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第1章  オーレスト王国編

1章3話  その男、事情を聞く

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「私、"魔王”なのよ!!」



 は!? 俺は思考が止まった。リーネが魔王だって!? あんなに弱かったのに……



 「リーネ、もう一度言ってくれないか?」



 きっと、聞き間違いだ。もう一度言ってもらおう。



 「私、"魔王”なのよ!! ま! お! う!なのよ!! わかった?」



 聞き間違いじゃじゃねえーー!!



 「わかった。リーネは魔王なんだな。うん。わかった」



 魔王ってこんな感じなんだ。美少女だし、こんなに弱いし……

 人間があんなに恐れてた魔王がなぁ……こんなに美少女なんて!! 

 なんか美少女であることにしか頭がいかねえ。どんだけ、頭が動いてねえんだよ、俺は。



 「レオール、失礼なこと考えていたでしょ! さっきから、私の胸に視線を感じるのだけど」



 「カンガエテイマセンヨ。リーネノムネナンテミテナイヨ」



 「嘘つくの下手すぎない。あと、ここに嘘発見の魔導具があるからバレバレよ」



 そうだった!! 嘘発見の魔導具があるの完全に忘れてた!! 俺の言葉に反応して光ってんじゃねえか。

 すげえ、嘘発見の魔導具。



 「とにかくそれは置いておこう。ところで、何でその魔王様がこんなところにいるんだよ?」



 「これから、一緒に旅をする乙女としては置いておけない問題のような気がするのだけど……貴方のさっきの視線……」



 「それは置いておいて!! 俺の質問に答えてくれ!!」



 あれは仕方がなかったんだ。思考が完全にシャットダウンしてしまった男なら、絶対にああなるって!!

 でも、これから旅をするってことはこの美少女と二人で夜を過ごすことになるのか……

 俺も卒業できるんじゃねえか!!



 「まあ、仕方ないわ。私は自分の国から逃げてきたのよ」



 「えーーと……つまり、家臣に裏切られたってことか?」



 「違うの!! 話せば長くなるし、嘘のような話だけど聞いてくれる?」



 「もちろん!! 嘘発見の魔導具もあるんだから、嘘ついてたらわかるしな」



 そう言うと、リーネは少し顔が緩んだ。



 「ありがとうございます。これは、ついこの間の出来事でした……」



 それから、リーネは俺に事情を話してくれた。



 「私はいつものように目が覚め、魔王城の玉座の間で、いつものように家臣に挨拶をしに行ったの。

 そしたら、玉座には私ではない男が座ってて、家臣の魔族たちはその男のことを魔王って言ってたのよ。

 そして、男は家臣たちに言ったの、『我らは人間に戦争を仕掛ける。期間は今から1年。お前たちも準備をしろ』と。

 私は戦争が嫌いなのよ。だから、その男の発言に言い返したわ、『それはダメよ!』と。そしたら、家臣たちは私を侵入者扱いするし、男は私が偽物の魔王だって言うし……

 だから、私は私の寝室に逃げ込んで、部屋ごと転移させたの。

 で、目が覚めたらここにいたって感じね」



 「それで、食料不足で暴れてたのか」



 「違うわ。魔物を殺すより、人を脅した方が楽だし、誰も死なないでしょ! だからよ」



 この魔王がなぜ捨てられたのかわかった気がした。

 魔王なのに殺すことが嫌いなんだな。



 「でも、何で戦争をやめろって言ったんだよ?人間は何回も魔族の領土で暴れただろ」



 「うん。でも、私は人間も獣人も殺したくないのよ」



 「じゃあ、何で仕掛けた人は殺すんだ?」



 「それは私は守るためにしか力を使わないって決めたからよ!! 

