上 下
84 / 115

戦闘は否応なしに開始される―――鏡の国の葵―――⑦

しおりを挟む
―――緊張した顔つきの6人は気配のする練習場へせーので飛び込んだ。

「明かりを点けるっす」

30畳くらいの練習場で奥が一面鏡張りになっている。
天井のライトが付く・・・かなり明るくなる。

“反鏡群現”

三守沙羅の魔法だ、防御用の魔法楯を5枚出現させている。
そして前回でこりたのだろう。ロミオは一番早く魔装している。

迅速に進み、アスモは奥の鏡に触れつつ調べている。

「反応があるであります・・・具象を可視化するであります」
鏡に黒い文字が浮かび上がる!


―――キサラギアオイ ヒトリデコイ ヒトジチガシヌ―――


みんな目を疑ったが・・・錯覚ではない。

「な、なんやこれ。なんか出てきたで」

「なんだいこりゃ?キサラギアオイ・・ヒトリデ・・・ええ!」レオナがギョっとしている。

「・・・なめやがって」一瞬周りがゾッとする気配をだしつつ瞬時に葵は魔装した。


そして鏡の中央に黒い穴がだんだん大きくなる・・・ひと一人通れるくらいの穴・・・入り口のようなものが浮かび上がる!


「上等だ!!」
いや葵、罠だろう・・・罠だってば・。

いきり立つ葵を後ろから緑川が抱きついている。
「・・・だめっす姐さん!罠っす!」
「うるせえ!中にどれだけいても全員ぶっつぶしてやるぜ!」
魔力と気合をねじり合わせて鋼鉄のような硬さと重厚感をかもし出す葵を緑川は止められない。葵は緑川をひきずりつつスタスタ鏡の穴に近づく。

「だめっす!姐さん罠っす!」

「わかってるぜ!そんなこと!中に入りに来たんだろ!」

引きずられながら緑川は叫んでいる。
「違うんす!聞いてくださいっす!誘拐された生徒は人質なんすよ!戦えるんすか?」
「はあ?人質だぁ?」
多少効果あったようで葵は立ち止まっている。

眼を閉じて三守は考え込んでいる。
「・・・もしそうなら敵の目的は・・・如月さん一人?・・・しかも文字を書いている・・・魔族ではなくて魔族を使役する人間が相手・・・」
その通りだ。

何の気配を感じているのだろう・・・アスモは?

「アスモちゃんも賛成できないであります・・・葵さまが入った瞬間空間を閉じる気であります」

「なら最初にわしらが入るか?」
「え?・・・あたいも入るのかい?」
いやおまえらに期待してはいない・・・だいたい自分の戦闘力を考えろ・・・。

「用意周到な罠っす!それくらい敵は考えているはずっす!ロミオ!入っちゃダメっす!レオナさんも!」



―――しばらく押し問答が続いたがなんとか葵を止められたようだ。

人質の状態にもよるが敵側にうまく立ち回られると葵は無力化されるだろう。
連れて逃げるにも入り込んだ先に未来たちがいるとは限らないからだ。
人質がどうなってもいい覚悟がなければ大立ち回りは難しい・・・。

ただしこれほど大掛かりな異界化結界となると・・・他にも仕掛けが・・・目的があるかもしれない。

端末を取り出している・・・緑川の端末に連絡があったようだ。

「ズー・ハンさんから連絡っす・・・だれが鏡に捕らわれたか・・・もう分かってる情報はいいっす・・・あ!・・ああ!」あいつらちゃんと仕事しているのか、意外だな。

「なんだよ?緑川?」
「ゲヘナっす・・・例のテロ組織っす・・・ほら横浜で事件を起こした連中っす」
「そいつらがなんなんだ?犯人なんだな?」
返事をせず緑川は端末を見ている。


・・・かなりの情報が緑川の端末に送られてきた様子だ。

「すごいっす!職員会議をハオ・ランさんとズー・ハンさんっすけど外から上手に探知してくれたみたいっす・・・第1高校の人が言ってるみたいっす!こないだのQMでの襲撃に引き続いてゲヘナの攻撃と断定するそうっす!」
それは予想通りだけど。しっかしハオ・ランとズー・ハン・・・なんでこんなに協力的なんだ?

「なんてこと!!じゃあ!そんな!」
三守さんはやっぱり賢いね・・・そういうことだ。

「なんや!なんやって!こないだ魔族に襲われたんも!ゲヘナかいな!」
珍しく燃える顔をしている・・・重症を負ったからなロミオは。
でもコイツは分かってないな。

「今回も作り物の魔族の匂いがするであります」
この子のことも少し調べたいな・・・江上明日萌・・・何者だ?

「うちそんな・・・そんなことって。ゲヘナの目的は・・・」

「そうっすね。それしかないっす。目的は・・・如月葵の姐さんっす」

「如月の姉御がなんだってのさ?分かりやすく言ってよね?」三守にまたバカにされそうだなレオナ。


「ゲヘナは魔族信仰の強いテロ集団で、悪魔崇拝者とも呼ばれてるっす。全員が何らかの特殊能力者なんす。活発な活動はやっぱ450年ぶりの・・・来年の聖魔大戦が目的だろうっていわれてるっす。ここ数年テロ行為をするとゲヘナは声明を出すことがあるっすが。人の世は終わりをつげ何とかって魔王の時代が始まるみたいなことを言ってる連中っす・・・最近の情報だとやっぱり横浜に潜んでるって言われてるっす・・・もう少し情報が欲しいっすね」

「そ。それと如月の姉御と何の関係があるんだい?」

「それは4000年前の第一回の聖魔大戦のころからっすけど、魔族の大侵攻・・・定期的に繰り返される・・・いわゆる聖魔大戦はほとんどが竜王家の血筋のものに撃退されているからっす。4000年来の魔族の仇敵なんすよ竜王家は・・・つまり神明家・・・姐さんの実家っす。悪魔崇拝者のゲヘナが姐さん一人に的を絞るのは姐さんが危険・・生かしておくと危険だという判断なんでしょう・・・最後のは多分っすけど」

納得いったようだレオナはなるほどねと言っている。
「ああ?神明家かい?・・・姉御は神明家の・・・お姫様かい・・・驚いたね。え~でも・・・それならあんた第2高校に神明帝って名前の王子がいるはずだよ。こいつがいけ好かない奴だけど竜王になるってうわささ。・・・あれ?じゃあいつと兄妹かい?」

「その第2高校の神明帝さんって人は襲われていないっすよね?この鏡の事件は第3高校でしか起きてないっすから。つか姐さんお兄様がいるんすね?一回肉親の方にご挨拶する必要があるっす」
一回葵がそれはもうボッコボコにして緑川、君が戦闘偏差値30って言っちゃってる相手だけど・・・。
そうか未来は知ってるけど緑川は知らないままか・。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

処理中です...