射手の統領

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射手の統領021 ハーレム…もとい、パーティ拡大構想

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射手の統領
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№21 ハーレム…もとい、パーティ拡大構想

 再開した道中の中央車両では、アキナとタヅナに根掘り葉掘り聞かれた。もう隠しようがないので、すべて正直に答えた。

 俺がユノベの次期統領であること。
 雷撃矢を放てるようになった経緯とライを眷属としてること。
 流石にこれは俄かには信じられないようだったが、例によって気を利かせたライが念話を送って来て、ふたりの度肝を抜いた。その流れでライ鏑を見せたら、ライは得意げにライ鏑の中で黄金龍の姿になって、再びふたりの度肝を抜いた。

 4人でパーティを組んでいる経緯で、サヤ姉、サジ姉、ホサキが3人とも俺の婚約者であることを話したら、ふたりが強く食い付いて来た。
 タヅナが、キノベとは同盟しないのかと言うので、キノベにその気があるならぜひ同盟をしたいと答えたら、赤くなってモジモジしだした。
 アキナが山高屋は商家だから同盟の対象外だろうと嘆くので、提携したら物流の安全確保に貢献できると言ったら、しばらく考えた後、赤くなってモジモジしだした。

 俺たちの旅が、和の国各地の七神龍を眷属にする旅であること。
 伯母御たちは早く孫を抱きたいと言う身勝手な理由で、俺たちの旅に横槍を入れて来たので、今回は少々懲らしめたこと。
なども語った。

 せっかくなので、昨晩ふたりを山髙屋まで送るときに、ふたりと話してて思い付いた、七神龍を眷属にする旅に、荷馬車で交易する要素を組み込みたいと言う構想を話したら、ぜひ協力したいと言い出した。
 ふたりとも、親を説得してセプトに入ると強く言うので、今の責任あるポジションはどうするのかと聞いたら、自分たちの代わりはいくらでもいると言う返事が返って来た。でも俺たちの旅に加わるのは自分たちしかいないと言う。
 この理屈は正直理解に苦しむ。責任あるポジションに就いている優秀なふたりの代わりはそうはいないと思うし、セプトに欲しいのは騎士と商人なので、アキナとタヅナならベストではあるが、このふたりでなくてはならない訳ではない。
 ただ、ふたりの勢いに、俺は余計なことを言うのをやめた。ひと言、ふたりが加わるのは大いに助かるし、とても嬉しいと言ったら、モジモジ×2となった。
 あ、なんかこの展開、デジャヴーな気がする。

 初日の行程を予定通り終え、今夜の宿泊地、チガサの港町に着いた。荷馬車と積荷は、この町の山高屋チガサ支店に厳重に保管し、チガサ支店近くの宿屋に向かった。

 今夜の宿屋は、まさかのまさか、俺とホサキが結ばれた宿屋だった。今夜、俺たちに割り振られた部屋は、案の定、4人部屋だがな。あの日のデラックスダブルは…残念ながら埋まってたよ。
 もし空いてたら差額を支払って確保したよ。そして、サヤ姉とサジ姉に訳を話して頼み込んで、ホサキとふたりで泊まったさ。そうなったら我慢できなかったよね。ホサキもそうだと思うよ。
 だからよかったんだよ、これで。4人部屋でよかったのさ。ぐすっ。

 他は、アキナとタヅナ、ハンジョーとジュピの組み合わせでそれぞれツイン。タヅナ隊隊員、ジュピを除くサンファミでそれぞれ4人部屋だ。
 他は男女分けてるんだが、俺たちは婚約者と言うことで男女相部屋だ。今後も原則はこの部屋割りで行くそうだ。生殺しの旅は延々と続くのか。嬉しいような、辛いような…。

 夕餉は、皆で摂ることになった。だから、宿屋の食堂ね。
 はい、分かってます。もう隠しようがないです。皆さんに話します。正直に話します。聞かれるままに話します。俺はあきらめて、聞かれたことについて、すべてを隠さず答える決心をした。要するに腹を括ったのだ。

 聞かれたのは、雷撃矢に関してのことがほとんどだった。
 特にサンファミの陰士と陽士の3人の食い付きは凄まじい。支援特化の陰士のジュピでさえかなりの食い付きなのだから、攻撃特化の陽士のプルとマズはとんでもない食い付きだった。

