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射手の統領027 落語と鰻丼
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射手の統領
Zu-Y
№27 落語と鰻丼
マエザの漁村を発って、順調に進んで来ている。
昨日は夜間の戦闘があったので、道中ゆっくり休めと言われ、御者の訓練はなくなった。御者がタヅナで、俺は御者席の後ろの席に、アキナと並んで座っている。
アキナが膝枕をしてくれると言うのだが、さすがにそれは申し訳ないと言って断った。だって定期的にアオゲやアシゲが巡回して来るからな。アキナが残念そうにしてたのが、ちょっぴり嬉しかったのは内緒の話だ。
俺は昨日の野営のときに思い付いたことを、アキナとタヅナに相談した。
まず荷馬車の形状だが、悪天候や寒冷期に備えるのと、荷を守りやすくするために、幌ではなく箱型にしたいこと、それから、馬が雨に濡れない工夫を取り付けたいことだ。
ふたりは、よく気付いたと激賞してくれたのだが、その激賞ポイントがまったく違ったのである意味面白かった。
アキナは箱型を激賞した。特に荷を守るためにと言う発想がアキナのハートを鷲掴みにした。タヅナが激賞したのは、馬が濡れない工夫を取り付けたいと言ったことだ。馬のことを仲間として見ていると、ほとんど涙腺崩壊寸前の感激ぶりだった。
ただ、馬が濡れない工夫については、荷馬車の底部から突き出す轅のようなものを箱型の荷馬車の天部からも出して、ただしそれは轅よりもずっと細い棒で、そこに幌を掛けて、伸ばしたり縮めたりするといった程度の物か、あるいは、馬を完全にすっぽり覆うレインコートのような物しか、アイディアとして浮かんでいないと白状したら、どちらも素晴らしいアイディアだと、タヅナに激賞された。
ちなみに後で分かったのだが、どちらも似たようなものはすでに開発されていた。タヅナとしては、素人の俺が一生懸命考えて絞り出したアイディアが、実用化されているものと同じだったことが嬉しかったらしい。
また、あまり大型化した荷馬車は小回りが利かなくなる欠点があると言うことも教わった。なるほど確かにそうだ。
しばらく考えて、俺はひとつのアイディアを思い付いた。有体に言えばふたつの車両に分けるのだ。馬が引く車両は居住車両、その後に連結して倉庫車両。連結器のところで曲げられるから小回りは聞くし、いざと言うときはトカゲの尻尾切りのように、倉庫車両を切り離す。
さすれば盗賊はそちらに群がって本隊は逃げおおせると言う発想だ。しかしさすがにこれは、積荷を何だと思ってるんだ!とアキナに怒られるだろう。まぁ素人考えだから許してはくれるだろうがな。
俺は敢て全部を言ってみることにした。どうせ俺は素人考えだもんね。ところがアキナは予想に反して俺のアイディアを激賞してくれた。積荷を囮にして逃げる発想が素晴らしいと言うのだ!
商人は命あっての物種で、積荷は大事だが、命はもっと大事。積荷か命かの選択になったら、迷わず命を選択しないと商人としては大成できないと言う。仮に積荷を盗られて全財産を失っても、命があればまたいくらでも稼げると言うのだ。
なんか今日のやり取りで、アキナとタヅナの好感度が物凄く上がった気がする。おーい、ふたりとも、眼ん玉がハートマークになってるぞい。笑
しかし今回の俺のアイディアは、予想以上に俺の将来に影響を及ぼすことになる。と言うのも、アキナが山高屋の小父さんを、タヅナがキノベの統領を、それぞれ説得するにあたり、とんでもない効果を発揮したのだ。
ユノベの次期統領は、とんでもなく切れる。と言うことになったらしい。つまりはアキナとタヅナの好感度だけでなく、そのバックの好感度をも上げることになったのである。まぁ、それはもう少し先の話なんだけどな。
さて、ママツの湖畔町まではもう少しだ。ところが、テリュの河に架かる橋の前で、俺たちと同じような荷馬車が足止めされており、何やら揉めている。俺たちは商隊を止めて様子を窺った。
「ここは天下の往来だらぁ?いつから通行料が必要になったんだら。」
「だから、今日からだって言ってるだら。通行料を払うのが嫌なら河に入りゃいいんだら。つべこべ言わすに大銀貨1枚払うだら。」
商人らしき男をあしらっていたのは、明らかにならず者と言った風体の3人組だ。
「なんか嘘臭ぇな。」とジュピ。
「大銀貨1枚だと急いでたら払う奴もいるよな。」とカゲ。
