こんな俺を変えてくれた少女を変える物語

エイル栄斗

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この旅の始まり

己の無力さ

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「なっ、なんで!?」
カゲルは予想外のことに驚きを隠せなかった。探していた盗賊団とぶつかってしまったのだ。物を盗んでさらには宿から逃げたのだから、うっかり遠くに行ったものだと思い込んでいた。
「いえ~い来あがったぜ~い!」
「お、お前ら…なぜここに!?」
「お前、金ねーんだなぁ…!」
「…は?」
「だからよぉ…お前を売って金にするんだよぉ!」
全く質問の答えになっていなかった。しかし、カゲルにはすぐにその意味がわかってしまった。
「お前ら…俺をおびき出すためにわざわざ…」
「そうよ!俺らはそんな端金じゃあ満足できねーのよ。」
さすがに盲点だった。まさかおびき出すための罠だったとは…たしかに金のない人が商売道具(剣)を無くしたら焦って探しに行くだろう。折れてたとしても、一般的に新しく買うより修理に出した方が安くつくから手放すわけにはいかないのだ。
「に、逃げよう…」
しかし、すぐに回り込まれてしまった。
「へへへ…逃げようったってそうはいかねーんだな!」
「くっ…」
瞬発力、敏捷性においては盗賊団の方が圧倒的に上だった。
「さあ、大人しくするんだな!」
「ぐおっ!?」
腹を殴られてしまい、カゲルはひざまづき、そのまま倒れてしまった。もがこうにも身体に力が入らない…
「俺に…もっと力があれば…」
典型的なセリフだが、カゲルが本当に思ったことだった。

「あ?なんだ?」
「お、おい、こいつは…」
「…?」
盗賊団の意識が別の方へ行ったのがわかった。同時に正面に誰かが駆け寄って来たのもわかった。カゲルは気になってなんとか顔を上げた。すると目の前にいたのはまさかのあの少女だった…
(な…なんで…)
「俺を…追ってきたのか…?」
「…(こくり)」
「なん…で…?寝てたのでは…?」
「こいつ、あの時のガキですぜ!?」
「本当だ。だがあの時の匂いはねーぞ!?」
「ああ、ならちょうどいい。この少女も一緒に売り飛ばそう。こいつの方が高く付きそうだしな。」
(なっ…それはダメだ…)
「おい…逃げろ…」
「…(ふるふる)」
首を振ったと同時に、盗賊団の一人に掴みかかった。しかし、もちろん軽くあしらわれてしまった。
「ハッ!気の強ぇガキじゃねーか。」
「大人しくしーろ!」
「!!」
少女はカゲルに重なる形で蹴り飛ばされてしまった。極悪盗賊団とはいえ、酷いことするものだ…
「おう、この二人を連れて行け!」
「へい!」

「待ちな!」

「…!?」
「誰だ!?」
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