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番外編
キャサリン・マクリラールの独り言②
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心配で追いかけてきたのに、まるでいつもそうしているみたいにお茶してるショーティをみつけた。なんだか近寄り難くってちょっとだけ足が止まったの。なんだか近づいちゃいけないみたいに思えたのだけれど、ショーティが立ち上がり掛けたから、私も決心して歩きだしたけど……。
突然、ショーティの雰囲気が変わったわ。
思わず視線を追っかけたら………男の人を見てた。
まっすぐに見て—————。
覚えてないはずなのに。知らないはずなのに。誰も教えてないのに。
ショーティは大きな目を見開いて、まるでその名前を呼びそうに口を開くの。だけど出ないのよ。
だって、ショーティは忘れているのだもの。
でも私、……知っているの。その人が誰なのか。ショーティにとってのどんな人なのか。
けど、思い出せないなら、思い出すまで私のお家にいた方がいいと思うの。だってその人は、ショーティの……家族だっていうその人は、ショーティに名前を名乗らなかったわ。
目を覚ました時にそばにいなかった…と思うわ。
それでも、彼がいいの?
『アーネスト・アナザー。間違いなくパートナーです』
おばあ様の言葉を思い出す。
この人がショーティのパートナー。指輪の相手……。
さらさらとした金髪…?ううん、私よりも少し暗め?
太陽を浴びているからかな。ううん。ショーティが見つめているからかな?まっすぐに向かって歩くから?まるでスポットライトを浴びているみたいにその人が照らし出される。
私は……駆け寄ってしまった。割り込むようにショーティの視線を奪うために声を掛けて……。2人が同時に私を見た。微妙な空気だってわかった。けど、でも私だって見つけたのよ。助けたの。
———だからなのかな。ショーティは私を優先してくれた。
嬉しかったけど、その人、そうショーティのパートナーのアーネストはその場でまっすぐに私を、そしてショーティを見つめていた。
ああ、きっと連れて帰るのね。
ショーティを心配してニューヨークから駆け付けて来たんだもん。
お母様を心配したお父様のように。
≪≪≪≪≪
だけど、連れて帰ることはなかった。
ショーティが元気そうだから先に帰るのだとおばあ様は言った。記憶のないショーティを無理に連れて帰ることはしないって。
なんだか胸の中がもやもやしたところで、帰ると言い出したのはショーティだった。
まっすぐな言葉がなんだかショーティらしいって思えたわ。私、知らないのに、本当のショーティなんて知らないのに…。アーネストが知っているショーティを私は知らないのに……。
二人の関係が羨ましかった。理由なんかわからない。だけど変に悔しい。
だって覚悟を決めたショーティはどこかカッコよかった。見た目はかわいいのに、綺麗でカッコよくて、少しだけ怖くて。
私の金髪に軽く触れるだけのkissをくれたわ。
私を見て柔らかそうな笑顔を浮かべてくれた。
ふんわりと抱きしめてくれたけど、本当に腕を添えるだけ。
あの時、まっすぐに見つめて『ダメ』と一言切り捨てたショーティの姿がちょっとオーバーラップしてきたわ。
だから泣くのをやめた。そして帰って行くショーティを見送った。
また会えるよってほほ笑んでくれたけれど、その笑みはすごく綺麗で優しそうで……ちょっとだけ疑ったのだけど。
そ・う・し・た・らっ!
本当に!
離れたとたんにショーティは!記憶を失っていたことを忘れたわ!
私のことを忘れた!
どういうこと!?
ど、う、い、う、ことなの!!
助けてくれてありがとう、なぁんて言いに来たけど、ショーティに似た猫を飼っていいって言ったのに、名前も同じものを付けていいって言ったのに、忘れているの。
猫の名前を聞かれたから答えたのに、ちょっとだけ嫌な顔をしたこと、私、絶対に忘れないからね!
≪≪≪≪≪
クリスマスには二人からプレゼントが届いたわ。素敵なリボンと花束そしてカード。
賭けてもいいわ、これ多分アーネストのチョイスよ。ショーティはこれほど気が回らないわ!なんだかそんな気がするもの。
……まあ、幸せなのよね。
納得するけれど、もちろん、嫌味を含んでいるわ。
二人の存在を知って、なんだかワクワクするようなドキドキするような、胸の奥がきゅっってなるような、今までとは違う、けれど今までのような日常が戻った。
……と思ってたのにっっ!
そうしたら。
またよ、そ・う・し・た・ら!!
一年も経たないうちにアーネストが女性と写真を撮られていたの!
もう、本当に綺麗で優しそうな笑顔を浮かべて!
