桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜

花室 芽苳

文字の大きさ
上 下
116 / 132
契約結婚で隠された愛情に

契約結婚で隠された愛情に4

しおりを挟む


杏凛あんり、どうして君がここに?」

 自分が会社の医務室にいることも分かっていなさそうな匡介きょうすけさん、私はすぐに起き上がろうとする彼をベッドへと押し戻す。まだ休んでいなければ、こんな状態で仕事に戻すわけにはいかない。
 私の行動に匡介さんは驚いた顔をするけど、そんなの構っていられないの。

「倒れたんです、匡介さんは。私は連絡を貰ってここに来た、それだけのことです」

 自分の事より私の事ばかり気遣う匡介さんに、そう言って毛布を綺麗にかけなおす。心配した、そう言えばきっと匡介さんは心配かけないようにもっと無理をするに違いないから。

「そうか、すまなかった。俺はもう大丈夫だから君は月菜つきなさんの所へ……どうしたんだ、その傷は!」

 私を月菜さんの所へ行かせようとする匡介さんにムッとして、居座ってやろうと置いてあるパイプ椅子に腰かけた。そんな私を見た匡介さんが今度こそ勢いよく起き上がる。
 そのままベッドを飛び降りるようにして私に近づいた匡介さんは、私の傷付いた足や汚れたスカートを見てさっき以上に顔を青くした。

「あ、これは……ちょっと急いでて」

「ジッとしてるんだ、すぐに手当てをするから!」

 滅多に怒ったりしない彼が私に強い口調でそう言った。それくらい匡介さんが私を心配してくれてることが、胸の奥をジンとさせる。
 ああ、やっぱり……この人が好き。




「どうしたらこんな怪我をするんだ、俺がついていればこんな事には……」

 そう言って急いで脱脂綿を消毒液で浸して、そっと傷口を撫でていく。彼がどれだけ沁みないように優しく触れているのかが分かって、胸がきゅんとしてしまう。
 私が匡介きょうすけさんに何かしてあげたいのに、結局こうなってしまうのよね。

「沁みないか? 痛かったら言ってくれ」

「大丈夫、痛くないので」

 匡介さんは大きめのガーゼを取り出し傷口を保護すると、その上からネット包帯をはめていく。いくらなんでもこれは……

「大げさじゃないですか? ちょっと転んだくらいの怪我で」

「いいや、後で病院に行って診てもらってくれ。月菜つきなさんにそう頼んでおく」

 まるでこのまま私を帰すような言い方に少し多気カチンとくる。自分は倒れるほど無理をしてるくせに、私に何も心配させてくれないの? 
 もちろんこのまま帰る気なんてない私は……

「それなら匡介さんが病院まで連れて行って下さい。それまでここから動きません」

杏凛あんり……?」

 驚いた顔をする匡介さんだが私は引き下がる気はない、私を病院に行けというのなら匡介さんだって行くべきだわ。そんなわたしから少し距離を取ろうとする匡介さんの腕を掴んで引き止める。

「しかし、俺は仕事に戻らなくては……」

「では終わるまでここで待ちます、それなら文句ないでしょう? でも飛島とびしま君たちがこんな状態の匡介さんに仕事を任せるとは思えませんけど」

 これは何となくそう思って言っただけだけど、きっとそうなんじゃないかしら。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

不埒な社長と熱い一夜を過ごしたら、溺愛沼に堕とされました

加地アヤメ
恋愛
カフェの新規開発を担当する三十歳の真白。仕事は充実しているし、今更恋愛をするのもいろいろと面倒くさい。気付けばすっかり、おひとり様生活を満喫していた。そんなある日、仕事相手のイケメン社長・八子と脳が溶けるような濃密な一夜を経験してしまう。色恋に長けていそうな極上のモテ男とのあり得ない事態に、きっとワンナイトの遊びだろうとサクッと脳内消去するはずが……真摯な告白と容赦ないアプローチで大人の恋に強制参加!? 「俺が本気だってこと、まだ分からない?」不埒で一途なイケメン社長と、恋愛脳退化中の残念OLの蕩けるまじラブ!

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

若社長な旦那様は欲望に正直~新妻が可愛すぎて仕事が手につかない~

雪宮凛
恋愛
「来週からしばらく、在宅ワークをすることになった」 夕食時、突如告げられた夫の言葉に驚く静香。だけど、大好きな旦那様のために、少しでも良い仕事環境を整えようと奮闘する。 そんな健気な妻の姿を目の当たりにした夫の至は、仕事中にも関わらずムラムラしてしまい――。 全3話 ※タグにご注意ください/ムーンライトノベルズより転載

勘違いで別れを告げた日から豹変した婚約者が毎晩迫ってきて困っています

Adria
恋愛
詩音は怪我をして実家の病院に診察に行った時に、婚約者のある噂を耳にした。その噂を聞いて、今まで彼が自分に触れなかった理由に気づく。 意を決して彼を解放してあげるつもりで別れを告げると、その日から穏やかだった彼はいなくなり、執着を剥き出しにしたSな彼になってしまった。 戸惑う反面、毎日激愛を注がれ次第に溺れていく―― イラスト:らぎ様 《エブリスタとムーンにも投稿しています》

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~

菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。 だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。 車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。 あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...