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第2章。人族の国へ
娼館プジー①
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川の街ラプラは、水上交通の要所として様々な物だけじゃなく人も多く集まる活気ある街。
表通りは道幅も広く、多くの人が行き交う。沿道に建ち並ぶ店は雨にも関わらず人々で混雑していた。
そんな表通りから細い道へ進むと、雰囲気はがらりと変わり。すでに酔っている男性や妖艶な姿の女性達が目につくようになる。
ぎゅっとマルクさんの手を強く握り下を向きながら歩いた。
「多少高くなっても、普通の宿屋へ行くか?」
頭上からマルクさんが声をかけてくれたが、
「大丈夫。移動ばかりであまり薬も売れなかったし、お金は大切に使わなきゃ」
雨も降り、ぐっしょり濡れたフードで顔を隠しながらマルクさんに引かれるまま歩を進めた。
「ここよ。ずぶ濡れのあんた達はまず風呂へ行きなさい」
イナルさんの声に顔を上げると、周りの店より一際大きい店。数段上にある黒い両開きの扉の前に男性二人が立ち、貴族屋敷のような建物は高級宿屋と言われても納得する。
「これは、これは。フォフォフォ。良い酒がありそうじゃの」
ショワン爺さんは臆する事無くイナルさんの後へ続き、私もマルクさんに手を引かれながら、ぼーっと建物を見上げていた。
「イナル様、また変なの拾ってきましたね」
「私が連れて来た客に文句あるの? さっさと開けてカナとナナを呼んでちょうだい」
恭しく扉を開けた男性。中はきらびやかなシャンデリアがあり真っ赤な絨毯が敷き詰められ、中央には螺旋階段。美しい女性達は男性と談笑していたり、階段を登る男女の後ろ姿。まるで物語にある一場面のようで身体がぴくりとも動かない。
安くしてくれるって言われても、これはかなり高級店よね。どうしよう、足りなかったらこの店で雇ってくれるかな?
「ママ! ふらっと出て行ったと思ったら、また変なの拾ってきたの?」
「フフ。ママは相変わらずね」
ツンとした美少女と、ふわりと笑う美少女がイナルさんへ歩み寄った。
「ナナは、この素敵なお爺さんと無愛想なコイツを風呂へ案内して、着替えを準備なさい。部屋はカタバミね」
「はいママ。ではこちらへ」
ふわりと笑っていた美少女がナナさんと言うらしい。ショワン爺さんとマルクさんを案内しようとしたが、
「おい、まさかルナを拐かすつもりじゃないだろうな。俺らと離して何をするつもりだ」
マルクさんがイナルさんへ詰め寄り、今にも剣に手を掛けそうで慌ててマルクさんの手を止めると。
「あんた、この子を男達が入る風呂へ入れるつもりかい? そうなら私が黙っちゃいないよ!」
「私! タオルさえ借りられれば大丈夫です! だから」
「ルナ。私はあんたの味方さ。もしこの唐変木と離れたいなら私が力になるよ」
私の肩を掴みマルクさんから離して自分の胸に抱き込む。
「そ、そんなつもりは! それにルナは俺の大切な人だ。お前にとやかく言われる筋合いは無い!」
「ママー、私この子を連れて行けば良いの?」
緊迫した雰囲気の中。普通に話すのはツンとした美少女。
「ああ、カナはルナを風呂場へ連れて行け。着替えは誰かのを貸してやるんだよ。ああ、それと終わったら私の部屋へ連れて来な」
「はーい。じゃあ行くよ」
マルクさんの目の前に立ちはだかるイナルさん、私はカナと呼ばれた美少女に手を引かれるが、
「マルクさんは良い人よ。やはり私が行って…」
「あー、大丈夫よ。ママなら下手な男より強いし、本当に危ない奴なら店へ入れないから」
興味無さげに話すカナさんに連れられ、脱衣場へ入ると、
「汚れた服はこの篭に入れておいて、私、着替え持ってくるわ」
「あ、あの…」
パタンと扉を閉めカナさんは行ってしまう。仕方なく服を脱ぎ風呂場の扉を開けると広い浴槽があり、何個も椅子が置いてある見た事が無い作り。
