射手の統領

Zu-Y

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射手の統領040 キョウちゃんズのセプト加入

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射手の統領
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№40 キョウちゃんズのセプト加入

 朝餉を済ますと、大広間で代官3人に世話になった礼を言った。ウズ攻略の拠点としたユノベ副拠とも、今日でお別れだ。
 近いうちにまた来ると約束して、多くの副拠の家来どもに見送られながら、俺たち6人は流邏石で西都ギルドへ飛んだ。

 キョウちゃんズとは、ギルドを通して短期契約をしてるので、ギルドで蒼碧龍攻略の報告と、キョウちゃんズのセプト加入を申請するのだ。
 それから、世話になったサンキには、ウズ鏑を直接見せ、キョウちゃんズの素質も話さねばならない。サンキに話せば、オミョシ分家にも伝わるだろう。できれば、キョウちゃんズを気に掛けてくれている、分家の嫡男に繋いでもらいたい。

 ギルドに入るといきなりヤマホウシのクラマがいたが、クラマはすぐに眼を逸らして離れて行った。どうしたんだろ?

「チフユさん、おはよう。クエスト達成報告に来た。」
「え?もう蒼碧龍を攻略したんですか!」
「サキョウとウキョウがすぐに見付けてくれたからな。実質、一昨日1日で完了した。」
「サキョウちゃん、ウキョウちゃん、怪我はない?」
「「あらへんよ。」」ふたりは俺の腰にまとわりついている。
「あら、随分懐いてるのね。」
「あれからずっと一緒だったからな。」
「はい、ではふたりに成功報酬です。金貨1枚ずつ。受け取りにサインしてください。」
「「おおきに。」」報酬を受け取って、サインするふたり。

「それと、サキョウとウキョウのふたりをセプトに迎えることになった。パーティメンバー追加の申請はどうするんだ?」
 申請書をもらって必要事項を記入し、リーダーの俺と、加入するサキョウとウキョウがそれぞれサインして、申請書をチフユに提出した。

「ところでさ、クラマの奴が俺たちを避けてるんだが、何かあったのか?」チフユにこそっと聞く。
「うふふ、誰かさんがメチャクチャにした訓練場を見たんですよ。」
「ああ、それでか。」
「「え?あれ、アタル兄がやったん?」」驚くキョウちゃんズ。眼がキラキラしだした。かわいいなぁ。
「ライの力だがな。」
「ライはんの力はアタル兄の力や。な、サキョウ。」
「そやで。凄いなぁ。」
 一層まとわりつく。俺はふたりの頭を撫でた。あ、チフユがジト目で見てる。

「ところで、サンキさんに会いたいんだが、時間はもらえるだろうか?」
「聞いて来ます。」
 少し後、ギルマスルームに呼ばれた。俺、まとわりついたままのキョウちゃんズ、嫁3人がぞろぞろと移動する。

「おはようさん、まあ掛けなはれ。
 アタル、もう蒼碧龍を攻略したて、ホンマか?」
 俺は懐から青く輝くウズ鏑を取り出してサンキに見せた。龍の形は取ってないが、サンキには十分通じる。
「サンキさん、力を見るか?」
「いや、ええわ。これ以上、訓練場を壊されたら敵わんよってな。」皆が笑った。

 それから俺は、蒼碧龍攻略戦の内容を詳しく話した。
「剣士が大活躍やな。攻撃は最大の防御と言うことや。」扇子を半開きにして、口元に当て、ホホホと笑う。
 サンキに女心を学べ。と、たしなめられたやり取りを思い出して、俺は思わず苦笑した。

「実質、今回一番活躍したのはサキョウとウキョウだ。」
「「え?」」驚くサキョウとウキョウ。
「ほう。」サンキが眼を細める。
「そうよ。私が活躍できたのは、ウキョウのバフで私の能力が大幅に上がり、サキョウのデバフでウズの能力が大幅に下がってたからよ。互いの能力が元のままなら、間違いなく苦戦したわ。」
「俺たちの評価は今サヤ姉が言った通りだ。ふたりは今のままでも非常に優秀な陰士だ。もはや手放せん。ふたりには、正式にセプトに加わってもらった。そう言うことでよろしく頼む。」
 俺は言外に、オミョシ分家に伝えてくれと、サンキに頼んだ。

「さよか。やはりアタルは、目の付け所が違うのぅ。比べてはなんやが、クラマのアホとは大違いや。」
「東都から商都への護衛クエスト中で組んだパーティに陰士がいてな、クエストの間中、その陰士のバフとデバフが非常に効果的だった。その陰士も優秀だったが、それでも効果は2割強だ。サキョウとウキョウの効果はほぼ5割。いかにこのふたりが優秀かと言うことだ。ほんとに得難い仲間を俺たちセプトは得た。」
 俺の両横に座っているキョウちゃんズが、俺の手をギューッと握って来た。ふたりとも涙目になっている。俺はふたりの手を握り返した。

