射手の統領

Zu-Y

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射手の統領033 商隊解散

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射手の統領
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№33 商隊解散

 今朝はすこぶる爽快な目覚め。そりゃそうだ。昨晩、深夜までご馳走をたらふく食ったからな。何回もお代わりしたし♪
 両方から来る耳元への寝息がマイドラゴンを元気付けているが、朝からはダメだ!と昨日どっかをほっつき歩いていた俺天使が脳内で喚く。お前、昨夜はどこに行ってたの?

 俺は頂を弄ってふたりを起こす。
「もうぅ。」「うふふ。」
 ふたりは抱き付いて来た。マイドラゴンがイキり立つ。
 ふたりに軽くキスをして、シャワーを浴びる。我儘なマイドラゴンを、冷水シャワーでイジメてやった。笑

 いったんセプト部屋に戻り、ニヤニヤしている嫁3人に、
「いつそそのかしたんだよ。」
「オーガの夜よ。誰かさんが爆睡してた隙にね。」
「ふたりが…別れを…悲しんでた…から…。」
「ホサキ、御継母上の入知恵を授けちゃってよかったのか?」
「夫婦円満の秘訣のことか?構わん、皆で共有した方がいいではないか。」
 まったくこいつらときたら。なんて素晴らしい嫁たちなんだ!

 朝餉を済ませて商隊出発。
 最終日の行程は、オツの湖港町からひたすら南西に、商都まで進む。
オツを出てしばらくすると西都の南域をかすめるので、そこで流邏矢の甲矢を登録した。商隊はドヨの河に沿って南西に進み、ヒラタの農村の外れで昼餉を取るときに流邏矢の乙矢を登録した。

 念のため、警戒は怠らないが、西都・商都間に野盗や獣の心配はない。俺は中央車両での最終日の行程をとても有意義に過ごした。御者をするときはタヅナの隣でベタベタ。御者をしないときは、後部座席にアキナと並んでベタベタ。
 そんな楽しい時間はすぐに終わりを告げるものだ。

 商都は大きい!そして経済に特化しているだけあって、商人の活気が凄い。人々も明るくて生き生きしており、あちらこちらで、ボケとツッコミが繰り返されている。

 商隊はとうとう山髙屋商都西本店に着いた。すると、西本店店長自らが出迎えて来た。
「アキナ、ご苦労だったわね。皆様もお疲れ様でした。」俺たちにも丁寧に頭を下げる。
「今、アキナと呼んだか?」
「西本店店長は山髙屋の専務で、パパの従妹なんです。」
「あら?あなたは?」
「護衛隊セプトのアタルだ。山髙屋の小父さんも威張ってなかったが、西本店の店長も自ら出迎えて、俺たちにも丁寧な対応とはいい社風だな。」
「あら、ありがとうございます。ひょっとしてアキナのいい人かしら?」
「分かるか?」
「じゃじゃ馬ですわよ。乗りこなせますかしら?」
「従叔母様!」
「乗ってみないと分からんな。」
「あら?まだですの?」
「まだだな。」俺はシレっと嘘を吐く。昨夜、散々乗り回したんだけどな。腹の探り合いだ。

「そうそう、アキナ、交易で異国からこんなものが手に入ったわ。ゴムと言う木の樹液から作るそうよ。」
 西本店店長がアキナに渡したのは、伸縮する素材だった。
「強度にもよりますけど、成型できるのでしたら、荷の結束なんかに使えそうですね。」
「そうね、こうなるわ。」
 輪っか状にして細くしたもの、これは小さいもので輪ゴムと言うそうだ。サイズもいろいろある。太く長いゴムチューブと言うのもある。
「随分細くなるんだな。」細くなってもよく伸びる!

「こう言うのもあるわ。ここに息を吹き込んでみて。」
 潰れた果実? 言われた通り、息を膨らむと膨らんだ。ゴム風船と言うらしい。中に入れるのは水でもいい。漏れないそうだ。
 装飾などに使える。面白い素材だ。色々使えそうだな。弓の稽古の的にしても面白いか?

