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友情と恋のはざま ②

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 コテージから戻ってのアーネストの仕事ぶりは、彼の力が120%発揮されたものであった。

 仕事も人間関係もさらりとこなし、それでいて以前ほどの重圧感も感じない。あのエメラーダとの相対さえ怯む感覚ではなく、闘うような快さがあった。

 アーネスト本人が、楽しむように仕事をこなしているのである。それは結果の成功や失敗に関わらず、ともに仕事をする人々へと良い影響を与える結果となり、アーネストの社会的評価も高まっていった。
 アーネストの楽しみは、趣味の読書や射撃と、スイと…そしてもう一人からのコールだった。
 ショーティ・アナザーからの。

 実際ショーティの声を聞くだけで、日々の疲れが癒される感覚があった。
 アーネストにとって、スイ同様に、本当に大切な友人であった。
 コテージで投げかけられたショーティという小石は優しくその波紋を拡げていき、アーネストの中では以前よりも存在感を増していた。だからといって依存して生きようとは思わないが、それでも人によって疲れても人によってしか癒されないことを、知識としては知らずとも、感じているアーネストには大切な状態であった。
 それこそ“恋人”とちまたで言われる存在よりも。

 —————どれだけ愛し合い肌を合わせても、別れる時には別れがくる。

 アーネストは、両親を見ながら幼な心にそう感じていた。

 何よりアーネストは、心が伴わなくてもセックスができることを、その頃から知っていた。
 母親に見捨てられた端正な子どもの横顔はレディの称号を持つ女性たちの同情の的であったし、その孤独な後ろ姿は憂いを帯びある紳士方には魅力そのものであった。
 厳格であった父は、母が出て行ってからあまりアーネストと顔を合わせようとはせず、アーネストに対して何か言うこともしなくなっていた。

 —————これを…自由というのか見捨てられたというのか、アーネストにはわからなかった。

 それでも両親のいたはずの隙間を埋めるように、差し出された大人の手を取ったアーネストに、罪悪感とか一般常識とかを感じる間があるはずなく。そして大人達にとって、この時間はゲームに過ぎなかった。駆け引きの結果に得る、躰の快楽。大人の…その感覚を、アーネストはそのまま受け止めていた。恋や愛などはっきりしないものより、確実な手応えのあるゲームの方がアーネストには理解しやすかったことは言うまでもない。
 月学園に通う頃には、大人顔負けの話術や様々な経験をしていた。もはやアーネストにとって、セックスは手段であって快楽は二の次というものでしかなかった。

 そのアーネストが、ショーティとの関係に溺れるはずはなかった。

 アーネストにとって、手段という価値しかない躰の関係の相手より、友人の方が大切な存在だった。
 友人。損得なしに傍にいてくれる存在。
 月学園で知り合った者は比較的それらに近かったが、カナン・フィーヨルドとミドリ・カミノクラは特別だった。アーネストが社長に就任してからも変わらずに接してくれる。
 特にミドリは、彼の内に秘めた強さに惹かれた。
 近づきたくて、知り合いになりたくて………けれども触れると穢してしまいそうで触れられなかった存在。
 あの時も…アーネストは、スイを友人だと自分に言い聞かせたものだった。アーネスト自身、無意識だったのだろう。牽制しなければならなかった、自分の心の内などは。

 今回のショーティも、似たようなものであった。ただアーネストは、スイの時もこの時も、この感情をなんと呼ぶのか…知らなかった。知らなかったのだった………。



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