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契約結婚が大きく変わる時

契約結婚が大きく変わる時

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 昨日の事があり私たちの関係も大きく変化したのではないか?
 そう期待に胸を膨らせていたが、匡介きょうすけさんの私に対する態度は以前と何の変化もないままで。簡単に夫婦の在り方を変えるのは難しいのだと実感した。
 
 匡介さんが出社し、いつものように家事を進めていく寧々ねねにちょっと不満を漏らしてみたりして。

「奥様って意外と欲張りなんですね、まあ箱入りで大事にされてきたので分からないではないですけど」

「欲張り? 本当に欲張りなの、私は? 昨日、匡介さんにも同じことを言われたの」

 呆れたような顔をしている寧々を問い詰めると、あっさり「そうですね」と言われてしまった。まさか、そんな自分が欲深い妻だったなんて……

「だってよく考えてみてください。旦那様が一生懸命に杏凛あんり様の望みを叶えようと努力してるのに、そうやっていつもと変化がないと文句を言って」

「ええ? でも私だってもっと夫婦らしい毎日を……」

 ベタベタしたいとまでは言わないが、少しくらいは優しく微笑んでくれたり私も微笑み返したり。そんな事を考えていた。

「想像してください、杏凛様。目の前には朝から意味もなく満面の笑顔の旦那様がいる、本当にそれで貴女は心が落ち着きますか?」

 言われて想像すると、自分が思っていたのよりだいぶ違和感のある光景だった。自分が思い描いていたものとは違うが、寧々の言う通り落ち着けるかと言われるとNOだ。

「ちょっと、これじゃない気がしてきたわ。寧々の言う通りかも」

「そうでしょう? そんな事旦那さんにも出来るわけないんです、無理な事を望みすぎなんですよ杏凛様は」

 ……本当にそうなのかしら? いいえ、寧々が言うのならやはりそうなんでしょうね。




 考えてみれば私には理想の夫婦像があって、自分を変える努力をあまりせずに匡介きょうすけさんだけに変わってもらおうとしてるのかもしれない。
 無口で奥手な彼が私の前ではたくさん話し、色んな行動で表しているのは分かってるのに。

「じゃあ私はこれからどうすればいいの? 何を言っても匡介さんを困らせてるみたいだし……」

 パッと見意図なしいと言われがちな私だが、前に匡介さんが言っていた通り意外と行動力がある。
 自分の病気の事もあり無理はしないようにしているが、一度こうしなきゃと思ったらもう止まらなくなってしまう。

「我儘言うのが怖ければ行動で示せばいいんです、例えば……杏凛あんり様から旦那様に瞳を閉じてキスを強請ってみる、とか?」

「き、キスですって!? なんてことを言うのよ、寧々ねね! そんな事をあの人相手に出来るわけがないでしょう!」

 顔に火がついたような熱さを感じて、普段出さないような大声で寧々の提案を却下する。やっと昨日夫婦として抱きしめ合えたばかりなのだ、口付けなんて早すぎるわ!
 ジロリとにらんで見せても寧々は気にもせず、洗濯物を畳みながら話を続けた。

「喜ぶと思いますけどね、旦那様は。それが駄目なら……プレゼントなんてどうです?」

「……なるほど、それは良い考えかもしれないわね」

 結婚する前、結婚してからと私は何度か匡介さんからプレゼントをもらっている。小さなアクセサリーや綺麗な貝の瓶など。大切に机の引き出しに取っておいている。
 お返しにちょっとしたお菓子くらいは渡していたが、私からプレゼントを贈ったことはない。

「ありがとう、寧々。プレゼントを選ぶときは付いて来てくれる?」

「ええ、もちろんですよ。旦那様が驚くようなものを選びましょうね」

 そんな話で大いに盛り上がって、いつも通り寧々は仕事を終えて帰って行った。


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