天井裏の囁き姫

葉羽

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回答編

霧島蓮の真実

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霧島蓮(望月薫子)の計画が崩壊し、天井裏の囁き姫の謎も解決されたかのように見えた。だが、葉羽の中には一つの疑問が残っていた。「時間がある」「何度でも繰り返せる」という霧島蓮の不気味な言葉。その真の意味は、まだ解かれていなかった。

葉羽は彩由美の安全を確認しながら、もう一度事件の全貌を整理し始めた。蓮は「永遠の命」を追い求めていた。そして、その鍵となるのが、満月の光を動力とする魂転写装置だった。霧島蓮は、自らの魂を保存し続け、肉体を乗り換えることで生き永らえようとしていた。

しかし、装置を破壊したことで蓮の計画は終わったかに思われたが……本当にそうだろうか?蓮の最後の言葉は、単なる虚勢だったのか?葉羽は、改めて装置や仕掛けをじっくりと分析し、その矛盾に気づいた。

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### 1. **時間の「歪み」と「繰り返し」**

霧島蓮が言っていた「時間がある」「何度でも繰り返せる」という言葉は、ただの比喩ではなかった。彼女の本当の目的は、「魂を永遠に保存する」だけではなく、「時間そのものを巻き戻し、過去に戻ること」だったのだ。

蓮の装置は、魂を保存するだけでなく、時間を歪ませ、過去を再現する機能を持っていた。つまり、彼女は満月のたびに「同じ時間を繰り返す」ことができるようにしていたのである。

これが、蓮が「永遠に生き続ける」と言い続けていた理由だった。彼女は、満月の夜に時間を逆行させ、失敗するたびに過去に戻ってやり直していたのだ。だからこそ、「何度でも繰り返せる」と言ったのである。

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### 2. **装置の本質:時間転写システム**

葉羽は、蓮の装置を完全に理解するために、蓮の実験ノートに再度目を通した。その中には、詳細な仕掛けの説明が記されていたが、重要なのは「満月の光を集める鏡のシステム」だった。これにより、蓮は時間を「巻き戻す」ことが可能となっていた。

具体的には、装置が満月の光を集めて強力なエネルギーを発生させ、そのエネルギーによって空間と時間の歪みを生じさせる。その歪みを利用して、蓮は過去のある特定の瞬間に自らの魂を戻すことができた。蓮の魂は、同じ時間軸を何度も繰り返し、生き続けることが可能だったのだ。

つまり、蓮は「肉体の不滅」ではなく、「時間の不滅」を求めていた。

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### 3. **蓮の真の目的**

蓮が望んでいたのは、永遠に「同じ時間を繰り返す」ことで、自分の過ちを何度でも修正し、完璧な未来を作り出すことだった。しかし、彼女は完全にその力を手に入れることができず、葉羽に阻まれてしまった。

しかし、ここで重要なことに気づく。装置を破壊した後、蓮の魂が消滅したかのように見えたが、実際には「時間の巻き戻し」が再び行われる可能性が残されていた。装置が完全に停止していない限り、蓮の魂は過去のある時点に戻ることができる。つまり、蓮の魂はまだどこかに存在している可能性が高いのだ。

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### 4. **最終的な解決策:時間を閉じる**

葉羽はこの事実を理解すると、再び満月の夜に天井裏に戻った。蓮の装置を完全に破壊するためには、単に鏡や歯車を壊すだけでは不十分だった。時間の歪みを閉じるには、「満月の光を再び集め、逆方向にエネルギーを放出する」必要があった。

葉羽は、蓮の残したノートを頼りに、天井裏で装置を改造し始めた。蓮の装置が「時間を逆行させる」ために使っていたエネルギーを逆転させ、「未来へと進ませる」ための操作を行った。これにより、蓮の魂が過去に戻ることを防ぎ、時間を元の状態に戻すことができる。

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### 結末:蓮の消滅と平穏

改造が完了し、葉羽は満月の光が再び集まるのを待った。そして、その瞬間、装置が再び動き出した。だが、今度は逆の方向にエネルギーが放たれ、時間の歪みが解消されていった。

天井裏に漂っていた霧島蓮の魂は、徐々に薄れていき、最終的に完全に消滅した。葉羽は、彩由美を守り抜き、この呪われた装置を永遠に止めることに成功した。

---

### 読者への最後の問い

「これで全てが終わったかに見える。しかし、霧島蓮が何度も時間を繰り返してきたことで、私たちが知らない『別の時間』が存在するかもしれない。君は、その可能性を感じないか? この物語の本当の結末は、まだ君の推理に委ねられているのかもしれない。」

葉羽は時計を見つめながら、再び問いかける。
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