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射手の統領006 凱旋と決意
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射手の統領
Zu-Y
№6 凱旋と決意
流邏矢でテンバのユノベ館に帰還し、表座敷で統領代理の叔父貴3人に、
黄金龍を眷属にできたこと。
しかしそれは到底俺ひとりでは成し遂げられなかったこと。
サヤ姉とサジ姉の力が大きく、3人で挑んだからこそ得られた成果であること。
を報告した。
俺は、ここまで介添のふたりに頼ってしまった以上、ひとりで成し遂げることが大前提の成人の試練としては、失敗ではないとしても成功とも言い切れない。よって、別の成人の試練を自分に課したいと願った。
サヤ姉もサジ姉も、そんなことはない。一番活躍したのはアタルだ。と言ってくれたが、俺自身が納得できないのだから仕方ない。
俺は将来、統領としてユノベ一党を率いるのだから、成人の試練にはこだわりたい。最初のうちは、叔父貴たちは難色を示していた。
どうやら、俺が成人の試練を終えたら、そのまま俺を新統領に据え、叔父貴たちは、俺が統領として一人前になるまで、俺の後見をすると言う段取りだったらしい。
まぁ、この流れは薄々察してたがな。
さらに、俺の新統領就任に合わせて、一気に俺の嫁取り話を進めることになってたそうだ。もちろん、いきなりの嫁取りではなく、婚約と言うことだったそうだが。実は、この話には伯母御たちも一枚噛んでいた。
今回、サヤ姉とサジ姉が、俺の成人の試練に介添として加わったのも、まさにその布石だった。
さすがにこの話には、サヤ姉もサジ姉も驚いていたが、それでもよくよく考えると心当たりがあると言う。
俺の成人の試練の介添をしっかりこなして俺に気に入られるようにとか、そしたら将来はユノベの統領夫人も夢じゃないとか、伯母御たちにやたらとハッパを掛けられたそうだ。
と言うことは、トノベもヤクシもその方向でまとまっていると見てまず間違いない。
わがユノベ一党は弓の技による遠距離攻撃に特化している。戦はまず弓矢部隊の矢合わせから始まる。ここで戦の大勢が決することもある。
矢戦から接近戦になると重装の盾槍部隊での競り合いとなり、その後、騎馬部隊の突撃などもあり、最終段階で乱戦に移行すると、軽装で身軽な刀剣部隊が暴れまわる。剣の技を追求しているトノベ一党は、刀剣での戦闘に特化している。
医薬術のヤクシ一党は、直接の戦闘に関わらずとも、戦にはなくてはならぬ存在だ。どんなに強い戦闘力があっても、医薬術を持たない集団はまず戦に勝てない。
ユノベ、トノベ、ヤクシ。この3家が婚姻で結束を固めることは戦略的には大きな意味がある。
それで伯母御ふたりがトノベとヤクシに嫁いだ訳だが、俺たちの代でも婚姻でさらに結束を固めようと言うのだろう。まさに政略結婚だな。
とはいえ、サヤ姉とサジ姉ならガキの頃からの仲だし、俺としては願ったり叶ったりだ。しかしふたりとも娶っていいのかね。
まぁ、いずれか一方とだけだと、その後に他方と禍根が残るしな。はっきり言って俺としてはとてもおいしい♪
参考までにユノベ、トノベ、ヤクシ以外の他の武家も紹介する。
盾槍部隊による防御の盾部。
騎馬部隊による突撃など機動の騎部。
遠距離属性攻撃を行う陽士の陰陽師東家=本家。
支援術を使う陰士の陰陽師西家=分家。
斥候、撹乱など水面下の働きをする忍の者と影の者を、契約により各家に派遣する忍部家と影部家。
さて、叔父貴たちだが、最終的には俺の言い分を渋々ながらも認めてくれた。
そう言えば、最初に叔父貴たちが提案して来た成人の試練の内容は、フジの霊峰の麓の樹海で獣を10体狩って来いと言うものだった。
この試練なら、クリアするのにさして時間は掛からないと踏んだのだろう。しかし俺は、別の試練にしたいと思う。
