上 下
120 / 132
契約結婚から想い合う仲へ

契約結婚から想い合う仲へ2

しおりを挟む


「待たせてすまない」

「いいえ、でもどうしてこんな大きなケーキを?」

 ただ単純な疑問を口にしただけのつもりだった、匡介きょうすけさんは普段無口で考えてることがあまり分からないから。思いが通じ合ったからと言って匡介さんが饒舌になるわけじゃない、いまでも本人に聞かなきゃ分からない事ばかりで。

「君に、杏凛あんりにお礼がしたかった。だが俺ではこんなものしか思いつかなくて」

「お礼? いったいなんのですか?」

 私が匡介さんにお礼を言うことはあっても、私がそうされる理由が思いつかない。それもこんな大きなケーキ用意して。
 私がそう訊ねると、匡介さんは私に椅子に座るように促して、自分も私の真正面に腰かけた。

「一年間、俺の傍にいてくれてありがとう。ただそれを杏凛に伝えたくて」

「一年……? え、今日はもしかして」

 そう、一年前のこの日私たちは夫婦になったのだった。匡介さんの言うままに盛大な式を挙げ戸惑いながら彼との暮らしが始まったのだわ。
 私がすっかり忘れてた記念日を、匡介さんはちゃんと覚えててこうしてケーキまで準備してくれたなんて。

「今夜は絶対に杏凛を一人になんてしない、去年と同じような苦しみを君にさせたりしないから」

「匡介さん……」

 そうして二人で食べたケーキは今までで一番甘くて、二人がフォークを置いたその時が甘美な夜の始まりの合図だった。




 私だけがベッドに腰かけた状態で、まだ立ったままの匡介きょうすけさんが屈んでキスをしてくる。いつもは軽く触れるキスばかりなのに、今日は私を味わうかのようなものだった。
 ゆっくりと触れる唇の心地良さにうっとり酔いしれる、そんな私に匡介さんがつつく様に唇をノックしてきたから口を開てみた。私だってそれなりの年齢だし知識くらいはある、だから大丈夫だと思ってたのに……

「んっつ……!」

 するりと口内へと入ってくる彼の舌はヌルリと温かい、匡介さんの舌が私のそれを捕まえいやらしく絡み合う。そうやって私の口内を好き勝手に暴れるからだんだん苦しくなって逃げようとするのに、方に回された匡介さんの腕がそうさせてくれない。
 息が苦しいのに、彼見合う舌の感触は気持ちがいい。そうやってどんどん思考や理性が剥ぎ取られていくようで堪らない。

「ふう、は……っあ、あ……」

 やっと思い切り息が吸えるようになった頃には、私はとろんとした目で匡介さんを見上げることしか出来て無かった。好きな相手との深いキスがこんなに気持ちがいいなんて。
 そんな私をゆっくりと匡介さんがベッドに押し倒していく、私に覆いかぶさるような状態で彼はこんな状態の自分を見下ろしていた。
 その初めて見る匡介さんの色気を帯びた表情に胸がドキンと高鳴る。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】誰にも知られては、いけない私の好きな人。

真守 輪
恋愛
年下の恋人を持つ図書館司書のわたし。 地味でメンヘラなわたしに対して、高校生の恋人は顔も頭もイイが、嫉妬深くて性格と愛情表現が歪みまくっている。 ドSな彼に振り回されるわたしの日常。でも、そんな関係も長くは続かない。わたしたちの関係が、彼の学校に知られた時、わたしは断罪されるから……。 イラスト提供 千里さま

王女の朝の身支度

sleepingangel02
恋愛
政略結婚で愛のない夫婦。夫の国王は,何人もの側室がいて,王女はないがしろ。それどころか,王女担当まで用意する始末。さて,その行方は?

2番目の1番【完】

綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。 騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。 それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。 王女様には私は勝てない。 結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。 ※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです 自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。 批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…

ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました

宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。 ーーそれではお幸せに。 以前書いていたお話です。 投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと… 十話完結で既に書き終えてます。

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

結城芙由奈 
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います <子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。> 両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。 ※ 本編完結済。他視点での話、継続中。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています ※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります

同期の御曹司様は浮気がお嫌い

秋葉なな
恋愛
付き合っている恋人が他の女と結婚して、相手がまさかの妊娠!? 不倫扱いされて会社に居場所がなくなり、ボロボロになった私を助けてくれたのは同期入社の御曹司様。 「君が辛そうなのは見ていられない。俺が守るから、そばで笑ってほしい」 強引に同居が始まって甘やかされています。 人生ボロボロOL × 財閥御曹司 甘い生活に突然元カレ不倫男が現れて心が乱される生活に逆戻り。 「俺と浮気して。二番目の男でもいいから君が欲しい」 表紙イラスト ノーコピーライトガール様 @nocopyrightgirl

結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「結婚したらこっちのもんだ。 絶対に離婚届に判なんて押さないからな」 既婚マウントにキレて勢いで同期の紘希と結婚した純華。 まあ、悪い人ではないし、などと脳天気にかまえていたが。 紘希が我が社の御曹司だと知って、事態は一転! 純華の誰にも言えない事情で、紘希は絶対に結婚してはいけない相手だった。 離婚を申し出るが、紘希は取り合ってくれない。 それどころか紘希に溺愛され、惹かれていく。 このままでは紘希の弱点になる。 わかっているけれど……。 瑞木純華 みずきすみか 28 イベントデザイン部係長 姉御肌で面倒見がいいのが、長所であり弱点 おかげで、いつも多数の仕事を抱えがち 後輩女子からは慕われるが、男性とは縁がない 恋に関しては夢見がち × 矢崎紘希 やざきひろき 28 営業部課長 一般社員に擬態してるが、会長は母方の祖父で次期社長 サバサバした爽やかくん 実体は押しが強くて粘着質 秘密を抱えたまま、あなたを好きになっていいですか……?

処理中です...