「プルさんに河の水を凍らせてもらって渡りましょう。」とアキナ。
そんなとき、俺の頭の中で急に閃いた。
「おい、皆、いいこと思い付いたぜ。」
俺は閃いたアイディアを皆に伝えた。
「そいつぁ面白れぇ。やろうぜ。」俺のアイディアでキーパーソンになるマズが真っ先にノリノリで賛成した。満場一致でやってみようと言うことになった。
俺とマズで橋の前まで行って、
「おい、この辺で匂うな。」
「この下か?」
「いや、この河原の海側じゃねぇか?」
「おい、お前らなんだら?」通行料を請求していたならず者が絡んで来た。
「俺たちぁ湯士だ。」
「湯士?なんだら?そりゃ。」
「温泉を掘り当てるんだよ。」
「何、寝とぼけたことを言ってんだら?」
「ふん、じゃぁ見てろよ。」
俺とマズは河原に降りて海側に行き、河原を掘って河の水を引き入れた。そこへマズが火炎の術で水を沸かす。これで偽温泉の完成だ。
ふたりで服を脱いで湯に浸かったのを見て、ならず者たちがやって来た。
「おい、ホントに掘り当てただら。」
俺は湯を舐めるふりをして、ならず者たちに聞こえるように言った。
「おい、この湯は上物だぜ。海の精と河の精がいい塩梅で絡んでやがる。」
「おー、そうだな。確かにこれはコネハの湯ぐらいの格が付きそうだ。」
マズもノリノリだ。
「河原を掘って自分で作った湯船に浸かるってのもいい趣向じゃねぇか。お、さっきの兄さんたちかい。よかったら入んなよ。」
俺とマズはさっと上がった。
「ええだらか?」案外単純なならず者たちは服を脱いで入って来た。
「確かにこりゃいい湯だら。」
「しかしお前さんたち、大したもんだら。」
「まあな、俺たちゃ、この業界じゃぁそれなりに名が売れてるからな。」
「ここは地下に温脈があってよ、ここで河が運んで来た成分と海の成分が出会うからよ、この河原をちょこっと掘るだけだぜ。造作もねえよ。」
俺の大ウソにマズが相槌を打つ。
「そうだ、兄さんたち、ここで会ったのも何かの縁だ。最初の客だしよ、兄さんたちにこの湯の権利を譲ろうか?」
「え?ええだらか?」
「おうよ。俺たちゃ湯を当てるのがおもしれぇだけだからな。そうだな、今日の橋の通行料でいいぜ。」
「え?そんなんでええだらか?」
「次の場所への路銀の足しになりゃあ、それで十分よ。それとまた俺たちが巡って来たときはタダで入れてくれよ。」
「「「お安い御用だら。」」」
「温度が下がって来たらもう少し掘るんだぜ。地下の温脈を拾えるからな。ただし、掘り過ぎちゃぁいけねぇよ。茹で上がっちまうからな。」
「ここは景色もいいし、温泉宿を建てたら流行るだろうな。上手くやんなよ。温泉長者も夢じゃねぇかもしれねえぜ。じゃあな。」
俺たちはならず者から今日の通行料、大銀貨27枚を受け取って、皆と合流した。
そのままママツの湖畔町に着いた。商隊は山髙屋ママツ支店に入り、俺とマズは衛兵詰所に行って事情を話し、ならず者が詐取した大銀貨27枚を渡した。詰所の衛兵は大笑いだ。
ならず者3人は、まだ河原を掘ってるかもしれないと言うと、笑っていた衛兵のうち3人が飛び出して行った。
ちなみにならず者3人はそのまま御用となったそうだ。まったく落語のような話である。
ならず者たちをまんまと嵌めた痛快さもあり、マズが今夜はぜひ一緒に夕餉に行こうと言うので、セプトとサンファミで、ママツ名物の鰻丼を食いに行くことにした。すると、それならとタヅナ隊も加わり、商隊長と副長も交えて、結局全員でママツの鰻丼を食いに行くことになった。
マナ湖の湖畔町のママツは、マナ湖が鰻の有名な産地なので、和の国でも1・2を争うの鰻の町である。ママツ支店長がイチ押しと言う鰻屋に来て、皆で鰻丼の特上を注文した。
話題は一色。ならず者退治である。特にノリノリのマズの演技が素晴らしかったと言えば、いやいやアタルの演技の方が堂に入ってたと言われて、ふたりで褒め合いである。
結局、あのならず者は信じやすい性質で、コロッと騙されたから、根はそんなに悪い奴らではないだろうとか、これで懲りて真っ当になればいいとか、自分も湯士役を演りたかったとか、話題は持ち切りだった。当然嫁3人に加え、アキナとタヅナの俺に対する印象は鰻登りである。
この店は、鰻を割くところから始めて、蒸しも入るので、注文してから出て来るまで時間が掛かるが、作り置きじゃないから旨いらしい。タレも創業からの継ぎ足しだとか、炭も備長炭だとか、いろいろなところにこだわってるそうだ。
俺は寿司も好きだが鰻にも目がない。マナ湖の鰻はどうしても食ってみたかったのだ!