ぶっちゃけ、叔父貴たちが提案した試練は内容が薄い。これを試練とするくらいなら、サヤ姉やサジ姉と3人で達成したとは言え、黄金龍の眷属化の方が、よっぽど難易度が高い。
俺としては、何か他の試練を考えるつもりだ。
取り敢えず、新たな成人の試練をクリアするまで、今の通り叔父貴たちによる統領代理を続けてもらうことにした。
本音を言うと、統領になるには俺はまだまだ未熟だと言う思いがある。ユノベ一党を率いるには、俺にはまだ器量が足りない。統領の器量が足りなければ、ユノベ一党はまともに機能しないはずだ。
話が一段落して、俺たち3人は表座敷を辞した。すると、サヤ姉とサジ姉が、謝って来た。
「アタル、ごめんなさい。私たち、出しゃばり過ぎたわ。」
「介添の…分を…超えてた…。ごめん…なさい…。」
「何言ってるの?ふたりが活躍してくれなきゃ、ライを眷属にできてないって。ほんと気にしないでくれよ。」
「でも、ユノベの統領になるのが先になっちゃったわ。ね?サジ。」
こくり。
「実はさ、俺はまだ統領に就くつもりはないんだよ。将来的には継ぐけどさ、今の俺にはまだその器量が備わってないからな。」
「それは…そのうち…付いて…来る…。サヤ…?」
「そうね。統領になってから、いろいろ経験すればいいんじゃないかしら。そのために叔父様たちが後見して下さるんだし。」
「確かにそれも一理ある。でも、統領の嫡男だからってだけで、成人したてで統領に就いていいのかなってのもあるんだよね。」
「修行…って…こと…?」
「それもいいかしらね。アタルが納得行くようにすれば?」
「ふたりには、待たせて申し訳ないけどな。」
「え?待たせるって?」
「嫁取りだよ。」
「ふたり…って…?」
「もちろんサヤ姉とサジ姉のふたりだよ。さっき、表座敷でそんな話だっただろ?」
「私はアタルの嫁になるとは言ってないからね!」
「そんなの…急に…言われ…ても…。」
「サヤ姉、俺たちの将来の話にツンデレはやめろ。サジ姉、伯母御どのからすでにほのめかされていたんだよな?」
「ごめんなさい。」「ごめん…なさい…。」
「俺たちの婚姻は政治的な話だ。ユノベとトノベとヤクシが結束を固めることはこの国の平和の維持に大きく貢献する。そのためにふたりの伯母御は、それぞれトノベとヤクシに嫁いだのだからな。
俺たちの代でも婚姻を重ね、さらに結束を固めると言うのは頷けるし、何より他の勢力へ3家の結束を喧伝することになる。」
「確かにそうね。」
「8年前に親父が逝ったときには、この話はある程度出来上がっていたと思うぞ。以前からもふたりはたまにユノベに来ていたが、親父が逝ってからは、ふたりがユノベに来る頻度が露骨に上がったからな。」
「でも…この…3年…来て…なかった…。」
「その間、俺はふたりに会いたくてしょうがなかった。そして成人の試練の介添で3年ぶりに来てくれた。俺の気持ちは当然高まる。そう言うことだろうよ。ふたりはどうだ?」
「そうね。」
こくり。
「ふたりは2年前に成人したけど、この2年間、縁談がなかったよな。おかしいとは思わないか?おそらくトノベもヤクシもそのつもりですべて断ってたに違いない。」
「それは助かったわ。断る手間が省けたんだもの。ね?サジ。」
こくり。
「政略結婚だが、それがサヤ姉とサジ姉なら俺はまったく異存はない。それと、ふたりとも娶るぞ。どちらかに絞ると、他方に禍根が残るからな。」
「アタル!あんた堂々とハーレム宣言な訳?少しは申し訳なさそうにしなさいよ。ね?サジ。」
こくり。
「それとふたりとも正妻な。」
「サヤ…、アタルは…聞いて…ない…。」
「そうね。」ふたりが溜息をついた。
「婚儀は先の話だが、婚約は新たな成人の試練の後、すぐにでも発表することになるだろうな。」
ハーレムのため、俺はスルーに徹したのだった。笑
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
2作品同時発表です。