リュックからタオルを持ってきて桶に湯を汲みタオルで身体を擦る。
「あー、もしかして風呂の入り方知らないの?」
声にびっくりして振り返ると真っ裸で片手に桶を持ったカナさん。
「は、はい。こんな作りの風呂場は初めてで」
「しょうがないわね。ママに頼まれたから今回だけ手伝ってあげる」
カナさんが近づくと桶に入れてある石鹸で頭と身体を洗われてしまい、手早くカナさんも自分を洗うと大きな浴槽へ一緒に入った。
「ありがとうございます」
「別に、ママに頼まれたから仕方なくよ。あんたの腰にあるのは傷?」
「ん? どれ?」
「ほら、ここ」
カナさんが指で触ったのは、背中の腰のあたり。
「覚えが無いけど、何だろう?」
「傷痕じゃ無いなら良いわ」
フンッとそっぽを向くカナさんが可愛くてクスクス笑ってしまう。耳まで真っ赤になって照れているみたい。
「それにしても凄いですね。イナルさんって何者ですか? 皆さんママと呼んでいますが」
「そうか、あんた達はママの事を知らないのよね。ママはこのプジーの経営者でありプジーで働く皆のママよ」
イナルさんの事が本当に好きなのだろう。カナさんはとても嬉しそうにママの事を教えてくれた。
「ママはね。困っている人を見ちゃうと黙っていられないの。ここに居るみんなはママに助けられた人ばかりよ、私もその1人」
「イナルさんって優しい人なんですね」
「そうよ! だからママを利用しようとかバカにする人から、みんなで守ってあげてるの!」
カナさんは小さな手をぎゅっと握りしめて、私の方を向くと。
「だから大丈夫よ。あんたの事もきっとママが何とかしてくれるからね!」
10歳位だろうか、さっきは気付かなかったが胸やお腹、背中にも何かで斬られた痕があり。身体が温まり赤い傷痕が浮いて見える。
「さぁ、ママの所へ行くわよ。あまり長湯すると逆上せちゃうわ」
「そうね。ありがとう、一緒に行ってくれる?」
「もちろんよ」
ツンツンしているが、私の手をしっかり握りしめるカナさんに連れられ風呂場を出た。
用意してくれたのは、簡素なワンピース。それでも普段、私が着ているのより上等な物だ。
「ほら、着替えたら行くわよ」
「ありがとう。じゃあカナさんお願いします」
「カナでいい。私はあんたの事ルナって呼ぶ。ここではみんなママの子どもだから」
「分かった、カナありがとう」
「うん。ルナ行くよ」
私は可愛いカナと共にイナルさんが待つ部屋へ向かった。
表通りは道幅も広く、多くの人が行き交う。沿道に建ち並ぶ店は雨にも関わらず人々で混雑していた。
そんな表通りから細い道へ進むと、雰囲気はがらりと変わり。すでに酔っている男性や妖艶な姿の女性達が目につくようになる。
ぎゅっとマルクさんの手を強く握り下を向きながら歩いた。
「多少高くなっても、普通の宿屋へ行くか?」
頭上からマルクさんが声をかけてくれたが、
「大丈夫。移動ばかりであまり薬も売れなかったし、お金は大切に使わなきゃ」
雨も降り、ぐっしょり濡れたフードで顔を隠しながらマルクさんに引かれるまま歩を進めた。
「ここよ。ずぶ濡れのあんた達はまず風呂へ行きなさい」
イナルさんの声に顔を上げると、周りの店より一際大きい店。数段上にある黒い両開きの扉の前に男性二人が立ち、貴族屋敷のような建物は高級宿屋と言われても納得する。
「これは、これは。フォフォフォ。良い酒がありそうじゃの」
ショワン爺さんは臆する事無くイナルさんの後へ続き、私もマルクさんに手を引かれながら、ぼーっと建物を見上げていた。
「イナル様、また変なの拾ってきましたね」
「私が連れて来た客に文句あるの? さっさと開けてカナとナナを呼んでちょうだい」
恭しく扉を開けた男性。中はきらびやかなシャンデリアがあり真っ赤な絨毯が敷き詰められ、中央には螺旋階段。美しい女性達は男性と談笑していたり、階段を登る男女の後ろ姿。まるで物語にある一場面のようで身体がぴくりとも動かない。
安くしてくれるって言われても、これはかなり高級店よね。どうしよう、足りなかったらこの店で雇ってくれるかな?
