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契約結婚に希望を見つけて
契約結婚に希望を見つけて6
しおりを挟むちょっとだけ悪戯が成功したような笑みを見せて、馬場さんは私からパスケースを取り上げる。確かにこんな秘密を勝手に教えたとバレたら、馬場さんが匡介さんに怒られてしまうかも……
私はコクコクと頷いて、この事を匡介さんに問い詰めないと約束した。けれどこのパスケースの話をせずに、どうやって匡介さんの気持ちを確かめればいいのか分からない。
「馬場さんなら相手の気持ちを確かめたいとき、どんな方法を使いますか? 私、この年でちゃんとした恋愛経験が無くて……」
「そんなの直球よ? 私のこと好き、ってハッキリ聞いちゃうわね」
どうやら馬場さんは恋愛もスパッとしているみたい、私みたいにいつまでもウジウジしたりはしないのでしょうね。自分に自信が無いからいつも遠回しな言葉で相手の反応ばかり気にしてる、そういう自分は嫌いなのに。
「ほーら、ちょうど匡介も戻ってきてるわ。この話はまたゆっくり二人の時にしてみるのね」
「……はい」
馬場さんがそう言ってすぐに扉が開き、匡介さんが室内へと入ってくる。さっきのパスケースの写真を見たせいか少し緊張してしまう。
「おかえり、頼んでいたものは見つかった?」
「ああ、これでいいんだろう? 杏凛に余計な事を吹き込んだりしてないだろうな」
匡介さんは片手で持っていた紙袋を馬場さんに渡した後、ゆっくりと私の隣へと移動してくる。彼にとってそれが当たり前の立ち位置だと言うように。
「まさか、少しだけ女同士の他愛ない話をしていただけよ。それとも何、匡介には杏凛さんに話されて困るような何かがあるのかしら?」
匡介さんの言葉に馬場さんは決して怯んだりしない、それどころか余裕で彼に言い返している。私ではこんな風に匡介さんと会話出来ないのに、彼と軽口を叩ける馬場さんが少しだけ羨ましく感じてしまう。
「そんなわけないだろ、そうやって誤解を生むような言い方をするのは止めろ」
「はいはーい。まあ、二人とも座ってインコの赤ちゃんでも見ててよ、私はお茶の用意をしてくるから」
匡介さんからの説教などゴメンだと言うように、さっさと部屋から出て行ってしまう馬場さん。その彼女がチラリと私を見て微笑んだのは、私に頑張れと言っているのかもしれない。
「全く、アイツはいつもこうなんだ。もしかして杏凛が困るようなことを言ったりしなかったか?」
ソファーに私を座らせ、その隣に腰かけた匡介さんは大きなため息をついている。どうやら彼はいつも馬場さんに振り回されてしまっているのでしょうね。
けれど馬場さんのおかげで、私はほんの少しだけどこれからの自分たちの関係に希望を見つけれそうなの。
「いいえ、馬場さんは私のことを考えて話をしてくれました。とても素敵な女性だと思います」
「そうか……アイツが?」
匡介さんは不思議そうにしていたが、それでいいのだと思う。きっと馬場さんも彼に本当の彼女の優しさを知られるのはテレくさいと思っているでしょうから。
「それより匡介さん、私は貴方にハッキリと聞いておきたい事があって……」
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