射手の統領

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射手の統領065 シルドとの初顔合わせ

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射手の統領
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№65 シルドとの初顔合わせ

 昨日は別行動だった嫁たちと合流した後、すぐに東都前寿司に向かったため、嫁たちに北斗号をゆっくり見せることができなかった。そこで、朝餉の後、改めて嫁たちに北斗号を披露した。

「セプトの7から天空の北斗七星を連想して北斗号と名付けた。」
「カッコええ名前やねぇ。」
「中はセミダブルが4台ですか。」
「そのサイズが精一杯だな。それでも2交代ならゆったりできる。全員で寝るとてしても、雑魚寝よりはましだろうよ。」
「上段ベッドにはどこから上がるん?」
「ベッドの後端の梯子だな。」
「あれ?アタル兄、この梯子、天井を越えて続いとるよ。」
「ああ、そのまま屋上に出られる。」

「ベッドの壁には小さい引き窓があるわね。」
「それもだが壁全体も開くぞ。」俺は外から壁の1つのパーツだけ上げ開き、つっかえ棒を立てて、落ちないように留め具を掛けた。
「すごい…仕掛け…。」
「左右でそれぞれ3パーツずつ上げ開くことができるから、休憩時は大型テントに早変わりだな。」
 皆感心している。

「屋根には外の4つ角の梯子からも登れるぞ。」
 皆が屋根に上がった。
「アタル、屋上は戦闘時は攻撃台、平常時は見張台として使うのね?」
「その通り。屋上中央が指揮所だ。指揮所にある管は伝声管で、御者台、寝室、倉庫と繋がっている。」
 早速キョウちゃんズが伝声管で会話を始めた。笑

 それからメイン車両後半部の倉庫、サブ車両と説明した。

 昨日中に5武家とも東都入りしている段取りなので、今日は、嫁を連れて、トノベ、ヤクシ、タテベの順に宿を回り、統領や座主に挨拶をしに行くことにした。
 トノベ、ヤクシの御用宿を順に回り、トノベ統領、ヤクシ座主に挨拶をして、いよいよタテベの御用宿に着いた。ホサキとともに面会を申し込むとすぐに通された。

「舅どの、お久しゅうごいます。」
「アタルどの、ご丁寧に痛み入る。こちらに控えおるのがタテベの世継で、副拠のナワテを任せておるシルドじゃ。」
「お初にお目に掛かり申す。ユノベが次期統領、アタルにござる。」
「ご挨拶痛み入る。シルドと申す。以後、よしなに。」真面目そうなお方だな。まあ、第一印象としては悪くない。

「兄上、お久しゅうございます。」
「ホサキか。つつがなく何よりだ。」
「シルドどののお噂は、ホサキからいろいろと聞いております。」少し砕けてみた。
「ロクな噂ではなさそうですな。」
「兄上、何と言うことを仰せです!アタルも、誤解を招くような言い方をしないでくれ。」
「自慢の兄上だと聞いてますよ。」

「アタルどのこそ、なかなかの切れ者のようで。父がホサキを遣わしたときは早々にこちらの思惑を見抜かれたとか?」
「いえいえ、こちらもタテベ家とは誼を通じたかったので渡りに船でしたよ。」
「2~3日で、堅物のホサキがあっさり落ちたと、父が嘆いておりましてな。」
「これシルド、余計なことを申すな。」
「まぁまぁ、父上。よいではありませんか。」
 和んだ雰囲気になって来た。シルドどのは、ホサキの御継母上に気性が似ておられるか?