 閃いた!天啓だ。
「水は漏れないんだな?」
「漏れないわ。」
「もっと薄くできるか?」
「できると思うわ。」
「薄くしても丈夫か?」
「さぁ、それはやってみないと分からないわ。」俺の矢継ぎ早の質問に答えながら、西本店店長は首を傾げる。

「アタル、何か閃いたんですか?」アキナが聞いて来た。
「うん、閃いた。この風船を薄く延ばして、マイドラゴンに被せる。先端にホワイトブレスを溜められる隙間を作っておけば、ホワイトブレスを女体内にぶちまけなくてよくなる。つまり…。」
「妊娠しなくなるわね。」西本店店長の眼が輝いた。
「そう、これは需要があるはずだ。まずは色街、それから夫婦、そして俺たち。」
「俺たち?」
 この問いはスルーした。笑
「色街では性病予防にもなる。色街の女たちが望まぬ妊娠や、性病から守られる。色街は必要悪だ。需要はなくならない。
 大量生産して廉価にすれば、色街よりも一般での需要の方が遥に大きいぞ。これは商売になる。アキナ、小父さんへのいい手土産になりそうだ。」
「そうですね。」アキナの眼が光った。商品としての大いなる可能性を感じ取ったのだ。

 その後、ひとりひとりに本日分の手当の半額大銀貨1枚と、任務完了の際の、12日間の手当の残額、金貨1枚と大銀貨2枚が支払われた。俺とジュピとタヅナは、アキナからギルドに提出するパーティ用の依頼完了証明書を貰った。

 ここで商隊は解散となり、メンバーは互いに握手する。
「アタル、この12日間、楽しかったぞ。」
「ああ、俺もだ。ジュピのおかげで陰士の重要性に気付かせてもらった。ゆくゆくはセプトにも陰士を加えたいと思っている。」
「陰士は地味なんでな、なかなかその価値に気付いてくれる奴がいないんだ。アタルには分かってもらえて嬉しいよ。」
 ジュピと俺は固く握手した。プル、マズ、ネプ、アステとも順に握手した。

「アタル、御者の技はだいぶ上達したな。残るは騎乗の技だ。東都に戻ったら、馬の技を学びにキノベへ来いよ。」アオゲだ。
「もちろんだ。必ず行くのでそのときはよろしく頼む。」
 アオゲ、アシゲ、カゲ、クリゲと順に握手した。
「それと、姫の迎えだろ?」アシゲだ。
「そうだな。」俺は頭を掻いた。皆が笑う。

「アタル、道中お疲れ様でした。大活躍でしたね。」
「ああ、ハンジョーにも世話になった。東都に戻ったらまた世話になる。」
「分かってますよ。」婿入りの目がなくなって少し寂しそうだ。ハンジョーとも握手を交わした。

 そしてアキナとタヅナだ。
「ふたりとも、御父上の説得をよろしくな。」
「今日のアタルのアイディア、パパへの手土産としてはかなりのものです。これは説得に追い風になります。
 それから、東都への帰路でうちの廻船を利用するならこの割引券を使って下さい。」
「アタルのぉ、馬の扱いと馬への思いやりもぉ、父上には伝えるわぁ。馬の技を学びにぃ、必ずミーブに来てねぇ。」
「ああ。」ふたりと固く握手した。思わずふたりまとめてハグしてしまった。皆がいるのでキスはなんとか我慢した。

 アキナとハンジョーは西本店店長とともに商隊の事後処理、タヅナ隊は荷馬車と馬たちのメンテで商都西本店に居残り、サンファミは道中控えていた分、早速呑みに行くのだそうだ。

 俺たちセプト4人は、商都西本店をあとにして商都の冒険者ギルドへ向かった。タヅナ隊とサンファミは、山髙屋の廻船ですぐに東都に帰還するので、東都のギルドに依頼完了証明書を出すのだが、俺たちは蒼碧龍攻略があるので、明日以降はガハマに行く。よって、依頼完了証明書は商都ギルドに出すことにした。
 商都ギルドに着いたら流邏石4個を登録して皆に配った。これで流邏石の残りは1個だ。明日、西都で購入しよう。