「精霊の加護」も、合わせてよろしくお願いします。https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739
Zu-Y
№6 凱旋と決意
流邏矢でテンバのユノベ館に帰還し、表座敷で統領代理の叔父貴3人に、
黄金龍を眷属にできたこと。
しかしそれは到底俺ひとりでは成し遂げられなかったこと。
サヤ姉とサジ姉の力が大きく、3人で挑んだからこそ得られた成果であること。
を報告した。
俺は、ここまで介添のふたりに頼ってしまった以上、ひとりで成し遂げることが大前提の成人の試練としては、失敗ではないとしても成功とも言い切れない。よって、別の成人の試練を自分に課したいと願った。
サヤ姉もサジ姉も、そんなことはない。一番活躍したのはアタルだ。と言ってくれたが、俺自身が納得できないのだから仕方ない。
俺は将来、統領としてユノベ一党を率いるのだから、成人の試練にはこだわりたい。最初のうちは、叔父貴たちは難色を示していた。
どうやら、俺が成人の試練を終えたら、そのまま俺を新統領に据え、叔父貴たちは、俺が統領として一人前になるまで、俺の後見をすると言う段取りだったらしい。
まぁ、この流れは薄々察してたがな。
さらに、俺の新統領就任に合わせて、一気に俺の嫁取り話を進めることになってたそうだ。もちろん、いきなりの嫁取りではなく、婚約と言うことだったそうだが。実は、この話には伯母御たちも一枚噛んでいた。
今回、サヤ姉とサジ姉が、俺の成人の試練に介添として加わったのも、まさにその布石だった。
さすがにこの話には、サヤ姉もサジ姉も驚いていたが、それでもよくよく考えると心当たりがあると言う。
俺の成人の試練の介添をしっかりこなして俺に気に入られるようにとか、そしたら将来はユノベの統領夫人も夢じゃないとか、伯母御たちにやたらとハッパを掛けられたそうだ。
と言うことは、トノベもヤクシもその方向でまとまっていると見てまず間違いない。
わがユノベ一党は弓の技による遠距離攻撃に特化している。戦はまず弓矢部隊の矢合わせから始まる。ここで戦の大勢が決することもある。
矢戦から接近戦になると重装の盾槍部隊での競り合いとなり、その後、騎馬部隊の突撃などもあり、最終段階で乱戦に移行すると、軽装で身軽な刀剣部隊が暴れまわる。剣の技を追求しているトノベ一党は、刀剣での戦闘に特化している。
医薬術のヤクシ一党は、直接の戦闘に関わらずとも、戦にはなくてはならぬ存在だ。どんなに強い戦闘力があっても、医薬術を持たない集団はまず戦に勝てない。
ユノベ、トノベ、ヤクシ。この3家が婚姻で結束を固めることは戦略的には大きな意味がある。
それで伯母御ふたりがトノベとヤクシに嫁いだ訳だが、俺たちの代でも婚姻でさらに結束を固めようと言うのだろう。まさに政略結婚だな。
とはいえ、サヤ姉とサジ姉ならガキの頃からの仲だし、俺としては願ったり叶ったりだ。しかしふたりとも娶っていいのかね。
まぁ、いずれか一方とだけだと、その後に他方と禍根が残るしな。はっきり言って俺としてはとてもおいしい♪
参考までにユノベ、トノベ、ヤクシ以外の他の武家も紹介する。
盾槍部隊による防御の盾部。
騎馬部隊による突撃など機動の騎部。
遠距離属性攻撃を行う陽士の陰陽師東家=本家。
支援術を使う陰士の陰陽師西家=分家。
斥候、撹乱など水面下の働きをする忍の者と影の者を、契約により各家に派遣する忍部家と影部家。
さて、叔父貴たちだが、最終的には俺の言い分を渋々ながらも認めてくれた。
そう言えば、最初に叔父貴たちが提案して来た成人の試練の内容は、フジの霊峰の麓の樹海で獣を10体狩って来いと言うものだった。
この試練なら、クリアするのにさして時間は掛からないと踏んだのだろう。しかし俺は、別の試練にしたいと思う。
ぶっちゃけ、叔父貴たちが提案した試練は内容が薄い。これを試練とするくらいなら、サヤ姉やサジ姉と3人で達成したとは言え、黄金龍の眷属化の方が、よっぽど難易度が高い。