アーネストに直接聞くのは…怖いから…ショーティに連絡したら地球に居ないって言うし。いない間にあんなスキャンダルを起こすアーネストになんか渡せない、そう思ってすんごい計画を思いついて。実行したのに……。
全部勘違いで、そして、そしてアーネストはショーティのことを大好きで。
————謝るなんて思ってなかった。私によ?勝手しちゃったのは私なのに、謝る必要なんてないのに、警察とかそんな大事にしちゃえばいいのに、……謝られたらもう何もできないじゃない。
ショーティは綺麗で可愛くて、なのに少しだけ意地悪で、本当にアーネストだけに素直なの。本当に、アーネストだけに!
アーネストのこと、どこにも出したくないとか誰にも見せたくないとか、平気で口に出すわ。ちょっとだけアーネストが羨ましい。
だけど、アーネストもショーティのこと大好きなの。
記憶を失くしていた時とか、私がショーティを拉致してた時とか、そしてパパのことを助けてくれた時も、ショーティ相手にはあまりはっきりと言ってないみたいだけど、雰囲気が全然違う。
もともと紳士なんだけど……見ているとなんだかドキドキするわ。
言葉の響きとか?表情…とか?
アーネストがちょっとだけ我儘を言っているような、うん、素直なアーネストが見え隠れするみたいな。
そんな時、私は空気になるの。何も見てませんって顔をするわ。
そして気付かれないように、ショーティを甘やかしているようで実は甘えているんじゃないかって思えるアーネストを横目で見るの。もちろん、すぐに通常モードに戻るから、たまーに、本当に時々、ちょっとだけしか見られないレアな場面なのだけど。そんな時は………ショーティが羨ましい。
なんだろう。
私ってば、一番贅沢な場所で二人を見られるってこと、今さら気付いたわ。こんなラッキーなことないわね!
そして気が付いたらママのことから立ち直ってた。パパもおばあ様もみんなが元気で、お家にやってきた猫のショーティは、正式名称ショーティJrになったわ。
私的にはアーネストが猫を『ショーティ』と呼ぶときの甘い響きが好きだったんだけど、ショーティが焼きもちやいちゃうからジュニアって呼ぶことにしたの。
妥協してあげたのよ。
≫≫≫≫≫
大好きで憧れの二人から今年もクリスマスカードが送られてきたわ。
私はワクワクしながらカードを開いて、もう一枚添えられてることに気付いたの。
そこには。
え——————?
ニューヨークを離れる…?
ニューヨークを離れる…ってことは、ワシントン?
ロスに行くとか?カリフォルニアはあんまりアーネストに似合わない感じするけど……。アメリカ本土を離れる、の……?
もういきなり押し掛けられないってこと?
行き先は書いてなかったけど、けど!
どこに行くにしても……。
—————夏季休暇で遊びに行きたいって言ったらどんな反応が返ってくるかしら?
キャサリン・マクリラールの独り言 「手の中の幸せ」END
突然、ショーティの雰囲気が変わったわ。
思わず視線を追っかけたら………男の人を見てた。
まっすぐに見て—————。
覚えてないはずなのに。知らないはずなのに。誰も教えてないのに。
ショーティは大きな目を見開いて、まるでその名前を呼びそうに口を開くの。だけど出ないのよ。
だって、ショーティは忘れているのだもの。
でも私、……知っているの。その人が誰なのか。ショーティにとってのどんな人なのか。
けど、思い出せないなら、思い出すまで私のお家にいた方がいいと思うの。だってその人は、ショーティの……家族だっていうその人は、ショーティに名前を名乗らなかったわ。
目を覚ました時にそばにいなかった…と思うわ。
それでも、彼がいいの?
『アーネスト・アナザー。間違いなくパートナーです』
おばあ様の言葉を思い出す。
この人がショーティのパートナー。指輪の相手……。
さらさらとした金髪…?ううん、私よりも少し暗め?
太陽を浴びているからかな。ううん。ショーティが見つめているからかな?まっすぐに向かって歩くから?まるでスポットライトを浴びているみたいにその人が照らし出される。
私は……駆け寄ってしまった。割り込むようにショーティの視線を奪うために声を掛けて……。2人が同時に私を見た。微妙な空気だってわかった。けど、でも私だって見つけたのよ。助けたの。
———だからなのかな。ショーティは私を優先してくれた。
嬉しかったけど、その人、そうショーティのパートナーのアーネストはその場でまっすぐに私を、そしてショーティを見つめていた。
ああ、きっと連れて帰るのね。
ショーティを心配してニューヨークから駆け付けて来たんだもん。
お母様を心配したお父様のように。
≪≪≪≪≪
だけど、連れて帰ることはなかった。
ショーティが元気そうだから先に帰るのだとおばあ様は言った。記憶のないショーティを無理に連れて帰ることはしないって。
なんだか胸の中がもやもやしたところで、帰ると言い出したのはショーティだった。
まっすぐな言葉がなんだかショーティらしいって思えたわ。私、知らないのに、本当のショーティなんて知らないのに…。アーネストが知っているショーティを私は知らないのに……。
二人の関係が羨ましかった。理由なんかわからない。だけど変に悔しい。
だって覚悟を決めたショーティはどこかカッコよかった。見た目はかわいいのに、綺麗でカッコよくて、少しだけ怖くて。
私の金髪に軽く触れるだけのkissをくれたわ。
私を見て柔らかそうな笑顔を浮かべてくれた。
ふんわりと抱きしめてくれたけど、本当に腕を添えるだけ。
あの時、まっすぐに見つめて『ダメ』と一言切り捨てたショーティの姿がちょっとオーバーラップしてきたわ。
だから泣くのをやめた。そして帰って行くショーティを見送った。
また会えるよってほほ笑んでくれたけれど、その笑みはすごく綺麗で優しそうで……ちょっとだけ疑ったのだけど。
そ・う・し・た・らっ!
