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turning point
囚われ王子とやんちゃ姫 ①
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すごく良く寝た、と言うのがショーティの感想だった。
これほどまでに何も考えずに眠れたのは、半年振りか。
キャサリンと食べたイタリアンはなかなかの味で、つい頼んでしまった白ワインに当たったか。いや、火星でも飲んではいたから白ワイン一杯くらいに酔うはずもない……。
そこまで機嫌良く考えながら、はたと思い至る。
そう、火星から地球へと、ニューヨークへと戻ってきたのだ。
なのに、寝入っているベッドは見知らぬ物で、さらに言うならこの部屋自体に見覚えがない。
窓はどれもブラインドが薄く下ろされたまま圧迫感もないことからどこか見晴らしの良い部屋なのだろうと思う。そして調度の類を見回すとソファやテーブル、キャビネットに至ってシンプルだが、飽きさせない造りの良いもので、割と良さそうなホテルの一室であることを感じさせた。そして自身が着ているのは帰宅時のままのシャツとスラックス。
確かに、アーネストがいない部屋で1週間、大人しく待つつもりはなかったショーティだ。それは自分の中でもしっくりとこなかったし、必要なものを持ってどこかのホテルなり、友人宅になり転がりこむつもりもあった。しかし、この状況はどう考えても…。
昨年2月、友人カナンと深酒の後、拉致監禁という目にあったのは記憶に新しい。………まさか、二度も同じへまをやってしまったのか、とショーティは珍しく青ざめた。
意趣返しどころの騒ぎではない。アーネストに何を言われるかわからないじゃないか。
「………」
とにかく起きないことには話しにならない、と身を起こしたそこで、ジャラリと足元から金属音が響き、妙な重さを感じた。
そして…………目に飛び込んできたのは、右足首の黒っぽい金属にも似た枷だった。挟み込むタイプのそれは足首を固定し、そこから長いチェーンがベッドの下に続いている。音の正体はこの枷で、どうやらベッドの足下に括りつけてあるらしい。ご丁寧にも薄い布を巻いた上からその足枷はつけてあり、そこからも手酷いことをされるとは思えないが、目的がわからない限りは何ともいえない。
火星よりもニューヨークの方がよっぽど危険じゃないか、と小さく悪態をつきながら、ゆっくりと僅かな動きだけで周囲を伺う。どうやら人の気配はなかった。そして一呼吸置き、
「!?」
ショーティは思わず目を剥いた。
腕にあるはずのデバイスが見当たらず、それよりも何よりもその指先。薬指に着けていたはずのペアリングがないのだ。
「なんで」
思わず言葉がこぼれ出た。自ら外した?と自問するが、そんなはずはないと否定する。
アーネストのあんな画像を見せられて一瞬むっとした…いやはっきり言って腹が立ったが、そこは解決した。自分の中で消化した。だから指輪を外すはずはない。なので、それを外したのはこの足枷をつけた人物だ、とショーティは思う。そしてこの人物は自分とアーネストとの関係を良く思わっていないという結論に至った。
そうなってくると話はまた別だ。
早いところ状況を打破しないと、もしかしたらこれは生命の危機————。
「あ、ショーティ起きた?」
「————キャサリン?」
やや蒼白になるショーティだったが、そこへ出入口のドアから顔を出した少女のどこかのんびりとした姿に、思わず思考を止めた。
金髪は出会った当初よりも見事に波打ち、青色の瞳はキラキラとした柔らかな光を持ってみつめている。
キャサリン・マクリラールがなぜここにいるのか。
「君は……平気?」
「もちろん、平気よ?だって私はショーティを手に入れたもの」
少女の声はいつにも増してウキウキと弾んでいた。
これほどまでに何も考えずに眠れたのは、半年振りか。
キャサリンと食べたイタリアンはなかなかの味で、つい頼んでしまった白ワインに当たったか。いや、火星でも飲んではいたから白ワイン一杯くらいに酔うはずもない……。
そこまで機嫌良く考えながら、はたと思い至る。
そう、火星から地球へと、ニューヨークへと戻ってきたのだ。
なのに、寝入っているベッドは見知らぬ物で、さらに言うならこの部屋自体に見覚えがない。
窓はどれもブラインドが薄く下ろされたまま圧迫感もないことからどこか見晴らしの良い部屋なのだろうと思う。そして調度の類を見回すとソファやテーブル、キャビネットに至ってシンプルだが、飽きさせない造りの良いもので、割と良さそうなホテルの一室であることを感じさせた。そして自身が着ているのは帰宅時のままのシャツとスラックス。
確かに、アーネストがいない部屋で1週間、大人しく待つつもりはなかったショーティだ。それは自分の中でもしっくりとこなかったし、必要なものを持ってどこかのホテルなり、友人宅になり転がりこむつもりもあった。しかし、この状況はどう考えても…。
昨年2月、友人カナンと深酒の後、拉致監禁という目にあったのは記憶に新しい。………まさか、二度も同じへまをやってしまったのか、とショーティは珍しく青ざめた。
意趣返しどころの騒ぎではない。アーネストに何を言われるかわからないじゃないか。
「………」
とにかく起きないことには話しにならない、と身を起こしたそこで、ジャラリと足元から金属音が響き、妙な重さを感じた。
そして…………目に飛び込んできたのは、右足首の黒っぽい金属にも似た枷だった。挟み込むタイプのそれは足首を固定し、そこから長いチェーンがベッドの下に続いている。音の正体はこの枷で、どうやらベッドの足下に括りつけてあるらしい。ご丁寧にも薄い布を巻いた上からその足枷はつけてあり、そこからも手酷いことをされるとは思えないが、目的がわからない限りは何ともいえない。
火星よりもニューヨークの方がよっぽど危険じゃないか、と小さく悪態をつきながら、ゆっくりと僅かな動きだけで周囲を伺う。どうやら人の気配はなかった。そして一呼吸置き、
「!?」
ショーティは思わず目を剥いた。
腕にあるはずのデバイスが見当たらず、それよりも何よりもその指先。薬指に着けていたはずのペアリングがないのだ。
「なんで」
思わず言葉がこぼれ出た。自ら外した?と自問するが、そんなはずはないと否定する。
アーネストのあんな画像を見せられて一瞬むっとした…いやはっきり言って腹が立ったが、そこは解決した。自分の中で消化した。だから指輪を外すはずはない。なので、それを外したのはこの足枷をつけた人物だ、とショーティは思う。そしてこの人物は自分とアーネストとの関係を良く思わっていないという結論に至った。
そうなってくると話はまた別だ。
早いところ状況を打破しないと、もしかしたらこれは生命の危機————。
「あ、ショーティ起きた?」
「————キャサリン?」
やや蒼白になるショーティだったが、そこへ出入口のドアから顔を出した少女のどこかのんびりとした姿に、思わず思考を止めた。
金髪は出会った当初よりも見事に波打ち、青色の瞳はキラキラとした柔らかな光を持ってみつめている。
キャサリン・マクリラールがなぜここにいるのか。
「君は……平気?」
「もちろん、平気よ?だって私はショーティを手に入れたもの」
少女の声はいつにも増してウキウキと弾んでいた。
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