結構待たされたが、ついに出来上がって来た。口の中でほろりとほぐれる身と、絶妙に絡むタレ、所々の焦げた皮が放つ香ばしい風味もいい。支店長、いい店を勧めてくれた。グッジョブ!皆、無言で食ってる。笑
肝吸いもいい。いいダシが出てる。そう言えば、昔行った鰻屋で、特上を頼んだのに肝吸いではなく単なる吸い物を出して来た店があった。そこそこ有名店と聞いて行ったのだが、あんな店は落第である。
この店は実にいい。これこそ正統派だ。さすが鰻の本場のママツだ。
俺は鰻を堪能し、宿屋に戻ってセプト部屋で寛ぎつつ、風呂待ちの間、七神龍攻略のための荷馬車について、いろいろ空想を巡らせていた。
当然その夜は、ぐっすりと眠れたことは言うまでもない。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/2/20
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
Zu-Y
№27 落語と鰻丼
マエザの漁村を発って、順調に進んで来ている。
昨日は夜間の戦闘があったので、道中ゆっくり休めと言われ、御者の訓練はなくなった。御者がタヅナで、俺は御者席の後ろの席に、アキナと並んで座っている。
アキナが膝枕をしてくれると言うのだが、さすがにそれは申し訳ないと言って断った。だって定期的にアオゲやアシゲが巡回して来るからな。アキナが残念そうにしてたのが、ちょっぴり嬉しかったのは内緒の話だ。
俺は昨日の野営のときに思い付いたことを、アキナとタヅナに相談した。
まず荷馬車の形状だが、悪天候や寒冷期に備えるのと、荷を守りやすくするために、幌ではなく箱型にしたいこと、それから、馬が雨に濡れない工夫を取り付けたいことだ。
ふたりは、よく気付いたと激賞してくれたのだが、その激賞ポイントがまったく違ったのである意味面白かった。
アキナは箱型を激賞した。特に荷を守るためにと言う発想がアキナのハートを鷲掴みにした。タヅナが激賞したのは、馬が濡れない工夫を取り付けたいと言ったことだ。馬のことを仲間として見ていると、ほとんど涙腺崩壊寸前の感激ぶりだった。
ただ、馬が濡れない工夫については、荷馬車の底部から突き出す轅のようなものを箱型の荷馬車の天部からも出して、ただしそれは轅よりもずっと細い棒で、そこに幌を掛けて、伸ばしたり縮めたりするといった程度の物か、あるいは、馬を完全にすっぽり覆うレインコートのような物しか、アイディアとして浮かんでいないと白状したら、どちらも素晴らしいアイディアだと、タヅナに激賞された。
ちなみに後で分かったのだが、どちらも似たようなものはすでに開発されていた。タヅナとしては、素人の俺が一生懸命考えて絞り出したアイディアが、実用化されているものと同じだったことが嬉しかったらしい。
また、あまり大型化した荷馬車は小回りが利かなくなる欠点があると言うことも教わった。なるほど確かにそうだ。
しばらく考えて、俺はひとつのアイディアを思い付いた。有体に言えばふたつの車両に分けるのだ。馬が引く車両は居住車両、その後に連結して倉庫車両。連結器のところで曲げられるから小回りは聞くし、いざと言うときはトカゲの尻尾切りのように、倉庫車両を切り離す。
さすれば盗賊はそちらに群がって本隊は逃げおおせると言う発想だ。しかしさすがにこれは、積荷を何だと思ってるんだ!とアキナに怒られるだろう。まぁ素人考えだから許してはくれるだろうがな。
俺は敢て全部を言ってみることにした。どうせ俺は素人考えだもんね。ところがアキナは予想に反して俺のアイディアを激賞してくれた。積荷を囮にして逃げる発想が素晴らしいと言うのだ!
