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契約結婚が大きく変わる時
契約結婚が大きく変わる時6
しおりを挟む「杏凛様! ほら、ボーっとしてないで家に入ってください。昨日倒れたっていうのにそんな所に立っていられたら困ります!」
いつの間にか私の傍に来ていた寧々が、少し怒った様子で私を引っ張って家の中へと連れて行く。いつもならまだ出勤時間ではないはずなのに、わざわざ早く来てくれたのだろうか?
「寧々、貴女どうして?」
「旦那様から杏凛様が倒れたと聞きましたんで、少し心配になっただけです。これでも貴女の専属になってそれなりに長いんで……」
寧々は私が実家で暮らしていたころから面倒を見てくれている、そんな彼女だからこんな時は本気で心配して傍に居ようとしてくれるんだわ。
「匡介さんの代わりに寧々が傍にいてくれるのね、心強いわ」
「そ、そんなの旦那様に頼まれなくても当たり前です! 杏凛様は私にとって可愛い妹のようなものなんですから」
普段余裕そうな寧々がテレているのか顔を赤くして話す。そんな様子がちょっとおかしくて「ふふふ」と笑ってしまった。
それに妹だなんて、ちょっと特別な存在になれたみたいで嬉しいもの。
「妹みたい、ね。寧々みたいなしっかりしたお姉さんが居てくれれば安心だわ」
「そうですよ、お姉ちゃんだと思って少しは私にも甘えて良いんです」
小さな声で「旦那様ばかりじゃなくて」と聞こえたのは内緒にしておきましょう。今日の寧々は何だか可愛くて、ギスギスしていた気持ちが少し楽になっていった。
「このまま部屋で休みますか? それとも軽く朝食でも……?」
寧々は私をひとまずリビングのソファーへと座らせてそう聞いてきた。彼女はまだ心配そうにしているが、体調には何の問題もない。
それならば、と思って……
「大丈夫よ、もう心配いらないわ。それよりもパンを買ってきたし、これを使って一緒に朝食を作りましょう? 寧々も朝ご飯を食べずに来てくれたみたいだし」
そう言った瞬間、寧々のお腹がグウッと鳴って彼女は慌ててお腹を手で押さえている。そんな仕草に思わず笑ってしまうと、寧々が拗ねたような顔をして。
「こ、これはダイエットなんです! 別に杏凛様が心配で飛んできたわけじゃ……」
少しツンデレな寧々はこういう時、とっても可愛くなる。そんな寧々の頭には普段しっかりしている彼女らしくない、ピンとした寝ぐせがついていたりする。
「そうなの? でもお腹がすいていてはきちんとした仕事が出来ないわ、一緒に食べましょう」
そう返せば寧々はもう反抗できないようで、私からパンの袋を受け取りさっさとキッチンへと行ってしまう。私も一度自室に戻り着替えを済ませて、寧々の待つキッチンへと向かう。
食事の後にでも寧々に昨日の事を話して、気になっている天然石の事について何か知らないかを聞いてみようと思いながら。
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