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契約結婚から想い合う仲へ
契約結婚から想い合う仲へ2
しおりを挟む「待たせてすまない」
「いいえ、でもどうしてこんな大きなケーキを?」
ただ単純な疑問を口にしただけのつもりだった、匡介さんは普段無口で考えてることがあまり分からないから。思いが通じ合ったからと言って匡介さんが饒舌になるわけじゃない、いまでも本人に聞かなきゃ分からない事ばかりで。
「君に、杏凛にお礼がしたかった。だが俺ではこんなものしか思いつかなくて」
「お礼? いったいなんのですか?」
私が匡介さんにお礼を言うことはあっても、私がそうされる理由が思いつかない。それもこんな大きなケーキ用意して。
私がそう訊ねると、匡介さんは私に椅子に座るように促して、自分も私の真正面に腰かけた。
「一年間、俺の傍にいてくれてありがとう。ただそれを杏凛に伝えたくて」
「一年……? え、今日はもしかして」
そう、一年前のこの日私たちは夫婦になったのだった。匡介さんの言うままに盛大な式を挙げ戸惑いながら彼との暮らしが始まったのだわ。
私がすっかり忘れてた記念日を、匡介さんはちゃんと覚えててこうしてケーキまで準備してくれたなんて。
「今夜は絶対に杏凛を一人になんてしない、去年と同じような苦しみを君にさせたりしないから」
「匡介さん……」
そうして二人で食べたケーキは今までで一番甘くて、二人がフォークを置いたその時が甘美な夜の始まりの合図だった。
私だけがベッドに腰かけた状態で、まだ立ったままの匡介さんが屈んでキスをしてくる。いつもは軽く触れるキスばかりなのに、今日は私を味わうかのようなものだった。
ゆっくりと触れる唇の心地良さにうっとり酔いしれる、そんな私に匡介さんがつつく様に唇をノックしてきたから口を開てみた。私だってそれなりの年齢だし知識くらいはある、だから大丈夫だと思ってたのに……
「んっつ……!」
するりと口内へと入ってくる彼の舌はヌルリと温かい、匡介さんの舌が私のそれを捕まえいやらしく絡み合う。そうやって私の口内を好き勝手に暴れるからだんだん苦しくなって逃げようとするのに、方に回された匡介さんの腕がそうさせてくれない。
息が苦しいのに、彼見合う舌の感触は気持ちがいい。そうやってどんどん思考や理性が剥ぎ取られていくようで堪らない。
「ふう、は……っあ、あ……」
やっと思い切り息が吸えるようになった頃には、私はとろんとした目で匡介さんを見上げることしか出来て無かった。好きな相手との深いキスがこんなに気持ちがいいなんて。
そんな私をゆっくりと匡介さんがベッドに押し倒していく、私に覆いかぶさるような状態で彼はこんな状態の自分を見下ろしていた。
その初めて見る匡介さんの色気を帯びた表情に胸がドキンと高鳴る。
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