商人は命あっての物種で、積荷は大事だが、命はもっと大事。積荷か命かの選択になったら、迷わず命を選択しないと商人としては大成できないと言う。仮に積荷を盗られて全財産を失っても、命があればまたいくらでも稼げると言うのだ。
なんか今日のやり取りで、アキナとタヅナの好感度が物凄く上がった気がする。おーい、ふたりとも、眼ん玉がハートマークになってるぞい。笑
しかし今回の俺のアイディアは、予想以上に俺の将来に影響を及ぼすことになる。と言うのも、アキナが山高屋の小父さんを、タヅナがキノベの統領を、それぞれ説得するにあたり、とんでもない効果を発揮したのだ。
ユノベの次期統領は、とんでもなく切れる。と言うことになったらしい。つまりはアキナとタヅナの好感度だけでなく、そのバックの好感度をも上げることになったのである。まぁ、それはもう少し先の話なんだけどな。
さて、ママツの湖畔町まではもう少しだ。ところが、テリュの河に架かる橋の前で、俺たちと同じような荷馬車が足止めされており、何やら揉めている。俺たちは商隊を止めて様子を窺った。
「ここは天下の往来だらぁ?いつから通行料が必要になったんだら。」
「だから、今日からだって言ってるだら。通行料を払うのが嫌なら河に入りゃいいんだら。つべこべ言わすに大銀貨1枚払うだら。」
商人らしき男をあしらっていたのは、明らかにならず者と言った風体の3人組だ。
「なんか嘘臭ぇな。」とジュピ。
「大銀貨1枚だと急いでたら払う奴もいるよな。」とカゲ。
「プルさんに河の水を凍らせてもらって渡りましょう。」とアキナ。
そんなとき、俺の頭の中で急に閃いた。
「おい、皆、いいこと思い付いたぜ。」
俺は閃いたアイディアを皆に伝えた。
「そいつぁ面白れぇ。やろうぜ。」俺のアイディアでキーパーソンになるマズが真っ先にノリノリで賛成した。満場一致でやってみようと言うことになった。
俺とマズで橋の前まで行って、
「おい、この辺で匂うな。」
「この下か?」
「いや、この河原の海側じゃねぇか?」
「おい、お前らなんだら?」通行料を請求していたならず者が絡んで来た。
「俺たちぁ湯士だ。」
「湯士?なんだら?そりゃ。」
「温泉を掘り当てるんだよ。」
「何、寝とぼけたことを言ってんだら?」
「ふん、じゃぁ見てろよ。」
俺とマズは河原に降りて海側に行き、河原を掘って河の水を引き入れた。そこへマズが火炎の術で水を沸かす。これで偽温泉の完成だ。
ふたりで服を脱いで湯に浸かったのを見て、ならず者たちがやって来た。
「おい、ホントに掘り当てただら。」
俺は湯を舐めるふりをして、ならず者たちに聞こえるように言った。
「おい、この湯は上物だぜ。海の精と河の精がいい塩梅で絡んでやがる。」
「おー、そうだな。確かにこれはコネハの湯ぐらいの格が付きそうだ。」
マズもノリノリだ。
「河原を掘って自分で作った湯船に浸かるってのもいい趣向じゃねぇか。お、さっきの兄さんたちかい。よかったら入んなよ。」
俺とマズはさっと上がった。
「ええだらか?」案外単純なならず者たちは服を脱いで入って来た。
「確かにこりゃいい湯だら。」
「しかしお前さんたち、大したもんだら。」
「まあな、俺たちゃ、この業界じゃぁそれなりに名が売れてるからな。」
「ここは地下に温脈があってよ、ここで河が運んで来た成分と海の成分が出会うからよ、この河原をちょこっと掘るだけだぜ。造作もねえよ。」
俺の大ウソにマズが相槌を打つ。
「そうだ、兄さんたち、ここで会ったのも何かの縁だ。最初の客だしよ、兄さんたちにこの湯の権利を譲ろうか?」
「え?ええだらか?」