俺としては、何か他の試練を考えるつもりだ。
取り敢えず、新たな成人の試練をクリアするまで、今の通り叔父貴たちによる統領代理を続けてもらうことにした。
本音を言うと、統領になるには俺はまだまだ未熟だと言う思いがある。ユノベ一党を率いるには、俺にはまだ器量が足りない。統領の器量が足りなければ、ユノベ一党はまともに機能しないはずだ。
話が一段落して、俺たち3人は表座敷を辞した。すると、サヤ姉とサジ姉が、謝って来た。
「アタル、ごめんなさい。私たち、出しゃばり過ぎたわ。」
「介添の…分を…超えてた…。ごめん…なさい…。」
「何言ってるの?ふたりが活躍してくれなきゃ、ライを眷属にできてないって。ほんと気にしないでくれよ。」
「でも、ユノベの統領になるのが先になっちゃったわ。ね?サジ。」
こくり。
「実はさ、俺はまだ統領に就くつもりはないんだよ。将来的には継ぐけどさ、今の俺にはまだその器量が備わってないからな。」
「それは…そのうち…付いて…来る…。サヤ…?」
「そうね。統領になってから、いろいろ経験すればいいんじゃないかしら。そのために叔父様たちが後見して下さるんだし。」
「確かにそれも一理ある。でも、統領の嫡男だからってだけで、成人したてで統領に就いていいのかなってのもあるんだよね。」
「修行…って…こと…?」
「それもいいかしらね。アタルが納得行くようにすれば?」
「ふたりには、待たせて申し訳ないけどな。」
「え?待たせるって?」
「嫁取りだよ。」
「ふたり…って…?」
「もちろんサヤ姉とサジ姉のふたりだよ。さっき、表座敷でそんな話だっただろ?」
「私はアタルの嫁になるとは言ってないからね!」
「そんなの…急に…言われ…ても…。」
「サヤ姉、俺たちの将来の話にツンデレはやめろ。サジ姉、伯母御どのからすでにほのめかされていたんだよな?」
「ごめんなさい。」「ごめん…なさい…。」
「俺たちの婚姻は政治的な話だ。ユノベとトノベとヤクシが結束を固めることはこの国の平和の維持に大きく貢献する。そのためにふたりの伯母御は、それぞれトノベとヤクシに嫁いだのだからな。
俺たちの代でも婚姻を重ね、さらに結束を固めると言うのは頷けるし、何より他の勢力へ3家の結束を喧伝することになる。」
「確かにそうね。」
「8年前に親父が逝ったときには、この話はある程度出来上がっていたと思うぞ。以前からもふたりはたまにユノベに来ていたが、親父が逝ってからは、ふたりがユノベに来る頻度が露骨に上がったからな。」
「でも…この…3年…来て…なかった…。」
「その間、俺はふたりに会いたくてしょうがなかった。そして成人の試練の介添で3年ぶりに来てくれた。俺の気持ちは当然高まる。そう言うことだろうよ。ふたりはどうだ?」
「そうね。」
こくり。
「ふたりは2年前に成人したけど、この2年間、縁談がなかったよな。おかしいとは思わないか?おそらくトノベもヤクシもそのつもりですべて断ってたに違いない。」
「それは助かったわ。断る手間が省けたんだもの。ね?サジ。」
こくり。
「政略結婚だが、それがサヤ姉とサジ姉なら俺はまったく異存はない。それと、ふたりとも娶るぞ。どちらかに絞ると、他方に禍根が残るからな。」
「アタル!あんた堂々とハーレム宣言な訳?少しは申し訳なさそうにしなさいよ。ね?サジ。」
こくり。
「それとふたりとも正妻な。」
「サヤ…、アタルは…聞いて…ない…。」
「そうね。」ふたりが溜息をついた。
「婚儀は先の話だが、婚約は新たな成人の試練の後、すぐにでも発表することになるだろうな。」
ハーレムのため、俺はスルーに徹したのだった。笑
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更新は月水金の週3日ペースを予定しています。
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