 私って、先代魔王の五女だったから、誰も私が魔王になるとは思ってなかったの。だって、魔王は男の人で王族の血をひく人って考えられていたから。

 でも、私が魔王になったわ。もちろん、他の兄様や姉様は私を殺そうと襲いかかってきたわ。だから、殺してしまった。

 その時、私は殺すことが嫌いになった。でも、皆を守るためには敵を殺さないといけない。だから、守るためにしか力を使わないの」



 立派な少女だな。年は俺より2、3歳下だろうに……俺だったら、こんな決意できねえな。



 「すげえな、その年でこんなこと考えるなんて」



 「こんな年? 何を言っている? 今のは200年前の話しよ! 私は今年で100歳よ。魔族の平均寿命は短い人で240年ぐらいで長かったら3000年ぐらいね」



 「じゃあ、お前、ばばあなのかよ。一瞬でも年下だと思った俺、ヤバイな」



 「そうでもないわ。その感覚で正しい。私の体の年齢は20歳ぐらいね。私は魔王の職業ジョブの力で殺した相手の寿命がもらえるから」



 魔王、いいな、ヤバイなそのスキル。賢者もそんなスキルねえかな。っていうか、今度、その祝福ギフト作ろう!!



 「他にも、私は殺した相手を屍兵として、使役できるようになるのよ。だから、死んだ兄様や姉様は屍兵になってるわ」



 「そりゃ、便利だな。じゃあ、殺した人間も皆、そうなのか?」



 「もちろん。歯向かってきた魔族もみんな屍兵よ。殺した魔物もね」



 だから、魔物を狩れないんだな。納得したわ。



 「なら、今回もその男と周りの元家臣も殺したらよかったんじゃねえか?」



 別に、屍兵として自分を守ってくれるなら、いいんじゃねえのか? やっぱりこの魔王、弱いのか?



 「そうね。一度考えたけど、嫌ね。皆が洗脳魔法にかかってることもわかったから。その男だけ倒したかったけど、それは難しいところがあるわ」



 リーネ、魔族の中じゃ強いんだな。じゃあ、魔王を倒しても神のことわかるはずもねえわ。



 「なら、俺も手伝ってやるよ。旅の途中に魔族の国によろうぜ!! 俺もいこうと思ってたし」



 「本当!? 私はそこで別れることになるわよ? それでも手伝ってくれる?」



 「いいぜ。元々、俺の旅は一人だったんだら、元に戻るだけだしな」



 リーナは驚いた顔をしていた。

 そりゃ、神を探す旅は危険が伴う。だから、リーナを無理してついて来させる必要はないからな。



 「そうね。期限は1年。それまでに魔族の国にいくわよ!!」



 「そうだな。なら、魔族の国に隣接してる、帝国に向かわねえとな。なら、明日の朝には出発するぞ」



 「わかったわ。でも、私は魔王よ。その私を圧倒した、貴方の正体も知りたいの。話してくれないかしら?」



 確かに、リーネだけ話して俺が話さないのはダメだよな。



 「俺はな、元々王宮魔導師だったんだけど……」



 俺はリーナに何で旅をするかを話した。



 「レオール、貴方、神を探すつもりなの!?そんなこと不可能よ。それに、貴方が賢者って本当なのね!!」



 「まあな。賢者ってこんなに強くないものなのか?」



 「そりゃそうよ。賢者は勇者や聖女がいてやっと、魔王を倒せるってレベルなのよ! それなのに、一人で私を倒すなんて信じられないわ」



 「そうだったのか。俺は今までの賢者と比べて強かったんだな。知らなかったよ」



 賢者ってそんな感じなんだ。俺みたいに強いのは普通とちがうだしい。

 これも、神に聞かねえとな。絶対、見つけてやるよ!



 このあと、俺たちは魔族や人間たちの流行や伝承の話しをして盛り上がった。

 こんなに、楽しく、人と話したのは何年ぶりだろうか。とにかく、面白かった。



 俺の旅に魔族の国に行くまでではあるが、仲間が加わった。

 俺が少し楽しみにしているのはリーナには言わないでおこう。
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