新たに得た鏑をご覧に入れに参上しなかったら、殿下もご落胆なされましょう?」

「そなた、さりげなく余を脅すの。」
「滅相もございません。仮にの話ですよ。仮にの。」
「相分かった。引き上げはせぬが、直前にそう言って山髙屋を困らせるくらいはよいであろう?そなた、予め種明かしをするでないぞ。」
「承知しました。」
「そうだ、帰るとごねたら、山髙屋はアタルに相談しような。アタルが出て来て余が思い止まれば、そなたの株も上がろうの。」
「その様なことは。」
「よいよい、先程の2周と、新たな鏑を見せに来てくれる礼じゃ。」
 次ノ宮殿下も強かよな。これで、新しい鏑を見せに行かない訳にはいかなくなったぞ。と言っても元々見せに行くつもりだったがな。

 次ノ宮殿下のところを辞して控室に戻った。控室では昼餉が出た。披露目の後は、午餐になるから昼餉は軽食だ。

 昼餉の後、最終打ち合わせと顔合わせを兼ねて、次ノ宮殿下を除く5武家と山髙屋の代表が、会議室で一同に会するはずだったのだが、肝心の山髙屋社長がなかなか来ない。
 しばらく待っていると、社長が血相を変えて会議室に飛び込んで来た。
「アタルどの、次ノ宮殿下が帰ると仰せなのです。説得して下さい。
 皆様、待たせて申し訳ありませんがもうしばらくお時間を下さい。」
 社長は必死だ。次ノ宮殿下め、本当にやりやがったな。

 他家の代表たちに一礼して社長とともに次ノ宮殿下の控室であるスイートルームに行き、衛士のサエモンに取次を頼んだ。
「山髙屋どのとはもう話すことはないゆえ、ユノベどのだけお通しせよとの殿下の仰せです。」サエモンの返答に社長の顔が引きつり、いよいよ蒼褪めた。

 俺は社長に眼で合図して、その場で待つように促し、俺だけ中に通された。殿下の顔は、まさしく悪戯っ子のそれだ。苦笑
「アタルか、余が帰ると申したら、山髙屋は狼狽えておったぞ。」
「殿下、ご冗談ではなかったのですか?」
「ふん、あのしたり顔にひと泡吹かせてやりたかったのだ。今後もちょくちょく利用されてはいい迷惑なのでな。」
「他の武家の手前もありますので、相当慌てておりました。大抵のことには動じないあの社長が、あれだけ慌てたのは見たことがありません。」
「それでよい。これで今後は気軽に声を掛けては来るまいよ。そもそも商家の宣伝に、帝家を利用しようなどとは、山髙屋め、増長甚だしい。」
 確かに次ノ宮殿下の言う通りだな。

「それで、どうなされます?」
「打ち合わせ通りだ。そろそろよかろうな。
 サエモンに、山髙屋を通せと伝えよ。」
 殿下が、横で控えていた侍従に告げると、間もなく社長が通されて来て跪いた。

「殿下、なにとぞ御考え直し下さい。」拝む様に両手を合わせて深々と首を垂れる。
「そのことなら、わが忠臣、ユノベ統領の執り成しがあったゆえ、思い止まった。」殿下は何事もなかった様にシレッと言った。
 殿下もしゃあしゃあと嘯くなあ。大したタマだ。それに俺はまだ統領じゃないんだけどな。
「ありがたき幸せ。」社長が何度も叩頭している。
「礼はアタルに申せ。」あーあ、これで殿下に借りができたぜ。
 社長とともに退室すると、社長は平身低頭で、さすがに種明かしはできなかった。なお、この件ですっかり懲りた社長は、二度と帝家を安易に利用しようとはしなくなったという。まあそれは後日譚。

 5武家代表と、ホストである山髙屋の顔合わせが終わり、殿下の引き起こした騒動のせいで、定刻からやや遅れて披露目は始まった。間もなく、主賓の次ノ宮殿下が派手に登場し、割れんばかりの拍手を浴びて主賓の座に着いた。

 招かれているのは、東都ギルドのギルマスのタケクラをはじめ、大手商家の代表たちや、多数の瓦版屋の主たち、その他錚々たる東都の名士たち。
 これだけ集めるのも山髙屋の影響力と人徳だな。確かにこの面々の前で次ノ宮殿下にすっぽかされたら、面目は丸潰れ。信用問題としては、致命傷に近い相当な痛手だ。

 同盟と提携の条件が読み上げられ、契約書にそれぞれの代表がサインして調印し、最後に、次ノ宮殿下が裏書きした。これで帝家が認める同盟と提携になった。
 これでセレモニーは終わり、午餐となったのだが、これがまた豪華な料理の数々だった。披露目には参加しなかったのだが、別室で、俺の嫁たちにはこの料理が饗されているという。アキナのおかげだな。キョウちゃんズはガッツリ食ってるだろうな。笑

 俺は次ノ宮殿下の隣だったが、これは次ノ宮殿下の要望だった。各家の代表が挨拶に来るたびに、紹介する役を仰せつかったのだ。
 まずユノベからは二の叔父貴、その後は、トノベ、ヤクシ、タテベ、キノベの順に代表ふたりがそれぞれ次ノ宮殿下に挨拶に来た。俺は、タテベのときにシルドを、キノベのときにトウラクを、それぞれわが莫逆の義兄弟として紹介した。

「アタルよ、この同盟と提携には、婚姻が伴うと申しておったが、奥たちは連れて来ておらんのか?」
「いいえ、連れてきておりますが、注目を浴びますゆえ、別室にて控えさせております。」
「ならば、余の帰り際に連れて参って紹介せよ。」

