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契約結婚と秘密の交換条件
契約結婚と秘密の交換条件4
しおりを挟む「ここって……」
連れて来られたのは何度か訪れたことのある場所、その煌びやかなレジデンスの玄関ホールで見慣れた人が私たちが中へと来るのを待っている。
月菜さんとその夫である二階堂 柚瑠木さん。こんな深夜にどうして二人が……
「もしかしてさっきの電話の相手は柚瑠木さんだったのですか?」
仕事などで匡介さんは二階堂 柚瑠木さんとある程度の付き合いがある。それは知っていたけれど、こんな真夜中に彼らに会いに来た理由はいったい?
だけど私の質問に匡介さんは小さく首を振ってみせた。ならば彼の電話の相手は月菜さんということになる、なおさら訳が分からなくなった。
匡介さんは自分が先に車から降りると私に向かって手を伸ばしてきた。その手に摑まり車から出るとすぐに玄関ホールにいた月菜さんがこちらに向かってくる。
少し心配そうな彼女を見て、私はちょっとだけホッとしたような気がした。それでもいつものように月菜さんと挨拶をしていると、匡介さんが車のトランクを開け大きなスーツケースを取り出して柚瑠木さんに渡していた。
「匡介さん、アレって……?」
「それについては後で話す、ここにいては身体も冷えるし一度部屋に上がらせてもらって良いだろうか?」
そう言った匡介さんに柚瑠木さんと月菜さんは頷き、私達はレジデンスの中へ。深夜のためか静かな建物の中には私たちの足音だけが響いていた。
「ハーブティーです、温かな飲み物でリラックス出来るといいんですが」
そう言って月菜さんは素敵な香りのお茶とお菓子を用意してくれた。私と匡介さんは並んで座って柚瑠木さんと月菜さんが仲睦まじく話している様子を眺めていた。
……私も本当はこういう風に匡介さんとなりたかったのかもしれない。同じ契約結婚でも私たちの距離は縮まる事は無かった、きっとこれから先も。
「こんな夜中にすまなかった、だが……」
「分かってます、私達は何時でも大丈夫なように準備していましたし。約束通り私と柚瑠木さんで杏凛さんの事はしっかりサポートさせて頂きます」
サポート? 私の事を月菜さんと柚瑠木さんが? いったい何の話か分からず、匡介さんを見上げる。彼はいったい私の何を月菜さん達に頼んだというの?
「ああ、無理な頼みをしてすまない。だが杏凛を任せられるのはもう君たちくらいしか……」
「ちょっと待ってください、匡介さん! これはいったい何の話なんですか?」
何かがおかしい、そう思ってよく考えた。匡介さんは私に実家に帰るかを聞いてきたし、入院したいかとも問われた。断って連れて来られたのはここ、そしてあの大きなスーツケース。
「今夜から杏凛にはこの家で暮らしてもらう、君はしばらくあの家や俺から離れた方が良い」
「なっ……!」
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