推理の迷宮

葉羽

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3章

学園祭の怪事件

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第3章: 学園祭の怪事件

秋の訪れを告げる風が校舎を包む中、神城学園は学園祭の準備で賑わっていた。葉羽のクラスは、「推理カフェ」を出すことに決まり、彼は半ば強制的に企画委員に任命されていた。

「神藤くん、このポスターどう思う?」彩由美が描いたポスターを見せながら尋ねてきた。

葉羽は一瞬、彩由美の笑顔に見とれたが、すぐに我に返った。「ああ、いいんじゃないか。でも、もう少し謎めいた雰囲気を出せたら...」

彩由美は少し困ったように首を傾げた。「うーん、難しいなぁ。」

その時、教室に騒ぎが起こった。

「大変だ!誰か、体育館の備品を全部隠したみたいなんだ!」

クラスメイトの一人が叫んだ。葉羽の目が輝いた。これは間違いなく、彼の出番だった。

「詳しく話を聞かせてくれ。」葉羽は立ち上がり、情報を集め始めた。

状況は次第に明らかになった。体育館に保管されていた学園祭用の備品—テント、椅子、テーブルなど—が一晩で消えてしまったのだ。しかも、体育館の鍵は閉められたままで、窓にも異常はなかった。

「完全な密室だな...」葉羽は呟いた。

彩由美が心配そうに寄ってきた。「葉羽、これって...」

「ああ、僕が調べてみる。」葉羽は自信に満ちた表情で答えた。

体育館に向かう途中、葉羽は様々な可能性を頭の中で整理していた。単なるいたずらか、それとも...

体育館に到着すると、既に多くの生徒や教師が集まっていた。葉羽は慎重に周囲を観察し、細かな痕跡を探した。

「おや?」床に何か光るものを見つけ、葉羽はしゃがみ込んだ。

それは小さな歯車だった。しかも、かなり特殊な形をしている。

「これは...」

葉羽の頭に、ある仮説が浮かんだ。しかし、それを証明するには更なる証拠が必要だった。

彼は体育館の隅々まで調べ上げ、いくつかの不自然な点を見つけた。壁のある部分が少し膨らんでいる。天井の一部に微かな隙間がある。そして、床の特定の場所を踏むと、かすかに異なる音がする。

「なるほど...」

葉羽は全てを理解した瞬間、大きく目を見開いた。

「みんな!壁に触れないで!」彼は大声で叫んだ。

その直後、体育館全体が震動し始めた。壁が動き、床が開き、天井が変形する。そして、消えていた備品が次々と現れ始めたのだ。

生徒たちから驚きの声が上がる中、葉羽は冷静に状況を説明し始めた。

「これは、からくり仕掛けの体育館だったんだ。誰かが、この建物全体を巨大な機械に改造していた。備品は隠されていたんじゃない。収納されていたんだ。」

彩由美が感嘆の声を上げた。「すごい...でも、誰がこんなことを?」

葉羽は少し考え込んだ。「それはまだ分からない。でも、きっと近いうちに...」

その時、校内放送が鳴り響いた。

「神藤葉羽君、校長室まで来てください。」

葉羽と彩由美は顔を見合わせた。この呼び出しが、新たな謎の始まりを告げているようだった。

「行ってくる。」葉羽は彩由美に軽く手を振り、校長室へと向かった。

彼の背中を見送りながら、彩由美は複雑な表情を浮かべていた。まるで、何か重大な秘密を抱えているかのように...
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