射手の統領

Zu-Y

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射手の統領036 キョウちゃんズの素質

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射手の統領
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№36 キョウちゃんズの素質

 翌朝、朝餉を済ませた俺たちは流邏石で西都に飛んだ。

 ギルトに入るとすぐギルマスルームに通された。サンキは箱から金剛鏑を取り出して俺に向かって差し出した。
「これが西都ギルドで預かってた金剛鏑や。」
「ありがとう。確かに受け取った。」
「それとな、帝への文は昨日のうちに飛脚で出したよってな、東都に去んだら、帝居を訪ねや。そんときにアタルの身分を保証する紹介状がこれや。」
「何から何まで世話になるな。」
「まぁ、これからは東都だけやのうて西都のギルドにも貢献してくれや。それでチャラや。」扇子を半開きにして、口元に当て、ホホホと笑う。

 ギルマスルームを退室した俺たちは、ギルドのロビーへ戻った。お、キョウちゃんズが来てる。あれ、揉めてるのか?またクラマの奴だ。
「せやから、うちら、アタル兄のパーティと短期専属契約を結ぶんよ。」
「そんなん待ってもろたらええやん。今日の午前中だけでもええよってに。」
「それにうちら、もうあんたとは、よう組まんと決めたのや。」
「なんでや。昨日かて報酬きちんとはろたやないか。」
「「どの口が言うんや!」」

「おーい、サキョウ、ウキョウ、おはよう。どうした?」
「「あ、アタル兄、おはようさん。」」
「おい、お前、アタル言うたな。人の下請けを勝手に抜くたぁ、どう言う了見や?」
「下請け?なんだそりゃ。」
「こいつらはな、駆け出しの頃から俺たちヤマホウシが面倒見て来たったんや。」
「ピンハネして食い物にして来た。の間違いじゃないのか?」
「なんやと。」

「サキョウとウキョウはな、非常に優秀な陰士だ。俺は今まで効果5割の陰士など見たことがない。せいぜい2割強だ。だから今回、助っ人として短期専属契約を申し入れ、了承された。正式にギルドを通してな。文句あるか?」
「くっ」
「それにな、そんなにサキョウとウキョウに未練タラタラと言うことはお前もふたりの実力は認めてたんだろう?だったら昨日、なんであんなひどい扱いをしたんだ?」

「ちょっとあんた、アタルと言うたか。すまんな。俺はヤマホウシのウジや。さっきから、キョウちゃんズを食い物にして来たとか、ひどい扱いをしたとか、ちょっと聞き捨てならんで。どう言うことや?」
 俺は昨日の一件をウジに話した。
「クラマ、今の話はホンマのことか?」
「きちんとふたり分、はろたわい。」
「ちゃうで。四半値に値切ったっちゅーのがホンマかて聞いとるんや。」
「こいつらが甘ちゃんやさかい、世間の厳しさを教えたったんや。」
 ウジは溜息をつき、キョウちゃんズの正面に行って頭を下げた。
「サキョウ、ウキョウ、すまなんだの。流石にこれでは愛想尽かされてもしゃーないわ。」
「「ウジはん…。」」

「クラマ、今日の依頼はキャンセルや。キョウちゃんズがおらなんだら、わしらには荷が重い。無理や。キャンセル料はお前がはろとけよ。」
「え?なんでや。」
「当たり前やないかい!おんどれの狡すっからい性根のせいでキョウちゃんズから愛想尽かされたんやないか!そんなこともよう分からんのか!このアホんだらがぁ!」
 ウジの渾身の一発でクラマは吹っ飛んだ。クラマは完全に伸びており、ウジはキョウちゃんズに深々と頭を下げてギルドから出て行った。

「はいはい、手の空いてる人、クラマさんをギルドの外に放り出して下さい。」
 チフユの呼び掛けに何人かが応えて伸びてるクラマをギルドの外に放り出した。
「ありがとうございました。ギルドの外での喧嘩にはギルドは関知しませんよ。皆さんいいですねー。」
 おう!と、まわりも応え、拍手が起きる。クラマの奴はよほど嫌われてると見える。

 キョウちゃんズが受付で俺の指名依頼を受ける。
「じゃぁこれ、1週間分の前払いな。」
「「おおきに」」
「アタルさん、くれぐれもキョウちゃんズのこと、よろしくお願いしますね。もし怪我でもさせたら、西都ギルドへは永久に出禁にしますからね。」
「おう、任せろ。」

 キョウちゃんズを加えた俺たち6人は装備屋に向かった。
 キョウちゃんズの装備はそこそこである。陰の杖、頭巾、デバフの手袋またはバフの手袋、術士のローブ、皮の靴だ。
 頭巾を鎖鉢金、布の靴を疾風の靴に変えた。
 キョウちゃんズが支払おうとするので、今回のクエストに対する準備だからいいといって俺が支払った。両手を胸の前で組んでお祈りのポーズをしながら、ふたりの眼がキラキラしてこっちを見つめている。
 やめい、その眼はやめい!

