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Birthday

☆scene.1

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 scene.1

 頬から首根へ肩先に触れる唇が、必要以上に熱を高めていた。けれど、それ以上にアーネストの躰が熱くて……。

「——————っ……」

 後ろからという珍しい体位にも感覚が研ぎ澄まされていた。背筋をたどるアーネストの指先がシーツと肌の迫間にすべり、赤く敏感になった突起に触れる。

「ぁ————はっ……」

 執拗なまでに動くのは指先だけで、その度に泡立つ感覚が小さな声を誘発する。繫がったまま動く気配のないアーネストの唇が首筋をなぞり時折きつく吸い上げ、質のよい金茶の髪が同じように肌をすべる—————。

 いつにも増して丁寧な愛撫に、それよりも深く穿たれたアーネスト自身の脈動に、ショーティの中心はもやもやと奇妙な疼きを作り出したまま、必要以上には与えられない快楽を求め彷徨う…。



 はじめは口づけだった。いつものように始まったキスは、けれどいつもよりも執拗に絡む舌先から違った。器用に絡んでくるのはいつも通りだったが、吸い上げられ、押し戻され、歯列を探られてから上顎をゆっくりとさすられる。頭を固定されたまま自由気ままに、息継ぎさえも遮られたように深く侵入してくるアーネストの舌が、声を出すとまるで噛んでしまいそうで、自然身が引けた。けれど逃がすことのない口づけに追い立てられるまま、受け続け溢れかえった唾液が口元からこぼれ落ち…。それでも解放されないショーティは、とん、とアーネストの胸元を叩いた。
 けれど今度はその手を取られてぎゅっと手の平に握りこまれたまま、口づけは続く—————。

「…っ!」

 手を離して貰おうと上下に振るが離れることはなく、残った片方で胸元を押した。

「随分と…」
「はっ……っ」
「可愛いことをするね?」
「…アーネスト、こそ…、———————なんか……」

 言いかけたショーティだったが、ふわりと笑いかけるアーネストの表情に思わず言葉を飲み込んだ。笑顔が魅力的なことは十分に知っていたのに、今さらなのに、今日の笑顔は反則だと思ってしまう。

『ショーティ……、愛しているよ……』

 そう言ってくれた響きにも似た笑顔。

 ずるいなぁ……との言葉はすぐにアーネストの口づけに飲み込まれてしまう—————。

 再びのキス。そして栗色の髪をかき上げられ、

「やっぱり似合うね…」と囁かれながら耳に触れる指先と唇。

 何が、とか、くすぐったいとか抗うような煽るような言葉を吐いたのはショーティだ。そのままなだれ込むようにベッドへ。そして入念に施されるのはアーネストを受け入れるべき場所で………。
 簡単に思い出せるしなやかな指がショーティの中を自由に動いていると思うとそれだけで反応してしまうのは、もう何年にも渡りアーネストを覚えさせられたから。いや、覚えたかったからか。

 今更ながらに、初めてのキス………そう16歳のあの頃からずっと追いかけていたアーネストをようやく手に入れた実感のようなものが内側から溢れてきた。

「……っあ。はっ……」

 短い息が上がるのは宥めすかすようにうごめく指に翻弄されているからで、その形の変化にアーネストも気付いているはず……。

「ァ…ネスト」 

 震える声で名前を呼ぶと、

「…気持ちがいい?」
「…うん…」

 尋ねられて、素直に頷く。そしてショーティの指は反応している自分自身に……、ゆっくりと覆うように触れる。同時に最奥の指が3本に増やされて、

「んぁっ……」

 何かを耐えるように息を大きく吸い込むと、目元にキスが降ってきた。

「————動かしていいよ」
「ぁ……ん……」

 軽く頷きながら優しい響きに促され、自分自身へと快楽を与えると、最奥の指がそれに合わせて動き、ショーティの足がゆるゆるとシーツ上をすべった。

「ん……いい子だね」
「っ……は……————ん!」

 不意に口元をキスで塞がれた。敏感になりすぎた口腔内を行き過ぎ、解放とともにショーティの指に触れたのはアーネスト自身の昂ぶり…自分のものと一緒に触れて握りこもうとした時、するりとそれは逃げ出す。

「まだ、だよ」

 軽い息継ぎと共に告げられた言葉は少し不本意だったが、アーネストが動く気配に視線を投げるとふっと目元だけで笑みを浮かべる彼の姿に、同じように笑みがこぼれた。しかし、次の瞬間には、