 ギルドに入り、受付に提出する。ここも受付はちょいと美人の巨乳のお姉さんだ。俺はパスだが、一般の男性冒険者は好みだものな。
「コネハの峠で野盗24名捕縛、ズオカの手前でキラーベスパの巣を駆除、マエザの漁村で猛鮫1匹退治とキラークラブ3匹退治、ママツの手前で機転を利かせてならず者3名から金品を取り返して捕縛に協力、ママツ・トバシ間で街道の大鹿4頭を退治、トバシを出た直後に猛鳶5羽を退治、ナルーの農村でゴーストの集団を除霊、セキガの原野で野盗3名を処分、22名を捕縛、山髙屋の商隊を無傷で護衛完了。素晴らしい戦果です。
 ギルド間の報告書とも照らし合わせますので、明日また来て頂けますか?」
「明日は西都に行きたいのだが、朝イチでもいいかな?」
「構いませんよ。ギルド間で共有する情報と、この報告内容との照会なので、今日中には終わります。」
「ではよろしく頼む。」
「担当の私、チハルが承りました。」チハルと言うのか。真面目な感じだな。

 商都ギルド近くの宿屋で4人部屋を取った。相場はどこも同じで、素泊まり1泊ひとり銀貨2枚、その他に4人部屋チャージ料大銀貨1枚、合計大銀貨1枚と銀貨8枚だ。

 商都は別名食い倒れの街とも言い、食べ物の名物が多い。たこ焼き、串カツ、お好み焼き、粉物のイカ焼き、…。そしてサンファミではないが今夜は呑むぞ!でも、呑み過ぎるとひどい目に遭うので程々にな。俺は学習するのだ。

 宿屋のフロントに聞いて、宿屋近くのお勧めの串カツ屋に行くことにした。各種の肉、魚介、野菜など、お好みのネタを串に刺し、衣をつけて揚げてくれる。テーブルの壺にウスターソースが入っており、揚げたてをかじる前に、壷ソースに浸ける。一口でもかじった後は、壷ソースに浸けるのは厳禁。ま、そりゃそーだわな。大ジョッキで乾杯。ビールが旨いし、串カツも旨い。
 俺たちは串カツを堪能して宿屋に戻った。

 順番に全員が風呂に入ると、任務を終えたことと、久々に痛飲したことで皆のテンションは高まっている。
 もともと肉食のサヤ姉とサジ姉に、ふたりによって肉食化されたホサキも加わって、6つの眼が爛々と輝いている。何を言いたいかは手に取るように分かる。嫁3人も我慢しているのだ。俺は切り出した。
「なぁ、一昨日のご奉仕のお礼をしたいんだが。もちろん、指と舌だけでな。」

 その夜、俺は自分の欲望は抑え、嫁3人を順に、たっぷり時間を掛けて、指と舌を駆使しつつ、心行くまで接待したのだった。嫁3人が大悦びだったのは言うまでもない。出番のなかったマイドラゴンだけがブンむくれていた。

 翌朝、いきり立つマイドラゴンに起こされた。昨日のお預けが、朝の生理現象に大きく影響している。嫁3人を起こさないようにそっと起きてシャワーを浴びた。冷水でマイドラゴンを鎮める。シャワーを終えると、嫁3人は起きていて、俺と入れ替わりで順にシャワーを浴びた。嫁3人は上機嫌だ。

 朝餉を摂って早々に商都ギルドへ向かった。受付のところへ行く。昨日の巨乳娘だ。
「チハルさん、おはよう。」
「セプトの皆さんおはようございます。
 早速ですが、昨日の依頼完了証明書の記載内容はすべて確認が取れました。野盗被害者の救済に尽力したことと、商隊の安全に直接関係ないのに、地域の救援をしたことが高く評価されました。
 アタルさんはBランクへ昇格。シルバーカードを発行するのでブロンズカードを返納して下さい。
 サヤさんとサジさんはCランクへ昇格。ブロンズカードを発行するのでスチールカードを返納して下さい。
 ホサキさんはDランクへ昇格。スチールカードを書き換えますので提出して下さい。
 セプトはCランクパーティに昇格です。」
 俺たちは手続きをすますと、ギルドの外に出た。

 収納腕輪からハーネスを取り出して皆に配る。ハーネスを装着して、弓手にサヤ姉、馬手にサジ姉、後ろにホサキを金具で止めた。
 有効距離ギリギリだが、西都に登録した流邏矢を使ってみる。もしダメならヒラタの原野に登録した流邏矢で距離を刻む。

 嫁3人がしっかり抱き付いたので、流邏矢を射る。一気に西都まで飛べた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

設定を更新しました。R4/3/6

更新は月水金の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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