桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜

花室 芽苳

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契約結婚から新しい挑戦を

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寧々ねね、このチラシはどうしたの?」

 いつものように朝早く家にやってきた寧々が、テーブルの上に一枚のチラシを置いたのを見て聞いてみる。
 カラフルなチラシにはおいしそうな料理と、エプロン姿のハンサムな男性。

「ああ、実はその料理教室が生徒さんを募集しているそうなんです。その写真の料理講師が私の幼馴染でして……まあ、勧誘を頼まれたって感じで」

「まあ、寧々に頼みごとが出来る男性がいたなんて。もしかして二人は特別な間柄だったり……?」

 自分の色恋関係の話は苦手だが、人のことの場合は話が別でワクワクドキドキして聞きたくなってしまう。私は椅子から立ち上がり、チラシを持ったまま寧々に詰め寄っていく。

「奥様、他人事だと思って興味津々じゃないですか! それは……その察してくださいよ」

「ええ? 本当にそうなの!? このイケメン料理男子の事を寧々が……」

 私の言葉に顔を真っ赤にしてキッチンの端に逃げ込んでしまった寧々、そんな恥ずかしがる姿も普段の彼女からは想像出来ない可愛らしいものだった。

「もう止めて下さい、杏凛あんり様。普段恋愛には興味ありませんって顔をしてるのに、人の恋愛ごとに関してだけ鋭いなんて迷惑ですー!」

「だって、気になるんだもの。あら、でも寧々はずっと愛しい恋人と暮らしているって言ってなかった?」

 ふと思い出した、私は今まで何度も寧々に家で待つ大切な人がいるのだと聞いた事があったことを。




「もう、奥様にだけ話すんですからね! 旦那さまや他の方には内緒ですよ?」

 そう言って寧々ねねが取り出したスマホの画面には、真っ白な可愛らしいうさぎちゃん。柔らかそうな毛並みを思いきりモフモフしたくなる。

「この子が私の愛しい恋人、雪兎ユキトです。今までずっと杏凛あんり様が誤解してるのを見て楽しんでたのに……」

「そんな楽しみ方は止めて。それにしても本当に可愛いわね、実家では両親が私の事を気にしてペットは飼わなかったから羨ましい」

 動物が嫌いなわけじゃない、だけど病気の事を気にするあまり両親も神経質になってしまっていて。もっと落ち着いたら、と思っているうちに結婚することになったから……

「別にここでも旦那様に頼めばいいんじゃないですか?」

「……無理よ、言えないわ。三年で離婚するのにペットを飼いたいだなんて」

 その時に、どちらかがペットとお別れしなきゃいけなくなる。匡介きょうすけさんはああ見えて優しい人だからきっと悲しむでしょうし。
 想像したら何だか切なくなって、落ち込んでしまいそうになる。

「……それじゃあ、何か新しい事にでもチャレンジしてみませんか? ほら、このイケメン講師のいる料理教室なんてオススメですよ」

 明るい声でさっきのチラシを私に見せる寧々、彼女のこういう優しさにいつも励まされてる。

「それって幼馴染の彼に頼まれたんでしょう? そりゃあ、行きたい気持ちも少しはあるけど……」

 この家に閉じこもってばかりではいけないとは思ってて、外に出る機会を増やしたいのは本音だった。だけど、それを匡介さんが許してくれるかしら……?


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