桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜

花室 芽苳

文字の大きさ
上 下
58 / 132
契約結婚に希望を見つけて

契約結婚に希望を見つけて6

しおりを挟む


 ちょっとだけ悪戯が成功したような笑みを見せて、馬場ばばさんは私からパスケースを取り上げる。確かにこんな秘密を勝手に教えたとバレたら、馬場さんが匡介きょうすけさんに怒られてしまうかも……
 私はコクコクと頷いて、この事を匡介さんに問い詰めないと約束した。けれどこのパスケースの話をせずに、どうやって匡介さんの気持ちを確かめればいいのか分からない。

「馬場さんなら相手の気持ちを確かめたいとき、どんな方法を使いますか? 私、この年でちゃんとした恋愛経験が無くて……」

「そんなの直球よ? 私のこと好き、ってハッキリ聞いちゃうわね」

 どうやら馬場さんは恋愛もスパッとしているみたい、私みたいにいつまでもウジウジしたりはしないのでしょうね。自分に自信が無いからいつも遠回しな言葉で相手の反応ばかり気にしてる、そういう自分は嫌いなのに。

「ほーら、ちょうど匡介も戻ってきてるわ。この話はまたゆっくり二人の時にしてみるのね」

「……はい」

 馬場さんがそう言ってすぐに扉が開き、匡介さんが室内へと入ってくる。さっきのパスケースの写真を見たせいか少し緊張してしまう。

「おかえり、頼んでいたものは見つかった?」

「ああ、これでいいんだろう? 杏凛あんりに余計な事を吹き込んだりしてないだろうな」

 匡介さんは片手で持っていた紙袋を馬場さんに渡した後、ゆっくりと私の隣へと移動してくる。彼にとってそれが当たり前の立ち位置だと言うように。




「まさか、少しだけ女同士の他愛ない話をしていただけよ。それとも何、匡介きょうすけには杏凛あんりさんに話されて困るような何かがあるのかしら?」

 匡介さんの言葉に馬場ばばさんは決して怯んだりしない、それどころか余裕で彼に言い返している。私ではこんな風に匡介さんと会話出来ないのに、彼と軽口を叩ける馬場さんが少しだけ羨ましく感じてしまう。

「そんなわけないだろ、そうやって誤解を生むような言い方をするのは止めろ」

「はいはーい。まあ、二人とも座ってインコの赤ちゃんでも見ててよ、私はお茶の用意をしてくるから」

 匡介さんからの説教などゴメンだと言うように、さっさと部屋から出て行ってしまう馬場さん。その彼女がチラリと私を見て微笑んだのは、私に頑張れと言っているのかもしれない。

「全く、アイツはいつもこうなんだ。もしかして杏凛が困るようなことを言ったりしなかったか?」

 ソファーに私を座らせ、その隣に腰かけた匡介さんは大きなため息をついている。どうやら彼はいつも馬場さんに振り回されてしまっているのでしょうね。
 けれど馬場さんのおかげで、私はほんの少しだけどこれからの自分たちの関係に希望を見つけれそうなの。

「いいえ、馬場さんは私のことを考えて話をしてくれました。とても素敵な女性だと思います」

「そうか……アイツが?」

 匡介さんは不思議そうにしていたが、それでいいのだと思う。きっと馬場さんも彼に本当の彼女の優しさを知られるのはテレくさいと思っているでしょうから。

「それより匡介さん、私は貴方にハッキリと聞いておきたい事があって……」


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

知らずに双子パパになっていた御曹司社長は、愛する妻子を溺愛したい

及川 桜
恋愛
児童養護施設の学習ボランティアにとんでもない男が入ってきた!? 眉目秀麗、高学歴、おまけに財閥御曹司。 不愛想でいけすかない奴だと思っていたのに、どんどん惹かれていって・・・ 子どもができたことは彼には内緒。 誰よりも大切なあなたの将来のために。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

不埒な社長と熱い一夜を過ごしたら、溺愛沼に堕とされました

加地アヤメ
恋愛
カフェの新規開発を担当する三十歳の真白。仕事は充実しているし、今更恋愛をするのもいろいろと面倒くさい。気付けばすっかり、おひとり様生活を満喫していた。そんなある日、仕事相手のイケメン社長・八子と脳が溶けるような濃密な一夜を経験してしまう。色恋に長けていそうな極上のモテ男とのあり得ない事態に、きっとワンナイトの遊びだろうとサクッと脳内消去するはずが……真摯な告白と容赦ないアプローチで大人の恋に強制参加!? 「俺が本気だってこと、まだ分からない?」不埒で一途なイケメン社長と、恋愛脳退化中の残念OLの蕩けるまじラブ!

元彼にハメ婚させられちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
元彼にハメ婚させられちゃいました

優しい愛に包まれて~イケメンとの同居生活はドキドキの連続です~

けいこ
恋愛
人生に疲れ、自暴自棄になり、私はいろんなことから逃げていた。 してはいけないことをしてしまった自分を恥ながらも、この関係を断ち切れないままでいた。 そんな私に、ひょんなことから同居生活を始めた個性的なイケメン男子達が、それぞれに甘く優しく、大人の女の恋心をくすぐるような言葉をかけてくる… ピアノが得意で大企業の御曹司、山崎祥太君、24歳。 有名大学に通い医師を目指してる、神田文都君、23歳。 美大生で画家志望の、望月颯君、21歳。 真っ直ぐで素直なみんなとの関わりの中で、ひどく冷め切った心が、ゆっくり溶けていくのがわかった。 家族、同居の女子達ともいろいろあって、大きく揺れ動く気持ちに戸惑いを隠せない。 こんな私でもやり直せるの? 幸せを願っても…いいの? 動き出す私の未来には、いったい何が待ち受けているの?

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

【完結】誰にも知られては、いけない私の好きな人。

真守 輪
恋愛
年下の恋人を持つ図書館司書のわたし。 地味でメンヘラなわたしに対して、高校生の恋人は顔も頭もイイが、嫉妬深くて性格と愛情表現が歪みまくっている。 ドSな彼に振り回されるわたしの日常。でも、そんな関係も長くは続かない。わたしたちの関係が、彼の学校に知られた時、わたしは断罪されるから……。 イラスト提供 千里さま

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

処理中です...