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turning point
求めるものは… ①
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英国の家だと思った。……小さなアーネストが広い寝台で眠っている。
風邪をひいた身でエメラーダを追いかけて…さらに拗らせた時だった。
けれど…母がいなかった。父も一族の対応で忙しく…使用人も忙しそうに立ち回っている…。
のど…乾いた。
ベッドサイドに水差しはあったけれど、身体が動かせなかった。
夢だ…。アーネストはそう思う。
それでも喉が焼けつくような感じがした。喉が渇き過ぎているのだと思う。そして考えたことは、僕はどこにいるのだろうかということ。砂漠なんかに行ったかな、などと冷静に考えた。
けれどもすぐに柔らかいものが唇に触れた。
あ…水だ……。
濃厚な水の香り…。水の気配…。
欲しくて、どうしようもなく欲しくて、それに自ら唇を寄せると清らかな水が流れ込んできた。のどごしに痛みを感じるが、それよりも何よりも全身の細胞に水がいきわたる感覚。
水はとても甘かった。……水がこんなにおいしいものだとは今まで知らなかった程に。
「まだ、飲む…?」
低く、囁くかのような声。くすぐったい気分だった。
だからだと思う。水がとても甘かった理由。誰かが傍にいてくれる事実。
まだ水が欲しかった。
ただ水が欲しいのか、誰か傍にいて水をくれるという事実が欲しいのかはわからない。わからなかったけれど水が欲しかった。
けれど声が出ない。どうしただろうかと訝しがっている時に、水の気配がした。水が身体の中へ流れ込んでくる。同時に頬や首元に添えられる手。少しひやりとした感じがとても心地良い……。
その手を無意識にアーネストは握っていた。もう決して傍から離れないように。
そして目を開ける。
まず目に入ったのは…柔らかな栗色の双眸。心配気に覗き込むかのような瞳は至近距離で、なぜと思うよりも早く理由を悟る。ショーティが口移しでアーネストへと水を運ぶ。
「……まだ欲しい…?」
「……ショーティ」
アーネストが添えた手をそっと握り返してきてくれた。
そんなことが一つ一つ嬉しくて仕方ない。だからショーティの手を自分の頬へと当てた。離したくなかった。
「……傍にいて……」
それだけ言うとアーネストはまた眠りの闇へと沈んでいった。けれどそれは心地良いまどろみで…。
「…そんなこと…当たり前だよ」
そんな響きが遠くから聞こえた。
真夜中だった。クシュンという音でハッとして目覚める。
え?
横を見るとかなんが丸くなって眠っていた。どうやらくしゃみの犯人らしい。けれどかなんには眠る場所があるはずなのに、なぜここに、と思ってしまう。
アーネストが身を起こしても、かなんは起きる気配がない。これじゃ番犬にはならないなと笑いながら思ってしまう。まぁ名付けた時から仕方がなかったかもしれない。
……リビングの方から、明かりがもれていた。
ショーティ?
「だから、謝ったよね。無理。今、家から離れたくない」
仕事の…話だろうか……?
「その件だったら皆やりたがるだろうし、僕じゃなくてもいるよね?……無理。絶対に行かない。今ここに僕が残る以上の価値のものは今の僕には思いつかないから」
……ショーティ……。
「これ以上話すことはないよ……もちろんわかってる。けどそんなことしないよね」
そうして通話は切れたようだった。
「さぁてと。かなんを部屋に戻すかな」
どこか間延びしたような声とともにショーティの足音が近づいてくる。
そして扉がゆっくりと開き、顔を覗かせたショーティは起き上がっているアーネストを認めた。
風邪をひいた身でエメラーダを追いかけて…さらに拗らせた時だった。
けれど…母がいなかった。父も一族の対応で忙しく…使用人も忙しそうに立ち回っている…。
のど…乾いた。
ベッドサイドに水差しはあったけれど、身体が動かせなかった。
夢だ…。アーネストはそう思う。
それでも喉が焼けつくような感じがした。喉が渇き過ぎているのだと思う。そして考えたことは、僕はどこにいるのだろうかということ。砂漠なんかに行ったかな、などと冷静に考えた。
けれどもすぐに柔らかいものが唇に触れた。
あ…水だ……。
濃厚な水の香り…。水の気配…。
欲しくて、どうしようもなく欲しくて、それに自ら唇を寄せると清らかな水が流れ込んできた。のどごしに痛みを感じるが、それよりも何よりも全身の細胞に水がいきわたる感覚。
水はとても甘かった。……水がこんなにおいしいものだとは今まで知らなかった程に。
「まだ、飲む…?」
低く、囁くかのような声。くすぐったい気分だった。
だからだと思う。水がとても甘かった理由。誰かが傍にいてくれる事実。
まだ水が欲しかった。
ただ水が欲しいのか、誰か傍にいて水をくれるという事実が欲しいのかはわからない。わからなかったけれど水が欲しかった。
けれど声が出ない。どうしただろうかと訝しがっている時に、水の気配がした。水が身体の中へ流れ込んでくる。同時に頬や首元に添えられる手。少しひやりとした感じがとても心地良い……。
その手を無意識にアーネストは握っていた。もう決して傍から離れないように。
そして目を開ける。
まず目に入ったのは…柔らかな栗色の双眸。心配気に覗き込むかのような瞳は至近距離で、なぜと思うよりも早く理由を悟る。ショーティが口移しでアーネストへと水を運ぶ。
「……まだ欲しい…?」
「……ショーティ」
アーネストが添えた手をそっと握り返してきてくれた。
そんなことが一つ一つ嬉しくて仕方ない。だからショーティの手を自分の頬へと当てた。離したくなかった。
「……傍にいて……」
それだけ言うとアーネストはまた眠りの闇へと沈んでいった。けれどそれは心地良いまどろみで…。
「…そんなこと…当たり前だよ」
そんな響きが遠くから聞こえた。
真夜中だった。クシュンという音でハッとして目覚める。
え?
横を見るとかなんが丸くなって眠っていた。どうやらくしゃみの犯人らしい。けれどかなんには眠る場所があるはずなのに、なぜここに、と思ってしまう。
アーネストが身を起こしても、かなんは起きる気配がない。これじゃ番犬にはならないなと笑いながら思ってしまう。まぁ名付けた時から仕方がなかったかもしれない。
……リビングの方から、明かりがもれていた。
ショーティ?
「だから、謝ったよね。無理。今、家から離れたくない」
仕事の…話だろうか……?
「その件だったら皆やりたがるだろうし、僕じゃなくてもいるよね?……無理。絶対に行かない。今ここに僕が残る以上の価値のものは今の僕には思いつかないから」
……ショーティ……。
「これ以上話すことはないよ……もちろんわかってる。けどそんなことしないよね」
そうして通話は切れたようだった。
「さぁてと。かなんを部屋に戻すかな」
どこか間延びしたような声とともにショーティの足音が近づいてくる。
そして扉がゆっくりと開き、顔を覗かせたショーティは起き上がっているアーネストを認めた。
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