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契約結婚で隠した過去には
契約結婚で隠した過去には6
しおりを挟むいつもまでも自分たちを責める両親には申し訳ないと思いながら、話の続きを頼んだ。大事なのは誰の責任かという事ではなく、その日に何が起こりどうやって解決したのかだと考えたから。
自分の事なのに私自身がそのことを憶えてないことが悔しいという気持ちもあった。両親はこんなに苦しんでいたというのに……
「それは分からない。郁人君と杏凛の間にその時間何があったのか……彼は何もなかったとしか話さなかったし、お前は気絶していて目覚めた時にはその事件の記憶を失っていた」
「その時には私は気を失って……じゃあお父さん達が監禁されていた私を助けてくれたの? 監禁されてどれくらいで私は助けてもらうことが出来たの」
その後の郁人君の事も気になったが、私がどれくらいの時間監禁されどうやって助け出されたのかもちゃんと知りたかった。助けてくれたのが両親でないなら、その人に話を聞くという手もある。
そう考えていたのだけれど……
「お前が監禁されていたのはそう長い時間じゃない、半日程度だった。彼が……匡介君が必死で杏凛の事を探してくれたから」
「匡介さん? なぜそこで匡介さんが……?」
私が高校生の頃には家同士の付き合いがあってもお互いに話すことも顔を合わせることも殆どなかった。その頃には匡介さんは随分大人っぽいくなり違う世界の人のように見えていたから。
だからそこで匡介さんの名前が出る理由が分からなかった。
「郁人君の異変に気付き、杏凛を一番に見つけて助け出したのが匡介君だからだ」
「そんな……匡介さんが、私の事を……?」
だって匡介さんはそんなの一言も言わなかったし、態度にだって出さなかった。記憶がない時期の後だって彼は必要以上に私に関わることもなく、私を見つめる鋭い視線だけはいつも通りだった。
匡介さんが私に契約結婚を提案するまで……いいえ、結婚してからも彼は何の変化も見せなかったのに。
「そうだ。匡介君が私たちに協力してくれて、鏡谷家の力も借りてお前を探し出してくれたんだ。彼がお前や郁人君の事に気付いてくれてなければ、あんなに早く助け出せなかっただろう」
そう言えばいつからか、両親が匡介さんと話すことが増えたような気はしていた。匡介さんが苦手だった私はいつも離れた場所にいて、ただ眺めているだけだったけれど。
それでも彼との結婚を両親が反対しなかったのは、そういう理由があったからなのかもしれない。
「私を監禁したのが優しかった郁人君で、そんな私を助けたのが匡介さんだった……? あの日、あの雷雨の日に私は……っつ!」
「杏凛!?」
何かが思い出せそうな気がしたと同時に、頭がズキンと痛む。頭の中に擦れた映像のように浮かぶのは、窓の外に見える激しい雨と稲光。
……そう、あの日はとてもひどい雷雨で校門で迎えの車を待つはずだった。
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