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郷
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すんなりとこの暮らしも馴染んだ。朝は皆で一斉に起き、活動を始める。仕事をみっちりとするが、食料採取など生きるための労働のため、有意義に感じる。そしてともに過ごす人々がとても親切だ。どの点をとってもあっちの世界でしていたアルバイトなんかより自分には適していた。「起きて働く果報者」とはこのことなのだろうとちらりと考える。
ユーリ「クロウ、お昼ごはんだよ!」
「分かった」
この呼び名にも慣れたものだ。そしてその名を頻繁に呼ぶユーリの存在も近く感じるようになった。「一つ聞いていい?」
ユーリ「どうしたの?」
「ここの人達にとってあの菊畑はどういうもの?」
ユーリ「そんなこと急に言われてもな~笑」
笑みの後に少し改まって考える。
ユーリ「答えになってないかもしれないけど」
ちらりと顔を見る。ユーリは空を見上げていた。
ユーリ「人を思う気持ち。それが溢れた場所だと思う。」
胸の内側からゾワゾワと何かが動いた。急にじれったくなる。前髪を振る癖が思わず出る。その言葉を咀嚼してみると妙に共感できる答えだった。想い無くしてなぜあの美しさが成せるはずがない。
「そっか」
そっと立ち上がり、その動きに連続して歩き出す。そして意図的にものを落とすようにありがとうと伝える。
燦々と輝く太陽の下、畑を耕す。母なる自然と一体になるのを感じる。汗をかくのが気持ち良い。そこには時間は存在しないようで没頭という幸福があった。
ジョズ「おい、クロウ」
その言葉が脳に届き、徐々に時間を思い出させる。
「どうした?」
ジョズ「村長がお呼びだ」
集落の一角、住居としては他と変わりない村長の住む場所の前に案内された。唯一の違いは入り口前にシンメトリーに2本の松明が立てられていることだ。
ジョズ「入っていいぞ」
案内役であったジョズは外にいるようだ。村の人たちからは兄貴分のような存在だが、俺にはあまり心は開いていないようだ。本来それが普通のことだと思うが。入り口をくぐり、村長と対面する。白髭を顎が見えないくらい生やした温厚そうな方だった。大人の余裕を感じさせる様子で木椅子に座っていた。
村長「はじめまして。村長のロダンだ。皆は村長と呼ぶが、ロダンと呼んでくれると嬉しいよ」
「はじめまして。僕は・・」
村長「紹介は良い。皆から聞いておる」
短い会話だけでこの人が教養があり、強い人であることが分かる。しかし、心は全く読めない。どんな強靭であろうと論理的であろうとこの人は倒せない。そんな気がする。
少し間を空けて村長が口を開く。
村長「単刀直入に言う。君は異世界から来たね?」
ユーリ「クロウ、お昼ごはんだよ!」
「分かった」
この呼び名にも慣れたものだ。そしてその名を頻繁に呼ぶユーリの存在も近く感じるようになった。「一つ聞いていい?」
ユーリ「どうしたの?」
「ここの人達にとってあの菊畑はどういうもの?」
ユーリ「そんなこと急に言われてもな~笑」
笑みの後に少し改まって考える。
ユーリ「答えになってないかもしれないけど」
ちらりと顔を見る。ユーリは空を見上げていた。
ユーリ「人を思う気持ち。それが溢れた場所だと思う。」
胸の内側からゾワゾワと何かが動いた。急にじれったくなる。前髪を振る癖が思わず出る。その言葉を咀嚼してみると妙に共感できる答えだった。想い無くしてなぜあの美しさが成せるはずがない。
「そっか」
そっと立ち上がり、その動きに連続して歩き出す。そして意図的にものを落とすようにありがとうと伝える。
燦々と輝く太陽の下、畑を耕す。母なる自然と一体になるのを感じる。汗をかくのが気持ち良い。そこには時間は存在しないようで没頭という幸福があった。
ジョズ「おい、クロウ」
その言葉が脳に届き、徐々に時間を思い出させる。
「どうした?」
ジョズ「村長がお呼びだ」
集落の一角、住居としては他と変わりない村長の住む場所の前に案内された。唯一の違いは入り口前にシンメトリーに2本の松明が立てられていることだ。
ジョズ「入っていいぞ」
案内役であったジョズは外にいるようだ。村の人たちからは兄貴分のような存在だが、俺にはあまり心は開いていないようだ。本来それが普通のことだと思うが。入り口をくぐり、村長と対面する。白髭を顎が見えないくらい生やした温厚そうな方だった。大人の余裕を感じさせる様子で木椅子に座っていた。
村長「はじめまして。村長のロダンだ。皆は村長と呼ぶが、ロダンと呼んでくれると嬉しいよ」
「はじめまして。僕は・・」
村長「紹介は良い。皆から聞いておる」
短い会話だけでこの人が教養があり、強い人であることが分かる。しかし、心は全く読めない。どんな強靭であろうと論理的であろうとこの人は倒せない。そんな気がする。
少し間を空けて村長が口を開く。
村長「単刀直入に言う。君は異世界から来たね?」
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