「!?」

 自分自身を握っていたショーティの手ごとアーネストに捕まれ、激しくも上下に扱かれる。

「アーネストっ!」
「うん、一度、いっておこうか」

 耳元で囁かれる声とは違う手の平の動きに、

「待っ…ん——————アーネスト、も………一緒に……」

 切れ切れに誘うが、

「ショーティ…まだ、始めたばかりだよ……」

 少しだけ意地悪な響きを持って耳朶を噛む。

「んぁ、…あ、あ、——————————はぁっ!!」


 果てたばかりで敏感なショーティの中を指が確信を持って蠢く。

 ここ、と。ここ、と…ここ。

 言葉には乗らない仕草が的確さを持ってショーティの身を揺らす。力の入らない手がアーネストの腕を掴むが。

「ショーティ…入ってもいいかな?」

 ややぼうっとした意識のまま、今日は少しだけ意地が悪い、とショーティは思った。何を確認する必要があるのだろう、と思った。ショーティが欲しいものはアーネストだけが持っているのにと。

「ショーティ…?」
「…アーネストが…欲しい」
「……うん」
「————————っあ」

 十分に解された場所でアーネストを受け入れる。

 その瞬間に見せる朱色の頬や、潤む瞳。一段と華やぐ肌の色などアーネストを楽しませる要素は変わらず、アーネストの背筋がぞくりと泡立つ。

 そしてそんなショーティをじっくりと堪能した後、アーネストは三度の口づけを繰り出し————。



 気が付いた時にはショーティはうつ伏せになっていた。穿たれたままの態勢でアーネストの状態はダイレクトにショーティに伝わっているのに、彼は動くことなくただひたすらショーティの躰に触れ、マークし、煽っている。

「……ぁ————————」

 ショーティは…ベッドに貼り付けられたかの姿勢で身悶えることしかできず、観念したように軽く頭を振った。

「も、……や、だ……動いてよ…アーネスト…っ!……」

 そのまま告げるが、

「もう少し……」

 僅かに掠れた声だけが背に落ちて、更に熱を煽られる。核心に触れているわけではないのに、アーネストの息遣いに身体の芯は震えが止まらない。首筋や肩先に強く寄せる口付けが鬱血を残し、その感覚にもただシーツだけを手繰るようにつかむ。

 悠久の呪縛に絡み取られたような、それでもその快楽の深さに全てを忘れ、身の内でアーネストだけを感じていた。

「………んんっ……」

 頭の向きを変えるだけで全身でアーネストを意識する。思わず小さく声を飲み込むと、

「ショーティ……もう少し、声も聞きたいな」

 耳朶に触れるほど近く、軽い噛み跡さえ残し、柔らかな誘い文句を落とされた。

「じゃ…あ……動いてよ、………も…」

 告げるたび、息を吐くたび、身の内でアーネスト自身が質量を増す。感覚があまりに敏感すぎて追えなくなり、肩口にキスを落とされ、その小さな動きにも、

「あ!…っ」

 声が響く。上気した目元を一滴の涙が零れるのは既に意思範囲外。

「お願い…だ、から…」
「…お願い…?…」
「う、ん———————はあっ!……あっあ——————!」
「……君からの…お願いなら…聞かないわけにはいかないね」

 ゆっくりと掠れたような声で紡がれる言葉と同じように動き出すアーネストに、ショーティの中の感覚が否応なく開きだす。全てを引き出されるような、そして抑え込まれるような強烈なまでの快楽!

「ぁ、あぁぁぁ—————アーネスト、アーネスト待って……んぁ」
「ショーティ…?……っ!…」
「ぃきそう……って、ぃく」
「うん、いいよ」
「っは、はっ。んあああぁ!!」

 枕に顔を埋めようとするショーティの顎をとり、声を堪能するかのように響かせる。

 激しい締め付けの波をやり過ごすアーネストは、ショーティの息遣いが落ち着くのを待ってから、再び動き出す。

「やっ、待っ…ん、んんっ——————」

 反応がさらに良くなるショーティの最奥でアーネストはショーティの悦びを引き出そうとしていた。

 ショーティは快楽に弱い…それはアーネストも十分に知っていることだった。ならば躰に教え込ませるだけだと。アーネスト以外選ぶことがないように……。

「あ、アーネスト……も」

 そんなことを知ってか知らずにか、ショーティが懇願する。

「—————そう、だね……次は…一緒に」

 願いは、叶える———————。

 何しろ今日は、ショーティのbirthdayなのだから……。
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