「おうよ。俺たちゃ湯を当てるのがおもしれぇだけだからな。そうだな、今日の橋の通行料でいいぜ。」
「え?そんなんでええだらか?」
「次の場所への路銀の足しになりゃあ、それで十分よ。それとまた俺たちが巡って来たときはタダで入れてくれよ。」
「「「お安い御用だら。」」」
「温度が下がって来たらもう少し掘るんだぜ。地下の温脈を拾えるからな。ただし、掘り過ぎちゃぁいけねぇよ。茹で上がっちまうからな。」
「ここは景色もいいし、温泉宿を建てたら流行るだろうな。上手くやんなよ。温泉長者も夢じゃねぇかもしれねえぜ。じゃあな。」
俺たちはならず者から今日の通行料、大銀貨27枚を受け取って、皆と合流した。
そのままママツの湖畔町に着いた。商隊は山髙屋ママツ支店に入り、俺とマズは衛兵詰所に行って事情を話し、ならず者が詐取した大銀貨27枚を渡した。詰所の衛兵は大笑いだ。
ならず者3人は、まだ河原を掘ってるかもしれないと言うと、笑っていた衛兵のうち3人が飛び出して行った。
ちなみにならず者3人はそのまま御用となったそうだ。まったく落語のような話である。
ならず者たちをまんまと嵌めた痛快さもあり、マズが今夜はぜひ一緒に夕餉に行こうと言うので、セプトとサンファミで、ママツ名物の鰻丼を食いに行くことにした。すると、それならとタヅナ隊も加わり、商隊長と副長も交えて、結局全員でママツの鰻丼を食いに行くことになった。
マナ湖の湖畔町のママツは、マナ湖が鰻の有名な産地なので、和の国でも1・2を争うの鰻の町である。ママツ支店長がイチ押しと言う鰻屋に来て、皆で鰻丼の特上を注文した。
話題は一色。ならず者退治である。特にノリノリのマズの演技が素晴らしかったと言えば、いやいやアタルの演技の方が堂に入ってたと言われて、ふたりで褒め合いである。
結局、あのならず者は信じやすい性質で、コロッと騙されたから、根はそんなに悪い奴らではないだろうとか、これで懲りて真っ当になればいいとか、自分も湯士役を演りたかったとか、話題は持ち切りだった。当然嫁3人に加え、アキナとタヅナの俺に対する印象は鰻登りである。
この店は、鰻を割くところから始めて、蒸しも入るので、注文してから出て来るまで時間が掛かるが、作り置きじゃないから旨いらしい。タレも創業からの継ぎ足しだとか、炭も備長炭だとか、いろいろなところにこだわってるそうだ。
俺は寿司も好きだが鰻にも目がない。マナ湖の鰻はどうしても食ってみたかったのだ!
結構待たされたが、ついに出来上がって来た。口の中でほろりとほぐれる身と、絶妙に絡むタレ、所々の焦げた皮が放つ香ばしい風味もいい。支店長、いい店を勧めてくれた。グッジョブ!皆、無言で食ってる。笑
肝吸いもいい。いいダシが出てる。そう言えば、昔行った鰻屋で、特上を頼んだのに肝吸いではなく単なる吸い物を出して来た店があった。そこそこ有名店と聞いて行ったのだが、あんな店は落第である。
この店は実にいい。これこそ正統派だ。さすが鰻の本場のママツだ。
俺は鰻を堪能し、宿屋に戻ってセプト部屋で寛ぎつつ、風呂待ちの間、七神龍攻略のための荷馬車について、いろいろ空想を巡らせていた。
当然その夜は、ぐっすりと眠れたことは言うまでもない。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
設定を更新しました。R4/2/20
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739
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