射手の統領

Zu-Y

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射手の統領062 サンファミと再会

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射手の統領
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№62 サンファミと再会

 翌日、朝餉を摂ってから、朝イチで東都ギルドへ向かった。
 そこそこの数の冒険者がいて、ギルド内は混んでいたが、俺たちがギルドに入ると、さっと割れて、受付まで道ができた。いや、ちゃんと並ぶから。

「おいアタル、久しぶりだな。」サンファミのジュピだ。
「おお、ジュピじゃないか。それと皆も。久しぶりだな。」
 サンズファミリー、通称サンファミとは、山髙屋の商隊を、12日間掛けて商都まで、一緒に護衛した仲だ。俺たちは互いに握手した。
「まったくセプトは、相変わらず規格外だな。」
「何がだ?」
「昨日久しぶりにギルドに顔を出したと思ったら、きついクエスト3つをまとめて受けて、即日にこなしたそうじゃないか。ギルド内は朝からその話題で持ちきりだぞ。」
「それでさっきの反応か。まいったな。」他の冒険者が遠めからチラチラと俺たちの様子を窺っている。

「アキナとタヅナもいるな。アタル、ちゃっかりふたりを口説き落としてたのか?」
 ジュピのツッコミにサンファミの皆が笑った。
「まあな。ところで皆に紹介しよう。このふたりは…。」
「え?…姫?」ジュピが驚きの声を上げた。
「「あら、ジュピはんやないの!」」キョウちゃんズも驚いている。
「ジュピとは知り合いか?偶然だな。」
 俺も驚いた。しかし、よくよく考えれば、陰士同士だから、繋がりがあって不思議ではない。ジュピはふたりを姫と呼んだ。大方、ジュピが陰士の修行で、陰士の元締めであるオミョシ分家の本拠地、アーカへ学びに行ってたとか、そんなとこだろう。

「あとで、会議室を借りて話をしよう。ふたりのことは…。」
「分かった。」ジュピが頷く。
 俺たちのやり取りに、まわりがさらに注目しだしたので、俺は話を一旦切った。キョウちゃんズの素性は内緒だ。

「セプトの皆さーん。」チナツが呼んでる。
「呼ばれたんでちょっと行って来る。ついでに会議室も借りて来るよ。」
「おう、後でな。」俺たちは一旦、サンファミと別れた。

「猛猫が、虎と誤認されていたことが確認できましたので、昨日受けたクエストは3件とも完了です。報酬と素材買取で、金貨4枚と大銀貨2枚です。」
「え?そんなに?」
「3つとも、敬遠されてたクエストのなので、割増になってたんですよ。この間、サンファミが休業してましたから請け負ってくれるパーティがなくて。」
 サンファミが休業?あ、そうか、ジュピの子供が産まれたな。

「昨日のクエストクリアで、アキナさん、タヅナさんは、ふたりともFランク昇格です。更新するので、冒険者カードを提出してください。それとこれでセプトはCランクパーティに復帰です。」
 アキナとタヅナの冒険者カードが更新されて返却された。
「「ありがとうございます(ぅ)。」」

「普通はこんなにすぐには上がらないんですよ。そもそも、昨日のクエストだって、どれも1日でこなせる物じゃないんですからね。」
 チナツがアキナとタヅナに念を押している。笑
「チナツさん、今日のクエストは?」
「掲示板の左上に難易度の高い依頼書をまとめておきました。サンファミも今日から復帰なので、分担して片付けてください。」
「ありがとう。それと会議室を貸してくれないか?」
「どうぞ。空いてるとこを使ってください。」

 俺たちはサンファミと再合流して、会議室に入った。
「ジュピ、おめでとう。産まれたそうだな?」
「おう!女の子だ。俺に似てかわいい。間違いなく美人になる。アタルにはやらんぞ!」
「え?」
「お前は女誑しだから娘はやらんと言ってるのだ。」
「は?」

 横でジュピ以外のサンファミが爆笑し、代表してプルが説明した。
「俺たちも全員、お前にはやらんと言われたよ。まったく、親バカもいいところだ。」
「そのうち、パパ嫌い。とか言われてのたうち回るだろうよ。」アステがにやけながら同調した。
「うちの娘はそんなことは言わん。」
「分かった、分かった。で、名前は決めたのか?」俺はすっかり呆れている。
「うむ。ルナだ。」

 さて、ジュピの親バカな一面が見られたところで、話は本題に入る。
「ジュピは、サキョウ、ウキョウと知り合いのようだな?」
「うむ。アーカで陰士の修行をしてたときにな。
 それにしても、姫たちは大きゅうなられましたな。このくらいでしたのに。」
 ジュピが両手を腰の高さで左右に動かしている。
「そらそうや。もう5年やろ?」「ほんまに久しぶりやねぇ。」

「しかしアタルよ、陰士を仲間にするとは言ってたが、まさか天才双子姫をふたりとも仲間にするとはな。分家がそれを認めたのも驚きだ。」
「ジュピはん、うちら天才やのうて落ちこぼれや。」
「半人前て、陰口叩かれとったわ。」
「どういうことです?」
 ジュピがアーカで修行してた頃のキョウちゃんズは、幼くして1つ目の陰の術を身に付け、効果が当時で3割近くもあり、気力量も底が知れないというので、天才と言われていたそうだ。