 いくらかわいい顔立ちをしてても、こいつらは少年。俺には男色の趣味はない。やっぱこいつら男の娘だな。俺の疑いは確信への変貌して行く。

「アタル、これは掘り出し物だぞ。」
 ホサキが見付けたのは身代わりのペンダント装備者が受けたダメージを肩代わりし、肩代わりしたダメージが装備者の最大体力分に達すると砕け散る。
 確かにこれはいいな。金貨5枚か。かなりいい値段だが、金貨5枚で命が買えるなら安いものだ。
 店頭にはカタログしかない。高級品なのでしまっていると言う。在庫は5個。入荷は不定期らしい。俺はすべてを買って、サヤ姉、サジ姉、ホサキ、サキョウ、ウキョウに配った。5人の目がキラキラしてる。嫁3人はいいが、キョウちゃんズはやめてくれ。俺はノーマル。男の娘はパスだ、パス!

 俺は5人を西都に待たせて、流邏石で商都に飛び、商都の装備屋で身代わりのペンダントがないか聞いた。在庫は4個と言うのですべて買って西都に戻った。

 昼餉を西都で済ませ、キョウちゃんズに西都ギルドとガハマのユノベ副拠館の流邏石をひとつずつ与えた。
「アタル兄は、気前がええねぇ。」
「ほんまやねぇ。」
 モジモジ×2。やめてくれぇぇぇ!

 6人でガハマのユノベ館に飛ぶ。
「若。お帰りなさい。」
「おう、ご苦労。」
「アタル兄、若、て何?」
「ああ、俺、ユノベの次期統領なんだ。」
「「なんやて!」」
「まぁ入れよ。その辺のとこも含めて詳しく話すわ。」

 俺は表座敷に代官の重臣3人を呼び、サキョウとウキョウを紹介した後、俺の部屋に嫁3人とキョウちゃんズを集め、キョウちゃんズにこれまでの経緯を話した。
 ライ鏑を見せたときは、ふたりはさすがに驚いていた。ライはすぐに黄金龍の形を取り、さらにふたりの度肝を抜いた。そして念話でトドメを刺した。
『アタルよ、この双子、思わぬ拾い物だぞ。』
「「あわわわわ。」」ふたりして抱き合って怯えている。笑

「ライにも分かるか。デバフとバフが凄い。オミョシはなぜ単一能力特化型につらく当たるんだろうな。」
「え?アタル兄、うちらの素性を知ってはるの?」
「まぁ、察しはつくな。その能力の凄さ、オミョシ分家の血筋であろう?それと単一能力特化型は、俺は凄いと思うがオミョシはそうは考えぬ。ふたりが勘当されてると聞いたとき、オミョシは13歳までに2系統を取得せねば、成人の15歳までに3系統を取得できないので勘当になる。と言う話を思い出してな。」
「そうやったんか。」
「アタル兄、それだけで分かるなんて、なんか凄いなぁ。」
 ふたりの眼がまたキラキラし出した。男の娘のキラキラはキモい。俺には無理!まぁ、女の子でもさすがに子供はパスだがな。

『アタル、こ奴らは単一能力特化型ではない。』
「え?単一能力特化で効果が5割もあるんじゃないの?」
『違うな。それはこ奴らの気力量のせいだ。並のオミョシの数10倍は優にある。』
「そんなにあるのか?」

「ライはん、単一能力特化でないと言うことは、うちら、他の術も使えるようになるん?」
『なるぞ。サキョウ、そなたは水、火、風の適性がある。ウキョウは土、氷、風だ。』
「陽の術ばっかやな。」
『そうだ、残念だがサキョウにバフの、ウキョウにデバフの適性はない。』
「それやったら、いつまでたってもうちらの陰の術が1つだけなんは、仕方ないことやったんやな。」
「ではうちら、これから陽の術の修行をすればええんやね?そしたら、すぐにうちらは陰陽士やな。分家の落ちこぼれ、言われたうちらが…。」

『違うな。今のオミョシの修行ではいつまで経っても無理だ。』
「「そんな殺生な!」」あ、そんな殺生な!って、普通に使うんだ。笑

『お前らの気力量が多過ぎるせいで、最初の能力に目覚めたときに気力が一気に噴き出してな、最初の能力の放出口に加えて、他の能力の放出口もすべて使ってしまっているのだ。
 オミョシの修行は、使ってない放出口を開けるものゆえ、すべての放出口が使われているお前らが、いくらオミョシの修行をしても無理なのだ。』
「ほなら、どうすればええの?」
『有体に言えば、気力の放出口を新たに抉じ開ければよいのだ。』
「それはどうやるん?」
「何でもやりますよって、教えとくれなはれ。」
『今はまだ無理だな。』
「「なんでぇ?」」悲鳴に近い。余程、切羽詰まってるんだなぁ。

