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契約結婚と秘密の交換条件
契約結婚と秘密の交換条件5
しおりを挟むいきなり何を言い出すの? 私が月菜さん達の家にお世話になるなんて、そんなのおかしいでしょう。
それなのに匡介さんの言葉に驚いているのは私だけ、月菜さんも柚瑠木さんもそれが当たり前のように話を聞いているの。
つまり、このことは匡介さんや月菜さん達の中では最初から決まっていたってこと? でもどうしてそんな事を私に黙って……
「そんな、私の事で月菜さんや柚瑠木さんに迷惑はかけられません! それも私に聞かないで勝手に決めてしまうなんて……」
「杏凛に聞いても反対しかしない、分かっているからこうして黙って連れてきたんだ。それに月菜さん達なら君をちゃんと支えてくれるはずだから」
確かに先に聞いていれば絶対に反対したに違いない。でもそれは月菜さん達を巻き込むようなことはしたくないし、時間が経てばいつかは治ると思ってた。
でも匡介さんはそうではなかったらしく……
「家にいても俺の傍にいても事件の事ばかり思い出してしまうんだろう? それなら実家や病院より仲の良い月菜さんの傍が良いだろうと考えていた。彼女たちもそれに賛成してくれている」
「杏凛さん、少しの間でもいいのでこの家で私達と過ごしませんか? ここなら香津美さんもよくいらっしゃいますし」
月菜さんが私の事を心配してそう言ってくれているのは分かるの。でも、今さら匡介さんの傍を離れるなんて私に出来る?
「でも、私は……」
匡介さんと暮らす家にいたい、そう言いかけて止めた。
毎晩毎晩魘されるたびに匡介さんは私の傍にいてくれた、きっと彼はその間まともに寝れてもいなかったでしょう。仕事で忙しいと夜遅く帰っても、水の入ったグラスとタオルを持って私の様子を見てた。
もし私が月菜さんの所にいれば匡介さんの負担は減るかもしれない、彼は自由になれるかもしれない。私さえ、匡介さんの傍にいなければ……
「聞いてくれ杏凛、俺達は君の事を思って……」
「分かりました。私はしばらくの間、月菜さん達のお世話になる事にします。ごめんなさい、柚瑠木さんと月菜さんには迷惑をかけてしまうけれど」
二人に対して申し訳ない気持ちはあった、それでも私は少しでも匡介さんを自分から解放するべきだと思ったの。だって私は匡介さんの何の役にも立てず、重荷にしかなっていない。
だから……
「でも、匡介さんに一つだけお願いがあるんです」
最後になるかもしれない、我儘を言わせてもらって良いですか? 本心じゃない、でも私に出来る事ってこれくらいしかありませんから。
「なんだ?」
「この家にお世話になるのは二週間まで、それまでに私の状態が改善されなければ……私を実家に帰してください。私達を結ぶこの契約を終わりにして……」
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