「2つ目の陰の術が身に付かんかってん。」
「せやから落ちこぼれのレッテル貼られてな、最後は勘当や。」
「それでも姫たちの効果は、当時でも、今の俺以上だったじゃないですか。気力量も測り切れない程、多かったし。」
「そないに言うて認めてくれはったのは、兄上とアタル兄だけやった。」
「でも分からんもんやで。勘当されたおかげで、アタル兄と知り合えたのやさかいな。」
「まぁ、そういう訳ありだから、サンファミの皆も、サキョウとウキョウの素性は極秘で頼む。」皆が頷いた。

「それとな、うちら陽の術の素質があるねん。」サキョウが得意げにジュピに切り出す。
「え?」ジュピが驚く。
「ライはんとウズはんが教えてくれはったんや。」ウキョウがすかさず補足する。
「ライというと黄金龍の?ではウズというのは…。」
「流石にジュピは鋭いな。お察しの通り蒼碧龍だ。おい、サキョウ。」俺はサキョウにウズ鏑を渡した。サキョウの全身が青く光る。
「「「「「おおおー!」」」」」

「サキョウは水の素質があるからウズ鏑を持つと、共鳴して青く光るんだ。さらに火と風の素質がある。ウキョウは土と氷と風だ。
 ふたりが陽の術を使えるようになるためには、同じ属性を持つ神龍を俺の眷属にしなくてはならん。だからセプトは、間もなくトリトの大砂丘へ橙土龍を攻略に行く。」
「では、サキョウ姫はすでに陰陽士なんですね。」ジュピが聞いた。
「サキョウでええよ。もううちら姫じゃあらへん。それと、うちもまだ陽の術は使えんよ。アタル兄のせいや。」
「どういうことだ?」ジュピが聞いて来た。はあぁ、やはりその話をせねばならんか。

「俺の眷属である神龍の力を得るには、ふたりも俺と繋がらなくてはならん。俺と繋がったら俺を仲介として神龍の力を得ることができるんだ。」
「繋がるとは?」
「「アタル兄に抱かれるんや。」」
「おい!」ジュピが凄い剣幕で胸ぐらを掴んで来た。他のメンバーからも殺気が飛んで来る。
「慌てるな。そんなことする訳ねぇだろ!」俺がジュピの手を振りほどく。
「すまん。つい。よく考えればそうだよな。いくらアタルが女誑しだとは言っても…。」おい、こら!しれっと何言ってやがんだ?

「まぁ、ジュピの反応も分かる。こんな子供を抱くのか!となりゃ、普通はそうなる。」逆の立場なら、俺も今のジュピのような反応をしただろう。
「えー、うちらもう13やんかー。」「子供やないでー。」
「年齢じゃないんだよ。体の成長だってまだ追っ付かないじゃないか。」
「アタル兄、いま、年齢やない言うたな。」ウキョウの眼がキラーンと光った。
「うちも聞いたで。体の成長が追っ付かんとも言うたな。」サキョウの眼もキラーンと光った。

「ほなら体が成長したら年齢は関係ないっちゅうこっちゃ。」
「今更、言い訳はさせへんで。」
「ぐっ。」言い返せない。泣
「皆もよう聞いたな。」「言質取ったでー。」ふたりがぺったんこの胸を逸らして勝ち誇る。ちょっとだけ膨らんで見えるのは、パッドのせいだ。
 この一件以降、キョウちゃんズはさらによく食べるようになってしまった。

 他の冒険者の手に余る難易度の高いクエストをサンファミと分担し、この日は、主に東都の西方面、翌日は東方面のクエストをそれぞれまとめてこなした。
 割増もあるので、3日間トータルで大金貨1枚、金貨2枚、大銀貨7枚を、一気に稼ぐことができた。非常においしい。

 ところで、サンファミと再会した夜は、アキナ、タヅナ、キョウちゃんズと同部屋だった。
 宿屋では原則同衾はなしなのだが、その夜はキョウちゃんズが添い寝してくれとせがんで来た。ジュピと再会したせいで、分家での辛いことを思い出したのだろう。アキナとタヅナも頷くので、添い寝をすることにした。

 この夜のキョウちゃんズは、マイドラゴンにちょっかいを出さなかった。やはり純粋に切なくて、添い寝をして欲しかったようだ。俺は両腕でふたりを抱え込み、腰のあたりを、ポン、ポン、ポン…とやってると、じきに寝息に変わっていった。サキョウもウキョウも眠りながら軽く涙ぐんでいた。可哀想に。

 オミョシ分家の権座主め、もう、オミョシとの同盟などどうでもいいから、マジでぶん殴ってやろうか。
 今、仮にオミョシと拗れても、シエンが分家の跡を継げばすぐに関係修復できるだろうしな。俺は、本気でそんなことを考えていた。
 私怨でオミョシ分家の権座主をぶん殴るなど、ユノベの統領としては愚策も愚策だが、絶対に妥協してはいけないこともある。

 うん、やっちまおう。

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設定を更新しました。R4/5/15

更新は月水金の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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