「ママ! ふらっと出て行ったと思ったら、また変なの拾ってきたの?」
「フフ。ママは相変わらずね」
ツンとした美少女と、ふわりと笑う美少女がイナルさんへ歩み寄った。
「ナナは、この素敵なお爺さんと無愛想なコイツを風呂へ案内して、着替えを準備なさい。部屋はカタバミね」
「はいママ。ではこちらへ」
ふわりと笑っていた美少女がナナさんと言うらしい。ショワン爺さんとマルクさんを案内しようとしたが、
「おい、まさかルナを拐かすつもりじゃないだろうな。俺らと離して何をするつもりだ」
マルクさんがイナルさんへ詰め寄り、今にも剣に手を掛けそうで慌ててマルクさんの手を止めると。
「あんた、この子を男達が入る風呂へ入れるつもりかい? そうなら私が黙っちゃいないよ!」
「私! タオルさえ借りられれば大丈夫です! だから」
「ルナ。私はあんたの味方さ。もしこの唐変木と離れたいなら私が力になるよ」
私の肩を掴みマルクさんから離して自分の胸に抱き込む。
「そ、そんなつもりは! それにルナは俺の大切な人だ。お前にとやかく言われる筋合いは無い!」
「ママー、私この子を連れて行けば良いの?」
緊迫した雰囲気の中。普通に話すのはツンとした美少女。
「ああ、カナはルナを風呂場へ連れて行け。着替えは誰かのを貸してやるんだよ。ああ、それと終わったら私の部屋へ連れて来な」
「はーい。じゃあ行くよ」
マルクさんの目の前に立ちはだかるイナルさん、私はカナと呼ばれた美少女に手を引かれるが、
「マルクさんは良い人よ。やはり私が行って…」
「あー、大丈夫よ。ママなら下手な男より強いし、本当に危ない奴なら店へ入れないから」
興味無さげに話すカナさんに連れられ、脱衣場へ入ると、
「汚れた服はこの篭に入れておいて、私、着替え持ってくるわ」
「あ、あの…」
パタンと扉を閉めカナさんは行ってしまう。仕方なく服を脱ぎ風呂場の扉を開けると広い浴槽があり、何個も椅子が置いてある見た事が無い作り。
リュックからタオルを持ってきて桶に湯を汲みタオルで身体を擦る。
「あー、もしかして風呂の入り方知らないの?」
声にびっくりして振り返ると真っ裸で片手に桶を持ったカナさん。
「は、はい。こんな作りの風呂場は初めてで」
「しょうがないわね。ママに頼まれたから今回だけ手伝ってあげる」
カナさんが近づくと桶に入れてある石鹸で頭と身体を洗われてしまい、手早くカナさんも自分を洗うと大きな浴槽へ一緒に入った。
「ありがとうございます」
「別に、ママに頼まれたから仕方なくよ。あんたの腰にあるのは傷?」
「ん? どれ?」
「ほら、ここ」
カナさんが指で触ったのは、背中の腰のあたり。
「覚えが無いけど、何だろう?」
「傷痕じゃ無いなら良いわ」
フンッとそっぽを向くカナさんが可愛くてクスクス笑ってしまう。耳まで真っ赤になって照れているみたい。
「それにしても凄いですね。イナルさんって何者ですか? 皆さんママと呼んでいますが」
「そうか、あんた達はママの事を知らないのよね。ママはこのプジーの経営者でありプジーで働く皆のママよ」
イナルさんの事が本当に好きなのだろう。カナさんはとても嬉しそうにママの事を教えてくれた。
「ママはね。困っている人を見ちゃうと黙っていられないの。ここに居るみんなはママに助けられた人ばかりよ、私もその1人」
「イナルさんって優しい人なんですね」
「そうよ! だからママを利用しようとかバカにする人から、みんなで守ってあげてるの!」
カナさんは小さな手をぎゅっと握りしめて、私の方を向くと。
「だから大丈夫よ。あんたの事もきっとママが何とかしてくれるからね!」
10歳位だろうか、さっきは気付かなかったが胸やお腹、背中にも何かで斬られた痕があり。身体が温まり赤い傷痕が浮いて見える。
「さぁ、ママの所へ行くわよ。あまり長湯すると逆上せちゃうわ」
「そうね。ありがとう、一緒に行ってくれる?」
「もちろんよ」
ツンツンしているが、私の手をしっかり握りしめるカナさんに連れられ風呂場を出た。
用意してくれたのは、簡素なワンピース。それでも普段、私が着ているのより上等な物だ。
「ほら、着替えたら行くわよ」
「ありがとう。じゃあカナさんお願いします」
「カナでいい。私はあんたの事ルナって呼ぶ。ここではみんなママの子どもだから」
「分かった、カナありがとう」
「うん。ルナ行くよ」
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