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契約結婚を前向きに考えて
契約結婚を前向きに考えて2
しおりを挟む「ええ、そうでしょう。私もいつかこの二人のような夫婦関係を築けたらと思って……いえ、何でもありません」
余計な事を言ってしまったのかもしれない、未来のない自分らの結婚にそんな事を望まれてもきっと匡介さんも困るはず。
そんな事も考えず、つい私の理想ばかりを押し付けてしまって……
「杏凛、君は……」
「本当にごめんなさい、聞かなかったことにしてもえらえませんか?」
驚いた様子の匡介さん。彼の負担になるような発言はしないようにするつもりだったのに、うっかり漏らした本音をしっかりと聞かれてしまっていた。
「それは出来ない。杏凛、君が望むのならば俺は……」
匡介さんが手を伸ばし私の手のひらをを掴んむ、そのまま真剣な表情で何かを言いかけたその時。
「はーい、杏凛ちゃん一押しの激辛冷麺お待たせしました!」
私たちの気まずい空気を遠慮なく壊し、笑顔のままテーブルに冷麺を並べる奥さん。彼女のこういうところも憎めないから不思議なのだけど。
そんな奥さんがジロジロと匡介さんに握られたままの手を見つめてニヤついてる。焦って匡介さんから自分の手を取り戻したが、奥さんは「ごゆっくり~」と楽しそうに店長に話に行ってしまった。
昔からの知り合いにこんなところを見られて、恥ずかしいの照れ臭いのかよく分からないまま匡介さんの様子を窺った。
「杏凛のおすすめなのか、この激辛冷麺は。それにしても、意外だったな……」
「意外なのはこのメニューだけですか? この店の外観や雰囲気などには匡介さんは少しも驚かないの?」
私がこの店に誰かを連れて来れば、杏凛のイメージではない。貴女には似合わないから別の店にしなさいと言われてきた。私は自分の好きな店を食べ物を選んでいるだけなのに。
「……何故だ? こんないい店なんだ、君が俺をそんな特別な場所に連れてきてくれた事に驚いている」
匡介さんは嘘をついたりしない、適当に誤魔化せばいいことでもそんな事は出来ない人。あの夜の事もきちんと話してはくれないままだけど、私を騙そうとしたりはしなかった。
だから、これもきっと彼の本音なのでしょうけれど……その驚いている理由がそんな事だなんて。
「別に特別な理由なんてありません、たまたまこの店の激辛冷麺が食べたくなっただけで」
「ああ、分かってる。それでも俺は……杏凛が自分の事を教えてくれたことが嬉しいんだ」
本当に喜んでいるのかちっとも分からない相変わらずの強面なのに、その言葉は私の心をじわじわと温かくしていく。分かってる、匡介さんがそう思ってくれている事が私だって嬉しいのだと。
だからと言って素直に今の気持ちを匡介さんに伝える事は出来なくて……
「えっと……食べましょう。本当にここの冷麺は美味しいので」
「ああ、そうだな」
そのまま激辛冷麺を涼しげな顔で食べ終える匡介さんに驚きながら、私も久しぶりのこの店の看板メニューを十分味わったのだった。
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