「つまり属性攻撃は、もはやわれわれ陽士の専売特許ではなくなると言うことだな」腕を組んで唸るプル。
「そうでもないぞ。まず俺しか使えん。すべての射手が使えるようになったら話は別だが、今のところ、その手立てはまったく不明だ。
 それにだ、仮に射手の多くが、属性攻撃をできるようになったとしても、陽士の価値が下がる訳ではない。」
「しかしなぁ、互いに遠距離攻撃でありながら、陽士は属性攻撃、射手は物理攻撃と、それぞれ住み分けて来たのだ。縄張りを侵される陽士としては複雑だな。」とマズ。
「今までだって陽士の属性を、射手や剣士にまとわせる連携はあったぞ。」
「確かにあったが、そこには陽士の存在が不可欠なのだ。
 今のところアタルだけだから脅威とは言えんが、多くの射手が属性攻撃を持つとなると、陽士にとっては十分に脅威となり得る。」とジュピ。
「俺は他への属性付加はできんから陽士には及ばん。支援術も使えんから陰士には足元にも及ばん。結局、術についての陰士や陽士の優位性は変わらんと思うぞ。
 それに、そもそもユノベとオミョシは敵対関係にはないからな。」
「まぁ、確かにそうだな。」ジュピ、プル、マズが渋々妥協した。

 夕餉を終え、各自が部屋に戻って寛ぐ。今夜は、サジ姉、ホサキ、サヤ姉の順に入る。ローテーションするのだそうだ。いつも俺は最後だ。
 言っとくが虐げられている訳ではない。俺が希望したのだ。表向きはレディファーストだ。3人の俺に対する印象はすこぶるよくなる。しかし真の目的は…。くくく。

 3人目のサヤ姉が風呂に入っているとき、アキナとタヅナが俺たちの部屋を訪れた。ふたりとも湯上りで、長い髪をアップにしている。うなじが何ともそそる。
 ふたりの来訪の理由は、俺が道中に語って聞かせた、馬車交易構想について、セプトの女性陣も交えて話したいからだと言う。
 サジ姉とホサキは???だ。そりゃそうだ。昨夜思い付いて、構想を練ってる段階だからな。中央車両で一緒だったから、結果的にアキナとタヅナに先に話してしまっただけだ。

「ちょっと待って!うちの3人にはまだ話してないんだよ。」
「えぇ?そうなのぉ?」
「思い付いたの自体が、昨夜、アキナとタヅナを山髙屋へ送って行くときだぜ。」
 そこへサヤ姉が風呂から出て来た。
「アタル、お風呂空いたわよ。あら?アキナとタヅナ、いらっしゃい。何かあった?」
「じゃあ、俺は風呂に入るから、アキナとタヅナは、うちの3人に馬車交易構想を説明しといて。」
「分かりました。」

 俺は風呂に入った。
 お湯に3人のエキスがしみ込んでいると思うだけでマイサンがマイドラゴンに変身してしまう。決して変態ではないぞ。お預けと生殺しによって混乱しているだけだ。男の性なのだ。これこそレディファーストのご褒美なのだ。むふふ。

 と言う冗談は抜きにして、アキナとタヅナは、サヤ姉、サジ姉、ホサキに上手く説明してくれてるかな?
 俺から3人に切り出すよりも、アキナとタヅナから話してもらった方が、3人は絶対に素直に聞くだろう。
 素直なホサキはまだいいとしても、サヤ姉とサジ姉は要注意だ。
 俺から切り出そうものなら、
「またハーレムを増やす気?」
と、いい顔はされないだろう。ちなみにハーレムじゃなくてパーティを拡大するんだがな。

 俺としてはこの構想には自信を持っている。
 今回はたまたま商隊護衛があって馬車移動だが、本来なら徒歩だ。荷物も運ばねばならんし、疲労も溜まる。今のところ、大した荷物じゃないから収納の腕輪に収まってるが、納まりきらなくなった荷物は、馬車があれば問題解決だ。
 数頭立ての大型な馬車にして、町々の特産物を仕入れ、他の町で売る。アキナとタヅナは、これまで東都周辺の町で馬車商売を繰り返して、儲けを山分けにして来たと言う。ふたりはその過程で親友になった。
 和の国各地にまたがって商売すれば、なかなか面白いことになろう。そのためには、馬を自在に操れる騎士と、仕入れと販売に長けた商人が必要だ。その騎士がタヅナ、商人がアキナなら何も言うことはない。

 もし、ふたりを娶ることになれば、キノベとの同盟と、山髙屋との提携が成る。キノベが加われば、ユノベを中心とした武家同盟の影響力はさらに増すし、オミョシも同盟に加わざるを得なくなるだろう。山髙屋との提携がなれば、山髙屋の支店網の協力を得られるだろうし、いざと言うときには金銭的なバックアップも得やすい。

 しかも、ふたりともスレンダーな超美人で双丘は小振りだから、俺の好みにどストライクだ。ストレートなロングヘアーなのもいい。政略結婚だとしても、好みのタイプなら、情は深まって行くだろう。