「こりゃ、お姫さんふたりは落ちよったな。」扇子を半開きにして、口元に当て、ホホホと笑う。
「そう、そこは教えといて欲しかったぞ。完全に誤解していてひどい目に遭った。」
「ひどい思いをしたのはうちらや。」
「ホンマやで。」
 両方の手をつねられた。笑

「これからセプトはどないするんや?」
「一旦東都に帰って、七神龍攻略の旅の準備を進める。東都では、騎士と商人が加わり、旅の移動のために馬車を手に入れたり、馬の技を学んだり、サンキさんからもらった紹介状で帝居を訪ねたり、やることがいっぱいある。
 準備が整ったら、古都で金剛鏑を手に入れ、一番近いトリトの大砂丘の橙土龍を攻略する。」
「土属性やね。」ウキョウの目が輝く。
「ウキョウ、よかったなぁ。」サキョウも喜ぶ。
「ん?」サンキが首を傾げる。
「サンキさん、サキョウとウキョウには陽士の適性がある。」
「なんやて?」

「サキョウ、手を出せ。」
 俺はサキョウの手にウズ鏑を乗せた。サキョウの体が青く輝く。
「!」眼を見開いて、絶句するサンキ。
 俺はサキョウの手からウズ鏑を受け取った。
「サキョウが水属性のウズに共鳴したのだ。サキョウには水の適性がある。ウキョウは土の適性があるらしいのだ。だから次は橙土龍を攻略する。」

「ほなら、サキョウはもう陰陽士になったんか?」
「まだだ。ライとウズよると、ふたりは気力が並のオミョシより桁違いに多いせいで、気力の放出口を、それぞれの陰の術で使い切ってるそうだ。新たに陽の術を会得するには新たな放出口を開けねばならん。その条件がまだ揃ってない。しかしあと2年のうちには揃うだろう。」
「どんな条件や?」
「ひとつはふたりの適性と合う七神龍が俺の眷属となること。もうひとつは、ふたりが俺によって抉じ開けられること。つまり抱かれることだ。すると俺を通してふたりと適性の合う七神龍が繋がり、陽の術の放出口が開くらしい。」
「ではあと2年と言うんは、ふたりの成長待ちと言うことかえ?」
「そう言うことだ。さすがに今のこの子たちを抉じ開けるようなむごい真似は俺にはできん。」
「確かにな。そら犯罪やで。」

「ところでサンキさん、東都へ行くにあたり、ふたりが世話になった兄上に挨拶したいと言うのだが、オミョシ分家の嫡男に繋いでもらえるか?」
「ふむ。構へんが…。
 ここんとこ毎日来とるから、ギルドにおったら会えるやろ。」
「そうか、今日は特に予定がないからしばらく待ってみよう。」
「会えずに去ぬんやったら、受付に伝言残しとき。それと、蒼碧龍攻略の査定をするよってに、明日またギルドに来てや。」
「承知した。」

 俺たちはギルマスルームを出てロビーに向かった。ロビーでキョウちゃんズの兄上をしばらく待ってみたが、なかなか現れない。

 そろそろいい時間だから昼餉を摂ろうと言うことになった。ロビーは飲み食いできるスペースもある。大銅貨8枚のランチを6つ頼んだ。
 6人掛けのテーブルに座ると、キョウちゃんズはしっかり俺の両横をゲット。嫁3人は向いの席だ。苦笑いをしている。

「昨日から、キョウちゃんズはアタルにベッタリね。」
「うん、一昨日の晩のお風呂から出るときになぁ、うちらがアタル兄のことを好きなの、ウズはんにバラされてしもてん。そしたらな、アタル兄がうちらのこと大好きだよ。って言うてくれはったんや。」
「そやからな、うちら両想いやねん。」
 好きの意味が違うんだがな!

「ふたりとも…羨ましい…。」あ、サジ姉がふたりを煽った。笑
「さっきもな、褒めてくれはったしな。」
「くっついても邪険にせんしな。」
「褒めたのはほんとのことだし、くっついても邪険にせんのはふたりがかわいいからだぞ。」と言ってふたりの頭を撫でる。
「「えへへ。」」ふたりはご機嫌である。

「おい、そこの男、妹たちから離れい!」
「え?」声の方を振り向くと敵意むき出しの眼をした、術士風の少年が俺を睨んでいた。
「「兄上!」」
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設定を更新しました。R4/3/20

更新は月水金の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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