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新入生は合宿で愛を深め合う?②
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―――新入生の次の行事は二泊四日の林間学校だ。これは第3高校も例外ではない。これは六つの学園それぞれが時期と場所をずらして山間に泊るわけだ。
合宿の目的は降魔の地で学園に通う者同士の理解を深めおたがい切磋琢磨し―――まあようは新入生同士親睦を深めるのが表向きの目的だ。しかし降魔六学園においてはもう一つ重要な意味を持つのだ。
つまり上級生たちも少なからずやってくる。
上級生たちの目的は勧誘である。召喚戦闘部は運動部に位置づけられるが、新入生は夏までにはいずれかの召喚戦闘チームに入ることが義務づけられている。新入生が全く入らなければそのチームは5人を切った時点で補填がなければ解散となる。つまりこの時期はチームの解散や合併も相次ぐわけだ。この降魔六学園にはもちろん六つの高等学校があり全部で8000人以上の生徒―――ほとんど召喚士―――なわけだがだいたい420から430ほどのチームがある。各高校1チームではなくすべてのチームが地区の個人戦、団体戦に出場できる、団体戦に出るには8人以上のチームメンバーが必要である。メンバーが多ければチームは安定するがレギュラーになるのは難しくなる。8人ギリギリだと3年生が抜けるとどうしてもメンバー補充が必要になるのだ。
各学園ともこの4月の林間学校での新入生の勧誘はまさに命をかけてやっているわけだ。全く勧誘しないチームの方が珍しい。超人気チームは独自に入隊試験を行いふるいにかけるところもあるが比較的稀だ。万物は流転する・・・超不人気チームは消え去る運命というわけだ。
―――林間学校初日―――。
初日は午前からオリエンテーリング6時間コースとなったわけだが召喚士たちの魔術を禁じていない以上、グループによっては緩いイベントになる。如月葵たちのグループは―――グループ分けはランダムのため―――知らない生徒ばかりの集団となったがあっという間に1時間ほどで山間を抜けて走破してしまった。
最も遅かったチームは途中から教官に引率されて午後4時過ぎにゴールしたがそのなかに秋元未来の姿があった。
少し汚れたジャージ姿の未来は焦燥して疲れ果てているようだった。同じくジャージ姿の葵をみつけて一生懸命近づいてくる。フラフラだ。
「はぁはぁはぁ、葵ちゃん・・・はぁ・どうして助けに来てくれないの」
「助けてって・・・いや道に迷うとこなかっただろ?未来」
「普段は・・はぁはぁ。葵ちゃん・・・いっつも迷ってるのに・・・地図がわかりにくいのなの・・・うちのグループ魔術使える人もいなくって・・・なの」
地図が読める人もいなかったのか・・・。
その後しばらくして緑川と三守も合流して4人になった。
「遅かったっすね。未来ちゃん」
「疲労困憊ですね秋元さん、お水飲みますか?」
「ふ、二人とも・・・疲れたの・・・ありがとう沙羅ちゃん」未来はペットボトルの水を渡されて二口飲みやっと、ふぅと落ち着いたようだ。
「いやあ美少女が水を飲む横顔は絵になるっすね」そういって未来の横顔をガン見してる。ブレないなあ。
葵は夕日で赤い空を見上げているが山間のためか陽が落ちるのが早いようだ。周囲の新入生たちは少しずつ夕飯の準備を始めているようだ。
「すっかり夕方だな・・・緑川?夕飯って自分らで作るんだったっけ?」
「姐さん。なんか自分たちでカレー作るらしいっすよ。つかプログラム読んでないんすね?姐さん」まあ読みそうもない。
夕日を全身に浴びながら紺色のジャージに身を包んだガタイのいい男子生徒が手をぶんぶか振りながら近づいてくる。
「おおーい、おお。みんな揃っとるやないか」葵のチームに入ることになった御堂路三男だ。これで最低限の5人が揃ったわけだ。葵も軽く手を上げて迎えている。
「やあっす!御堂君」「ごきげんよう。うちらも今揃ったとこだから」「御堂君もいたのなの?」
「そりゃ来てるやろ秋元さん・・・新入生なんやから。つか緑川君、秋元さん。ロミオでええよ」
「じゃあ俺も緑川か尊かどっちでもいいっす、呼びやすい方で」
こいつらよくつるんでるな。
おおっと・・・緑川は何かひらめいたようだ。
「そういうわけなんで三守さんも沙羅ちゃんって呼んでいいっすか?」ぶれない緑川尊は全く今の会話から関係ない三守沙羅と強引に仲良くなろうという魂胆のようだ。
「それは特に問題は・・・」
「俺のことは尊でいいっす」
