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契約結婚から新しい挑戦を
契約結婚から新しい挑戦を4
しおりを挟む「そんなものは君がこの料理教室に通いたいと言った時から、調整し今日の分まで片付けておいたから問題ない」
そんなに前からついて行く気だったのならなぜ黙っていたんです? 匡介さんが訳の分からないところでもの凄い過保護さを発揮するのはいったい何故なの。
仕事の時は使用人の寧々に相手をさせて、毎日夜遅くまで放ったらかしのくせに!
ふと考えてみると、これでは自分が相手をされずに拗ねてるみたいに思えて……そんなはずは無いと今の考えを無かった事にする。
「私は匡介さんにそんなこと頼んでないですよね、そういう無理をするから余計に家に帰ってくるのが遅くなるんです!」
そんな事を考えて無理されたって私はちっとも嬉しくなんかないんです。それよりももっとその身体をいたわって欲しいと思う事は、契約妻の私には許されないの?
私もこんな性格だから、匡介さんに対してそんな優しい言い方も出来なくて……それに匡介さんも全然私の言う事を聞こうとはしてくれない。
「俺の事は気にしなくてもいいと、いつも言っているだろう?俺は杏凛の為ならば――――」
「そこまで気を使って頂かなくていいと言っているんです、期間限定の契約妻の私なんかに!」
そんな風に匡介さんが私に色々してくれても、こちらからは何も返すことが出来ない。契約という形の結婚をしているのに、私が彼に差し出しているのはこの三年間という時間だけ。
そのまま言い逃げのように私は【契約妻】という言葉を強調すると、急いで料理教室への階段を上って行った。
ですが、当然という顔をして匡介さんも私の後ろから階段を上ってきます。私はそのまま奥へと進み料理教室の扉の前でもう一度振り向いて言いました。
過保護なのはもう十分なんです、これ以上は彼にもついてくる理由は無いはずですから。
「……だからっ、ここまで着いてこなくても大丈夫です。私は小さな子供ではないんですよ!?」
それだけを伝えると、少し乱暴だとは思いながらも匡介さんの大きな背中をぐいぐいと押して帰らせようとしました。ですが、身長が190㎝を超えるガッチリとした体型の彼が普段運動をしていない私に動かせる訳もなく……
「夫の俺が君の心配をするのがそんなに迷惑か? この日のために残業まで調整してきたのに」
迷惑とか迷惑じゃないという問題なのでしょうか? いえ、やはり迷惑のような気もします。
どうして残業を調整するのがこの日の為なんでしょうか? 私の為を思うのならもっと別の日だっていいはずです。
「そういう事じゃなくて、私は自分で出来る事を探したいと言ったはずです。それなのに匡介さんがここまでついて来てしまっては意味が無いんです!」
今のままでは自分が一人で何もできない人間になったよう感じる、そういう気持ちは何でも出来る匡介さんには分からないでしょうね。
もう少し自分に自信が持てるように、何かを始めたい。そのためには傍で匡介さんが助けようしてくれていては意味がない。
「だから、俺は君が大丈夫だと分かれば……」
それはどれくらいで分かるのですか? そう言って結婚してから匡介さんは私を一人で行動させようとしないじゃないですか。
そう言い返そうとしたその時……
「あなた達は何を騒いでいるんですか?確か今日から新しく入会された鏡谷さんですよね」
後ろから声をかけてきた男性には見覚えがあって……ああ、この人は確か寧々の幼馴染の料理講師のはず。
「確か入会するのは奥様の杏凛さんだけと聞いてますが。旦那さんはどうしてここに……?」
どうやら寧々から話を聞いていたようで、講師の男性は匡介さんを見て少しだけ眉を寄せた。
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