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惹かれるとき
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バーのカウンターでグラスを傾けあった二人は、
「くっ、はははは」
少しだけ口をつけたかと思ったそこで、ショーティが笑い声を上げた。
流れてくるのは柔らかなジャズだ。
一軒目よりも質の高い客層だが、そんなことはお構いなく、楽しげな声を出す。
「何?」
「すっごいね、もう、天才的」
「天才的?」
「ぼろ勝ちだったもんね。ポーカーはともかく、ルーレットまで」
それは先程行った簡易カジノでルーレットとポーカーにぼろ勝ちしたことを言っていた。
ポーカーはともかく、ルーレットなど玉次第、ディーラーにしかわからないそれを、
“どんな人でも癖はあるものだよ”とさらりと言い切った青年。
「盤が旧式だったしディーラーが機械ではなく人だったからね、あれは操作できるんだよ」
どこか懐かしさを含んでいるように告げる青年にかなり興味をもち、
「ね、月の学園で一緒だったってことはさ、歳は近いはずだよね?でも————経営者だよね?」
頬杖をつきながら、見上げるようにして問うショーティの言葉に、
「…まあ、……だったこともある、と言っておこうかな」
軽い笑みを浮かべ、青年は答える。
「そこって、結構大きかったんじゃない?」
「————」
突然何を言い出すか、と言うような視線をぶつけられ、ショーティは軽く肩を竦める。
「人の癖を瞬時に見抜くなんて技、誰もがもってるわけないし、計算が速い。後、顔見知りもいたよね?」
置いていかれたのは2度ほど、すれ違い様を入れれば4度、それ相応の歳の者が会釈、もしくは声を掛けてきたのだ。
「どうして?親戚だとは」
「親戚!?あんな年配者が?ご機嫌伺いみたいな会釈よこして?それに“いつでも声を掛けてください”って言ってたよね?経営者だったこともあるんなら、それも意味が繋がる」
青年は呆れたような表情を見せながらも苦笑を浮かべると、ウイスキーを口にする。
「人を見ていることは楽しい。僕は人を見る仕事をしていたんじゃないのかな?例えば……報道関係。もしくは、探偵とか……」
告げると同時にショーティはジンベースのカクテルを飲み干し、軽い笑みを見せる。
「なんて、探偵だったら笑い話にもならないや」
そして、そのまま同じカクテルを頼んだ。
耳に響くジャズが心地よく、青年が身に纏う香りもまたショーティを仄かに包む。
感覚が、不確かになっていた。
気づいたのは、コトンと置かれたグラスの音で、
「ショーティ、これ以上は……」
目の前に置かれたグラスに青年の手が伸びる。
きれいな指先だった。
素直に、触れてみたい、と思ってしまう。
「離れたく……ないな」
脳裏でつぶやいたつもりの言葉が、突然、口からこぼれて声になった。
一瞬の間を置き、動きを止めた青年の表情に、思わず息を飲む。
同姓…なのだ。誘うような言葉、言われた方は引いてしまうではないか。
「あ…」
焦ったように言葉を探すが、出てくるものもなく、
「な、なんてさ、酔ったかなあ」とごまかすように、至って明るく言い放つ。
そして、今ならまだ大丈夫だ、とも思う。
何事もなかったかのように、再会を祈っているよ、と別れれば……あるいは!
いやそんなことよりも!
自分には、運命の相手、がいるのだ。
いるはず…なのだ。
薬指に光るリングを見た瞬間に悟った事実を偽りだなどと思いたくはない。
大丈夫、と言い聞かせるようにつぶやき、グラスから青年へ視線を移したそこで、ショーティはみつめられていることに気づいた。
「……誘って………いるのかい?」
「くっ、はははは」
少しだけ口をつけたかと思ったそこで、ショーティが笑い声を上げた。
流れてくるのは柔らかなジャズだ。
一軒目よりも質の高い客層だが、そんなことはお構いなく、楽しげな声を出す。
「何?」
「すっごいね、もう、天才的」
「天才的?」
「ぼろ勝ちだったもんね。ポーカーはともかく、ルーレットまで」
それは先程行った簡易カジノでルーレットとポーカーにぼろ勝ちしたことを言っていた。
ポーカーはともかく、ルーレットなど玉次第、ディーラーにしかわからないそれを、
“どんな人でも癖はあるものだよ”とさらりと言い切った青年。
「盤が旧式だったしディーラーが機械ではなく人だったからね、あれは操作できるんだよ」
どこか懐かしさを含んでいるように告げる青年にかなり興味をもち、
「ね、月の学園で一緒だったってことはさ、歳は近いはずだよね?でも————経営者だよね?」
頬杖をつきながら、見上げるようにして問うショーティの言葉に、
「…まあ、……だったこともある、と言っておこうかな」
軽い笑みを浮かべ、青年は答える。
「そこって、結構大きかったんじゃない?」
「————」
突然何を言い出すか、と言うような視線をぶつけられ、ショーティは軽く肩を竦める。
「人の癖を瞬時に見抜くなんて技、誰もがもってるわけないし、計算が速い。後、顔見知りもいたよね?」
置いていかれたのは2度ほど、すれ違い様を入れれば4度、それ相応の歳の者が会釈、もしくは声を掛けてきたのだ。
「どうして?親戚だとは」
「親戚!?あんな年配者が?ご機嫌伺いみたいな会釈よこして?それに“いつでも声を掛けてください”って言ってたよね?経営者だったこともあるんなら、それも意味が繋がる」
青年は呆れたような表情を見せながらも苦笑を浮かべると、ウイスキーを口にする。
「人を見ていることは楽しい。僕は人を見る仕事をしていたんじゃないのかな?例えば……報道関係。もしくは、探偵とか……」
告げると同時にショーティはジンベースのカクテルを飲み干し、軽い笑みを見せる。
「なんて、探偵だったら笑い話にもならないや」
そして、そのまま同じカクテルを頼んだ。
耳に響くジャズが心地よく、青年が身に纏う香りもまたショーティを仄かに包む。
感覚が、不確かになっていた。
気づいたのは、コトンと置かれたグラスの音で、
「ショーティ、これ以上は……」
目の前に置かれたグラスに青年の手が伸びる。
きれいな指先だった。
素直に、触れてみたい、と思ってしまう。
「離れたく……ないな」
脳裏でつぶやいたつもりの言葉が、突然、口からこぼれて声になった。
一瞬の間を置き、動きを止めた青年の表情に、思わず息を飲む。
同姓…なのだ。誘うような言葉、言われた方は引いてしまうではないか。
「あ…」
焦ったように言葉を探すが、出てくるものもなく、
「な、なんてさ、酔ったかなあ」とごまかすように、至って明るく言い放つ。
そして、今ならまだ大丈夫だ、とも思う。
何事もなかったかのように、再会を祈っているよ、と別れれば……あるいは!
いやそんなことよりも!
自分には、運命の相手、がいるのだ。
いるはず…なのだ。
薬指に光るリングを見た瞬間に悟った事実を偽りだなどと思いたくはない。
大丈夫、と言い聞かせるようにつぶやき、グラスから青年へ視線を移したそこで、ショーティはみつめられていることに気づいた。
「……誘って………いるのかい?」
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