「姑どのもそうでしたが、シルドどのは、場を和ますのがお上手ですね。」
「そうそう、その母上がよろしくとのことです。アタルどののことは、かなり気に入ってたようですから、そのうちいろいろと仕掛けられますぞ。ご注意召されよ。」悪戯っぽく笑っている。最初の真面目な印象が打ち消されて行くな。
「そのことでしたら、すでにホサキを通じて夫婦円満の秘訣などを仕掛けられております。」
 苦笑いをしながら正直に告白すると、シルドどのは大笑いをし、ホサキは真っ赤になり、タテベどのは「奥め。」と呟いて脇息に立てた右腕の掌に額を預けた。
 夫婦円満の秘訣とは、ホサキが御母上どのから伝授され、ホサキから嫁たちに広められた、混浴お背中流しである。

「ときに、アタルどの、七神龍攻略をお進めとか。」
「嫁たちとともに、攻略を進めます。七神龍は和の国中に散っておりますゆえ、旅のための馬車をキノベへ発注し、昨日受け取りました。」
「次はいつ立たれるかな?」タテベどのが聞いて来た。
「披露目が終わりましたらその後まもなく、廻船で商都まで、それから西都経由でトリトの大砂丘にて橙土龍を攻略しようと思ってます。」
「実は私とナワテの副拠から来た家来5名も、廻船で商都へ帰るのです。ぜひご一緒しましょう。」シルドどのが同行を誘って来たので俺は快く同意した。

 挨拶が終わり引き上げるときに、シルドどのが見送りに出てくれた。せっかくだ。今夜の夕餉を誘ってみよう。
「シルドどの、お近付きに今夜いかがです?キノベの世継と懇意でしてね、それと嫁たちも紹介したいのですが。」俺は手酌の仕草をした。
「お、それはいいですなぁ。」
「では後程、夕餉の頃合いにホサキを迎えに行かせます。」

 ユノベの御用宿に戻ると、嫁たちと合流して、今宵はシルドどのを紹介する旨、伝えた。
「トウラクも呼ぶから、流石に2日連続で東都前寿司というのもなぁ。」
「「うちは、ええよ。」」ハモってる。キョウちゃんズは余程、東都前寿司が気に入ってると見える。笑
「洋風…居酒屋…。」
「そうね。あのビールのお店は、洋風料理もよかったわ。」
「ああ、あそこか。あそこは旨かった。それにあの晩、サヤサジ流調教術が誕生したのだったな。」
 ホサキ、それを思い出させるな。相変わらず天然過ぎるぞ!
「そう…だった…。」ニヤニヤのサジ姉。
「今夜もああなるかしら?」ニヤニヤのサヤ姉。
「ならん!もう懲りたわ!」冷や汗の俺。

 結局、今夜の夕餉は洋風居酒屋になった。
「ホサキ、シルドどのをお迎えに行き、店までご案内してくれ。
 タヅナ、トウラクを誘いに行ってくれ。あ、タヅナは場所を知らんか?」
「じゃぁ私がタヅナと一緒に行って案内するわ。」
「すまんな、サヤ姉。じゃあ俺たちは直行するから店の前で合流な。」

 洋風居酒屋前で、シルドどのを連れて来たホサキ、トウラクを連れて来たタヅナとサヤ姉が合流して、シルドどのとトウラクを引き合わせた。

「シルドどの、キノベの世継のトウラクです。
 トウラク、タテベの世継で、タテベ副拠を取り仕切られてるシルドどのだ。今回披露目のためにわざわざ副拠から参られた。」
 ふたりは互いに挨拶を交わし、その後、俺は嫁たちをシルドどのに紹介した。

 紹介が終わって皆で洋風居酒屋に入る。

「あ、お客さん。いらっしゃい。お久しぶりです。」
「マスター、あの日以来なのに覚えてくれてたんだ。」
「そりゃあ、もう。何せ少数派のバイツェン仲間ですからね。」
「ほう、アタルどのもバイツェンがお好きか!」
「え?シルドどのも?」
「これは嬉しい。またバイツェン仲間が増えましたな。私はバイツェンが好きなんですがねぇ。しかし、出るのはピルスナーが大半でして。」と、マスターがぼやく。笑

 未成年のキョウちゃんズ以外は、俺のお勧めのバイツェンを注文。細長いグラスを思いっ切り傾けて注ぎ、最後に少しだけ瓶に残したビールを振って、瓶の底にたまった酵母を浮かして、泡ごとすべての酵母をグラスに注ぎ切る。瓶の底に酵母を残したら負けなのだ!