「わ。いえそれはまだ・・・無理」普通に断られてるけど・・・まあとにかく今日は事件も起きそうもないか。
「結局いつの間にか全員そろってんじゃねえか。よし!カレー作ろうぜ」
「グループ分けとか既に姐さんにはカンケーないんすね」
合宿の目的は降魔の地で学園に通う者同士の理解を深めおたがい切磋琢磨し―――まあようは新入生同士親睦を深めるのが表向きの目的だ。しかし降魔六学園においてはもう一つ重要な意味を持つのだ。
つまり上級生たちも少なからずやってくる。
上級生たちの目的は勧誘である。召喚戦闘部は運動部に位置づけられるが、新入生は夏までにはいずれかの召喚戦闘チームに入ることが義務づけられている。新入生が全く入らなければそのチームは5人を切った時点で補填がなければ解散となる。つまりこの時期はチームの解散や合併も相次ぐわけだ。この降魔六学園にはもちろん六つの高等学校があり全部で8000人以上の生徒―――ほとんど召喚士―――なわけだがだいたい420から430ほどのチームがある。各高校1チームではなくすべてのチームが地区の個人戦、団体戦に出場できる、団体戦に出るには8人以上のチームメンバーが必要である。メンバーが多ければチームは安定するがレギュラーになるのは難しくなる。8人ギリギリだと3年生が抜けるとどうしてもメンバー補充が必要になるのだ。
各学園ともこの4月の林間学校での新入生の勧誘はまさに命をかけてやっているわけだ。全く勧誘しないチームの方が珍しい。超人気チームは独自に入隊試験を行いふるいにかけるところもあるが比較的稀だ。万物は流転する・・・超不人気チームは消え去る運命というわけだ。
―――林間学校初日―――。
初日は午前からオリエンテーリング6時間コースとなったわけだが召喚士たちの魔術を禁じていない以上、グループによっては緩いイベントになる。如月葵たちのグループは―――グループ分けはランダムのため―――知らない生徒ばかりの集団となったがあっという間に1時間ほどで山間を抜けて走破してしまった。
最も遅かったチームは途中から教官に引率されて午後4時過ぎにゴールしたがそのなかに秋元未来の姿があった。
少し汚れたジャージ姿の未来は焦燥して疲れ果てているようだった。同じくジャージ姿の葵をみつけて一生懸命近づいてくる。フラフラだ。
「はぁはぁはぁ、葵ちゃん・・・はぁ・どうして助けに来てくれないの」
「助けてって・・・いや道に迷うとこなかっただろ?未来」
「普段は・・はぁはぁ。葵ちゃん・・・いっつも迷ってるのに・・・地図がわかりにくいのなの・・・うちのグループ魔術使える人もいなくって・・・なの」
地図が読める人もいなかったのか・・・。
その後しばらくして緑川と三守も合流して4人になった。
「遅かったっすね。未来ちゃん」
「疲労困憊ですね秋元さん、お水飲みますか?」
「ふ、二人とも・・・疲れたの・・・ありがとう沙羅ちゃん」未来はペットボトルの水を渡されて二口飲みやっと、ふぅと落ち着いたようだ。
「いやあ美少女が水を飲む横顔は絵になるっすね」そういって未来の横顔をガン見してる。ブレないなあ。
葵は夕日で赤い空を見上げているが山間のためか陽が落ちるのが早いようだ。周囲の新入生たちは少しずつ夕飯の準備を始めているようだ。
「すっかり夕方だな・・・緑川?夕飯って自分らで作るんだったっけ?」
「姐さん。なんか自分たちでカレー作るらしいっすよ。つかプログラム読んでないんすね?姐さん」まあ読みそうもない。
夕日を全身に浴びながら紺色のジャージに身を包んだガタイのいい男子生徒が手をぶんぶか振りながら近づいてくる。
「おおーい、おお。みんな揃っとるやないか」葵のチームに入ることになった御堂路三男だ。これで最低限の5人が揃ったわけだ。葵も軽く手を上げて迎えている。
「やあっす!御堂君」「ごきげんよう。うちらも今揃ったとこだから」「御堂君もいたのなの?」
「そりゃ来てるやろ秋元さん・・・新入生なんやから。つか緑川君、秋元さん。ロミオでええよ」
「じゃあ俺も緑川か尊かどっちでもいいっす、呼びやすい方で」
こいつらよくつるんでるな。
おおっと・・・緑川は何かひらめいたようだ。
「そういうわけなんで三守さんも沙羅ちゃんって呼んでいいっすか?」ぶれない緑川尊は全く今の会話から関係ない三守沙羅と強引に仲良くなろうという魂胆のようだ。
「それは特に問題は・・・」
「俺のことは尊でいいっす」
「わ。いえそれはまだ・・・無理」普通に断られてるけど・・・まあとにかく今日は事件も起きそうもないか。
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