『お前らが陽の術を会得するには、その属性を持った七神龍が余のようにアタルの眷属となること。そしてお前らがアタルによって抉じ開けられること。さすればアタルを通して七神龍とお前らが繋がることになる。
 適性のある七神龍と繋がれば、アタルに抉じ開けられた新たな放出口から、新たに繋がった七神龍の司る術を放出できるようになるのだ。』
「ライ、サキョウとウキョウを抉じ開けると言うのはどう言うことだ?まさか…。」
『アタル、分かっておろう。こ奴らを抱けばよいのだ。こ奴らが初陣ならなお効果的だぞ。』
 キョウちゃんズ、真っ赤っか×2、モジモジ×2。やめろ!キラキラした眼で俺を見るな!男の娘のそれは、はっきり言ってキモい。

「ライ、無理だ。俺に男色の趣味はない。」
「ちょっと!アタル兄、男色ってなんやの?うちら女の子え。」
「は?」
「いくらぺったんこやからって、今のはないわぁ。えろう傷付いてしもた。」
「は?」
 怒りに震えている。真っ赤っか×2だが、さっきの真っ赤っかとは意味が違う…と思う。
「アタル、あんた、キョウちゃんズが男の娘だと思ってた訳?」
「いや、髪型、そう髪型がショートの刈上げだから、それで思い込み。胸じゃないから。髪型だから、髪型。」
「こんなに…かわいい…のに…普通…間違わ…ない…。」
「アタル、どう見てもキョウちゃんズは女の子だと思うぞ。」ホサキ、お前もか?

 俺だけ?俺だけなのか?
 そうか!サンキが言ってたほぼ合ってると言うのはこのことか!男の双子ではなく女の双子だったんだ。サンキは俺の誤解でこうなることを見越してやがったな。
「サンキめ…。」

 あれ?でもあのとき横で聞いてた3人は何も言わなかったよな?3人を見ると眼を逸らした。やっぱ3人とも同じ誤解をしてたんじゃねーか。
 しかし、この3人も誤解してたと分かったら、キョウちゃんズはさらに傷付くな。よし、俺ひとりが悪者になろう。

「サキョウ、ウキョウ、本当にごめん。正直に言うと、髪型よりも、クラマに食って掛かってた威勢のよさだ。子供なのに大人に食って掛かってたのを見て、最初に威勢のいい少年だと思い込んでしまった。」
「少年から男の娘になったのはなんでやのん?」
「所々に見せたふたりの女の子らしさだ。最初に少年と思い込んでしまったせいで、男の娘だと誤解した。それにふたりのかわいらしさが拍車を掛けた。」
「「え?かわいらしいて。」」モジモジ×2。よし、ジャブが効いたぞ。

「胸もぺったんこやからやろ?」
「すまん。それも理由のひとつだ。でも胸はこれから大きくなるから、それは気にせんでいいと思うぞ。」
「ウキョウ、アタル兄は最後も正直に答えはったわ。」
「せやね。間違うた理由は分からんでもないし、許してあげよか?」
「ありがとう。本当にごめんな。」俺はふたりの頭をポンポンと撫でた。
 真っ赤っか×2、モジモジ×2。仲直り完了。
 サヤ姉とサジ姉とホサキがジト眼を向けて来たので、今回は睨み返してやった。ふん、お前らだって同じ誤解をしてたのに俺がすべてを被ってやったのだ。3人は俯いた。ふふふ、いい気分だ。

「そうなると、七神龍を眷属にする旅にはうちらも加わらんといかんねぇ。」
「せやね。でも兄上がなんて言うか…。」
「あかんて言うやろね。」
「兄上には申し訳ないけどしゃーないやん。」

「その兄上とは、オミョシ分家の嫡男か?」
「そうなんよ。うちらが勘当されてから、ずっと気に掛けてくれてはるんよ。」
「でもうちらが陰陽士になる旅や言うたら許してくれはるんやないの?」
「なぁ、蒼碧龍は水属性やったな。ならうちはすぐ陰陽士になれるんやね。うちが陰陽士になって、ウキョウもって言えば許してくれるはずや。」
「いや待て。それはないぞ。もうひとつの条件を忘れてるだろ。」
「え?アタル兄に抉じ開けられる言うこと?うちは…その、ええよ。」モジモジ真っ赤っか。
「うちもええよ。何やったら、今夜にでも…抉じ開けてんか?」モジモジ真っ赤っか。

「俺がよくないんだよ。俺はロリコンではない!少なくともふたりが成人するまではダメだ!」
「「えー、2年も待つんかー?」」
「とにかくダメなものはダメ!」
「「いけずー。」」ぷくーっとふくれるキョウちゃんズ。女の子と分かったら、ふくれっ面もかわいいではないか!って、何考えてるんだ、俺。やばい、やばい。危ない、危ない。俺はロリじゃない。決してロリじゃない!
「いけずー、じゃない!
 ふたりがセプトに加わるのは大歓迎だから、もし兄上が反対したら俺が説得しよう。それでいいよな?」

 ぺったんこのおませふたりを何とか説得した。うーん、ホントに説得できたんだろうか?

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設定を更新しました。R4/3/13

更新は月水金の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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