 キョウちゃんズだけソフトドリンクで、皆が注ぎ終わったところで乾杯。
「アタル、これは俺が知ってるビールとはずいぶん違う風味だ。」
「俺はこっちの方が好きなんだが、マスターによると、和の国では少数派だそうだ。」
「ふむ、俺はどちらでもよいな。それぞれいいところがある。」

 そうこうしてるうちに料理が出て来た。豚のすね肉を骨ごとビールで似たアイスバインや、酢漬けニシン、千切り酢漬け茹でキャベツのザワークラウト、茹でたジャガイモをすりつぶしたマッシュポテトと言った料理が続々出て来た。
 キョウちゃんズはアイスバインが気に入ったようで見事な食いっぷりだ。どんどんお代わりを注文した。全員で料理を堪能し、キョウちゃんズを除く成人組はビールも堪能した。

 トウラクとシルドどのも話が合うようで、かなり親しくなっていた。夕餉を終え、洋風居酒屋を出ると、すっかりご機嫌になったトウラクが、昨日のショットバーへ行こうと言い出し、今日は込み入った話もないので、全員でショットバーに流れた。隠れ家のような小さな店は、俺たちでいっぱいになった。

「マスター、いつもの。」というと、マスターはニヤリと微笑んで、ロンサカパのロックを出してくれた。
「「きゃー、アタル兄、カッコええわぁ。」」
「アタル、あんたいつの間にこんないい店を見付けてたのよ。」
「いつもの、って…常連…?」
 事情を知ってるタヅナが、横で笑っていた。
「実は、前から目を付けてたんだが、昨日トウラクたちと初めて入った。こういう店で、いつもの、で出てくるとカッコいいなという話をしてたんだが、マスターがそれを覚えててくれたんだな。」
「昨日の今日ですからね。」マスターとママさんが微笑んだ。

 しばらくみんなで呑んでいるとシルドどのが聞いて来た。
「アタルどのとトウラクどのは親友のようだが、ユノベとキノベはそんな前から深い付き合いがあったのかな?」
「確かにトウラクとは、馬が合いますがね、会ったのはつい最近なんですよ。」
「ひと月くらい前からだよな。
 アタルが、キノベに妹を掻っ攫いに来たのでね。」
 茶目っ気たっぷりにトウラクが言う。

「おい、違うだろ!キノベへは馬の技を学びに行ったんだ。」
「キノベで馬の技を学んだのは2日だけだよな。それでタヅナを連れて行ったではないか。」
「いや、確かにそうだが、そうではないぞ。」なんか答になってない。
「やっぱりふたりは仲がいいなぁ。羨ましい限りだ。」

「では、シルドどのも加わればよいではないか。なぁ、アタル。」
「そうだな、シルドどのも話が合うし、将来的には、タテベ、キノベ、ユノベを仕切る俺たちが、今、この場で義兄弟の契りを結ぼう。」
「いや、アタルどの、俺たちはすでに義兄弟であるぞ。」
「アタル、俺とも義兄弟だぞ。」
「あ、そうか。」3人で大笑いして、ホサキとタヅナが赤くなった。
「よし、今から、アタル、トウラク、シルドと気安く呼び合う仲で行くか?」シルドどのの提案に、トウラクと俺が乗った。

 朝まで3人で飲み明かしたい気分だったが、明日は披露目なので、今夜は深酒はできない。程々の時間で切り上げて、シルドとトウラクはご機嫌でそれぞれの御用宿へ帰って行った。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

設定を更新しました。R4/5/22

更新は月水金の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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