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turning point

☆ケンカの理由 ②

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「気持ちいい?だったら………声、聴かせて…よ」

 誘惑なのか、脅迫なのか。

「ショ…ここで…なくても……」
「そんな声じゃないよ、アーネスト……アーネストの、“声”が聴きたいんだ」

 追い込まれていると瞬時に悟る。しかし、どうしようもない羞恥心と抵抗感がアーネストの中にわだかまっていた。そのため喘ぎたい声を封じるように唇を噛みしめる。快楽のほんの片隅にアーネストの理性は残っていた。いくらショーティが相手であろうと乱れた自分をすべて見せるのは真っ平だと決めていた。

 が、不意にそそり立った核心を咥えられた瞬間の快楽と戦慄をどう表現すればいいのか。

「………っ!!ショっ……」

 思わずショーティの服を、その先の腕を肉ごとつかんでいた。
 けれどひるむことのないショーティも一切攻めで手を抜こうとはしない。
 先ほどまで口腔内を蹂躙していた舌が、自由に奔放に動き回る…。
 その時…ここまで追い込まれる状態に、ゾクリとしている自分を感じていた。
 その瞬間、アーネストの中で何かが弾けた。

「くっ……あぁ…!!」

 その後の言葉は呑み込んだが、そのせいで息を止めたので…終わった時には半ば意識がなかった。喘いでいる息遣いが自分のものだと気付くのに…数分は要したと思える。そして軽く舐める…如何わしい音が耳に届く…。

 肩で呼吸をしているためもはや制止の言葉も出ない……。

 だが、これ以上こんな自分を一方的に見られることは耐えられなかった。
 そっとショーティの頭をそこから外す。

「……ショーティ……」
「アーネスト。僕が気づかないとでも思った?」

 ショーティは衣服を一切崩さない姿を一度アーネストに見せると、ゆっくりとアーネストの顔を両手で包み上を向かせた。ショーティは軽く笑っている。

「…アーネストはさ。スタンダードが好みだもんね。ベッドがいいし、あまり明るくない方がいい」

 暗にわかっていて今やったのだと告げるショーティを苦々しく見るが、

「いいね。アーネストのこんな表情が見られるなんて」

 そう言いながら笑う姿がこの上なく綺麗で彼らしく…複雑な気分になってゆく。今さらながらにショーティに惚れている自分に気付く。

「まぁいいや。これで会長の件はチャラにしてあげるよ」
「……え……?」

 少し呼吸を整えるくらいの余裕が戻ってきた。
 そんなアーネストに覆いかぶさるように、ショーティはアーネストを抱きしめた。

「……僕が…会長のことに気付かないと思った?……アーネストの体調が悪いことに気付かないって?」

 ……アーネストの呼吸が止まった。
 今、ショーティは頭をアーネストの肩に乗せているためその表情は見えなかった。
 それでもわかる彼の気配。怒りではない……哀惜…。

「……アーネストは僕のものだよ。他のものに気を取られないでよね……これじゃあうかうか外にも出せないよ」

 そう強気でショーティが言うから、尚更ショーティのことを想うと胸が痛かった。責めればいいのに、と思う。
 エメラーダに惹かれたあの一瞬も、それをひきずって身体を壊した自分も。
 なのに……何も言わずただ見守っていたショーティ。これでアーネストが復活すれば別段言うこともなかったのだろうが、やはり体調を崩したとわかった時、これ以上放ってはおけないと判断したのではないだろうか。
 それがたまらなく痛い。

 そんな至福の痛みを与えてくれるのは、この世でただ一人ショーティ・アナザーだけだと思い知らされる。

 アーネストは肩越しのショーティを抱きしめた。そして、髪に耳に頬に口づけを落とす。

「ちょ、ちょっとアーネスト!今日という今日はごまかされないよ!」

 まだ言い足りないとかまだ答えていないなどと言いながら顔を上げたショーティに、アーネストは困ったような笑みを見せた。その一瞬に、ショーティは思わず絶句するのだが、それは明らかに隙であった。難なくアーネストに抱きしめられる。

「だ、だから僕はまだ…」

 アーネストに抑え込まれたショーティは身じろぐが。

「ごめん…。ごめんよ、ショーティ」

 その囁きが、耳に届く。一瞬ショーティが力を抜いた。

「……アーネスト、何が……ごめん?」

 何が……?

「ショーティ?」

 ショーティは、アーネストの腕の中で彼を見つめた。

「アーネスト、話して。何が“ごめん”なのかちゃんと僕に話して」

 じっと、ショーティはアーネストを見つめている。


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