 次ノ宮殿下が退室し、およそ3時間の午餐は終了となった。俺は、午餐が終わるとすぐに、招待客の中にいた東都のギルマス、タケクラに会いに行き、披露目の後に、橙土龍攻略にトリトの大砂丘に行くことを伝えた。
 その後、一旦ユノベの控室に戻ってひと息ついてから、嫁たちを実家の控室に派遣した。俺とキョウちゃんズはユノベの控室でお留守番だ。

「サキョウ、ウキョウ、料理は旨かったか。」
「「うん。」」ふたりはえらくご機嫌だ。
「いっぱい食べたでー。」
「お腹がパンパンやー。」
 ふたりとも俺の両膝に座って来たので腹に手を回して擦ってやった。確かにパンパンだ。これがほとんど気力維持に行って、体の成長が遅れてると言うんだから不思議なものだ。そのまんまふたりとももたれ掛かって来たので、しばらく腹を擦り続けてやった。

 次ノ宮殿下がお帰りになるとの伝令が来たので、俺は、隣の控室の二の叔父貴と重臣ふたりに声を掛け、キョウちゃんズを連れて玄関へ向かった。すでに山髙屋の集団が見送りに出ていた。
 他の武家も続々と現れる。タテベ統領とキノベ統領は、俺がシルドとトウラクを次ノ宮殿下に引き合わせたことについて、丁寧に礼を述べて来た。もちろんシルドとトウラクもだ。

 嫁たちは実家の集団から俺のところに戻り、次ノ宮殿下を待った。ほどなくサエモンに先導されて、次ノ宮殿下の集団が出て来た。
「アタル、連れて来たか。」
「はい。」俺は、サヤ姉、サジ姉、ホサキ、アキナ、タヅナ、サキョウ、ウキョウを紹介した。7人とも完璧な朝廷挨拶をしたのには驚いた。

「なるほどのう。注目を浴びるとはこういうことか。これだけ美形揃いでは、披露目で紹介できんな。会場の男どもを敵に回すことになるわ。」
「はっ。仰せの通りで。」
「吹くわ、吹くわ。謙遜ぐらいせんか。」次ノ宮殿下は愉快そうに笑った。
「殿下、そろそろ。」侍従である。
「ではアタル、披露目に出たことに対する例の約束、忘れるでないぞ。」
「心得ております。」
 その後、次ノ宮殿下は、順々に、トノベ統領、ヤクシ座主、タテベ統領、キノベ統領、トウラク、シルドと言葉を交わし、最後に山髙屋社長から丁寧な御礼を受けて、馬車に乗り込み、帝居へ帰って行った。

 その後、武家もそれぞれの御用宿に帰って行った。ユノベも帰ろうとすると、山髙屋の社長が見送りに来た。
「アタルどの、本日は次ノ宮殿下を引き留めて頂いて、本当にありがとうございました。ただ、その見返りに、何かお約束をなされましたので?」
「舅どの、大したことではないからお気になさらずに。それより、よき披露目でありました。このアタル、心より感謝致します。」

 俺たちは、北斗号に乗り込んだ。帰りは俺が御者、御者席の両横にアキナとタヅナ、後部座席にサヤ姉、サジ姉、ホサキ。キョウちゃんズは上段ベッドに寝転んでいる。
「アタル、パパにはああ言ってましたけど、殿下とはどんなお約束をなさったのですか?」
「いや、ほんとに大したことじゃないんだよ。北斗号をお見せした直後にな、殿下が約束を反故にして帰っていいかというからさ、俺が殿下との約束を反故にして新しい神龍鏑を見せに行かなかったら、殿下もがっかりするだろうと言ってやったんだ。」

「アタル、あんた次ノ宮殿下を脅したの?」
「いや、だから例えばの話だって。」
「脅しでないというなら、取引ではないか!まったく、次ノ宮殿下相手に、向こう見ずだな。」
「まあまあ。そしたら、山髙屋どのを脅すのだけはやらせろと言うんだ。ちょくちょく帝家を利用されては困るからと。まさかほんとにやるとは思わなかったがな。」

「では…最初から…殿下の…芝居…?」
「まあ、そうだな。そして山髙屋どのが困り果てたら、俺に頼るだろうから、俺が仲裁に出たところで矛を収めると。さすれば俺の株が上がる。これは、神龍鏑を見せに来る礼なんだそうだ。」
「つまりパパは、殿下とアタルに一杯食わされたということですね?ああ、おかしい。」アキナが涙目になって笑い転げている。

「俺は違うぞ。殿下にやめるようにと言ったし、ほんとにやるとは思ってなかったから、巻き込まれたというのが真相なんだがな。」
「そんなのぉ、言い訳だわぁ。」と、ツッコミながら、タヅナも笑っている。
「でもな、俺もこれで殿下に恩を売られた形になったから、神龍鏑を必ずお見せに行かねばならん。これが殿下の言う約束だな。強かなのは殿下の方だぞ。」

「確かにそうねぇ。でもアタルは元々殿下には、神龍鏑をお見せしに行くつもりだったんでしょ?」
「まあそうだな。」
「だったら、アタルは何も新しいことをする訳じゃないわね。ね、サジ。」
 こくり。
「つまり、山髙屋どのに恩に着られただけ、アタルが得したことになるのではないか?」
「他の…武家…からも…一目…置かれた…。」
「うーん、何かしっくり来ないが、そう言われてみると、俺だけ得した様な気もして来たな。」
 皆で笑った。キョウちゃんズだけ、北斗号の中で寝ている。珍しいな。

 ユノベの御用宿に着いて北斗号を降りるとき、寝室のキョウちゃんズを起こしに行ったら、ふたりとも腹痛でうんうんと唸っていた。食い過ぎか?さっき腹がパンパンだったからな。俺は慌ててサジ姉を呼んだ。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

設定を更新しました。R4/5/22

更新は月水金の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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