 そろそろ風呂から上がるかな。

「アタル…ふたりが…来てる…のに…長風呂…ダメ…。」
「さては私たちのエキスを堪能してたわね。」サヤ姉が弄って来た。
「ああ、湯には3人の甘い味が浸み込んでたぞ。」しれっと返す。
 アキナと、タヅナが赤くなって聞こえないふりをする。笑
「な、な、なんと言うことを言うのだ。」ホサキが真に受けて真っ赤になる。ほんとに素直だなぁ。
「サヤ姉が弄って来たから切り返しただけだよ。相変わらずホサキは素直だな。かわいいぞ。」
「冗談だったんだぁ。私たちにはぁ、刺激が強過ぎよぉ。」タヅナも赤くなってるぞ。アキナはしれっとしてるから、冗談だと気付いてたみたいだな。流石だ。あ、でも耳が真っ赤じゃねーか。

「サヤ姉、アキナとタヅナがいるんだから程々にな。」
「ちょっと、私のせいだって言うの?」
「そりゃそうだろ。な、サジ姉。」
「アタル…成長…してる…。今回は…サヤの…負け…。」

「で、どこまで話は進んだの?」
「ひと通りお話しました。」
「なかなかのアイディアね。私はいいと思うわ。」
「アタル…なんで…黙って…たの…?」
「話す機会がなかったんだよ。
 昨日の晩に、アキナとタヅナを山髙屋まで送って行ったときに、ふたりの話をいろいろ聞いてな。それで漠然と思い付いた。昨夜の段階では、構想はここまでまとまってなかったから話すに話せなかった。
 今日の道中でふたりと話しながらだんだんとまとまって来て、具体的な形になったって感じだな。」

「ふたりは、その、あれだ。アタルの、んー、なんと言うか。どうするのだ?」
「ホサキ、それじゃあ、何が言いたいのかさっぱり分かんねーだろ?」俺は思わず噴き出した。
「いえ、私は分かります。私はそのつもりです。皆さん、よろしいでしょうか?」
「私もぉ、皆さんのぉ、お仲間にぃ、入れて下さいぃ。」
 お?ふたりとも鋭いな。ホサキのあれが分かるのか。
「俺は構わんが、ふたりはそれぞれのお家の許可を取れるのか?」
「必ずパパを説得します。」
「私もぉ、父上を説得するわぁ。ダメなら駆け落ちぃ。」
「タヅナそれはダメだ。アキナも聞いてくれ。
 ふたりには申し訳ないが、ふたりを受け入れるのは、キノベとの同盟、山髙屋との提携が目的の政略だ。もちろんふたりのことを俺は気に入ってるが、それは二の次だ。
 ふたりとの婚儀で、キノベや山髙屋との関係が悪化するなら、本末転倒だ。そうであるならば、受け入れることはできない。」
「アタル、あんた、相変わらず、こう言うところはドライよね。ね?サジ。」
 こくり。
「だからふたりには、必ず御父上を説得して欲しい。もし難航したら、俺も説得に出向く。」
「うむ。それなら大丈夫だ。アタルはわざわざコスカまでやって来て、私の父上を説得してくれたからな。」
「タテベどのは最初から婚儀に乗り気だっただろーが。」皆が笑う。

「ところでアタル、今夜は私とタヅナの部屋で寝て下さいませんか?」
「え?いくらなんでもそれはまずいでしょ。いや待てよ、既成事実を作るのはありか?いやいやいや、やっぱまずいよな…。」
 悩む俺。愛する娘を犯られちゃったと知ったら、父親は間違いなく心証を悪くする。心証を悪くしては、関係を築くどころか壊してしまうな。

「違うのです。アタル、そうではないのです。私たち5人で今後のことを話したいので、部屋を代わって下さいと言う意味です。」
「あ、そうなの?なんだよー、期待しちゃったじゃねーか。誤解しちゃったじゃねーか。昼も馬車で気を付けろって言ったよなー。誤解を招くような言い方をするなって言ったよなー。」凹む俺。
「ごめーん。アタルぅ、お願いねぇ。」
「アタル…今は…我慢…。」
「そうよ、我慢は男を成長させるのよ。」

 俺はセプト部屋改め女子部屋を追い出され、ツインにひとりさみしく泊まった。でもそのおかげで、マイサンをマイドラゴンに変身させ、ホワイトブレスを吐き出させることができた。すっきりした俺はぐっすり眠れたのだった。

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設定を更新しました。R4/2/6

更新は月水金の週3日ペースを予定しています。

2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739

カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。
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