本当に!
離れたとたんにショーティは!記憶を失っていたことを忘れたわ!
私のことを忘れた!
どういうこと!?
ど、う、い、う、ことなの!!
助けてくれてありがとう、なぁんて言いに来たけど、ショーティに似た猫を飼っていいって言ったのに、名前も同じものを付けていいって言ったのに、忘れているの。
猫の名前を聞かれたから答えたのに、ちょっとだけ嫌な顔をしたこと、私、絶対に忘れないからね!
≪≪≪≪≪
クリスマスには二人からプレゼントが届いたわ。素敵なリボンと花束そしてカード。
賭けてもいいわ、これ多分アーネストのチョイスよ。ショーティはこれほど気が回らないわ!なんだかそんな気がするもの。
……まあ、幸せなのよね。
納得するけれど、もちろん、嫌味を含んでいるわ。
二人の存在を知って、なんだかワクワクするようなドキドキするような、胸の奥がきゅっってなるような、今までとは違う、けれど今までのような日常が戻った。
……と思ってたのにっっ!
そうしたら。
またよ、そ・う・し・た・ら!!
一年も経たないうちにアーネストが女性と写真を撮られていたの!
もう、本当に綺麗で優しそうな笑顔を浮かべて!
アーネストに直接聞くのは…怖いから…ショーティに連絡したら地球に居ないって言うし。いない間にあんなスキャンダルを起こすアーネストになんか渡せない、そう思ってすんごい計画を思いついて。実行したのに……。
全部勘違いで、そして、そしてアーネストはショーティのことを大好きで。
————謝るなんて思ってなかった。私によ?勝手しちゃったのは私なのに、謝る必要なんてないのに、警察とかそんな大事にしちゃえばいいのに、……謝られたらもう何もできないじゃない。
ショーティは綺麗で可愛くて、なのに少しだけ意地悪で、本当にアーネストだけに素直なの。本当に、アーネストだけに!
アーネストのこと、どこにも出したくないとか誰にも見せたくないとか、平気で口に出すわ。ちょっとだけアーネストが羨ましい。
だけど、アーネストもショーティのこと大好きなの。
記憶を失くしていた時とか、私がショーティを拉致してた時とか、そしてパパのことを助けてくれた時も、ショーティ相手にはあまりはっきりと言ってないみたいだけど、雰囲気が全然違う。
もともと紳士なんだけど……見ているとなんだかドキドキするわ。
言葉の響きとか?表情…とか?
アーネストがちょっとだけ我儘を言っているような、うん、素直なアーネストが見え隠れするみたいな。
そんな時、私は空気になるの。何も見てませんって顔をするわ。
そして気付かれないように、ショーティを甘やかしているようで実は甘えているんじゃないかって思えるアーネストを横目で見るの。もちろん、すぐに通常モードに戻るから、たまーに、本当に時々、ちょっとだけしか見られないレアな場面なのだけど。そんな時は………ショーティが羨ましい。
なんだろう。
私ってば、一番贅沢な場所で二人を見られるってこと、今さら気付いたわ。こんなラッキーなことないわね!
そして気が付いたらママのことから立ち直ってた。パパもおばあ様もみんなが元気で、お家にやってきた猫のショーティは、正式名称ショーティJrになったわ。
私的にはアーネストが猫を『ショーティ』と呼ぶときの甘い響きが好きだったんだけど、ショーティが焼きもちやいちゃうからジュニアって呼ぶことにしたの。
妥協してあげたのよ。
≫≫≫≫≫
大好きで憧れの二人から今年もクリスマスカードが送られてきたわ。
私はワクワクしながらカードを開いて、もう一枚添えられてることに気付いたの。
そこには。
え——————?
ニューヨークを離れる…?
ニューヨークを離れる…ってことは、ワシントン?
ロスに行くとか?カリフォルニアはあんまりアーネストに似合わない感じするけど……。アメリカ本土を離れる、の……?
もういきなり押し掛けられないってこと?
行き先は書いてなかったけど、けど!
どこに行くにしても……。
—————夏季休暇で遊びに行きたいって言ったらどんな反応が返ってくるかしら?
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