量子幽霊の密室：五感操作トリックと魂の転写

19章

真犯人対決

警察署に到着した葉羽と彩由美は、すぐに刑事の案内で取調室へと通された。取調室には、すでに瑠璃堂が座っていた。彼は、手錠をかけられ、椅子に拘束されていた. しかし、彼の表情には、焦りや動揺の色は一切なく、不気味なほど冷静だった。

「…瑠璃堂…」

葉羽は、静かに瑠璃堂の名前を呼んだ。瑠璃堂は、ゆっくりと顔を上げ、葉羽に視線を向けた。

「…やあ、葉羽くん。よく来たね」

瑠璃堂は、まるで旧友にでも語りかけるかのような、軽い口調で言った。その態度に、葉羽は苛立ちを覚えた。

「…なぜ、こんなことをした？五十嵐さんを殺し、俺を犯人に仕立て上げようとして…」

葉羽は、怒りを込めて瑠璃堂に問いかけた。瑠璃堂は、薄く笑みを浮かべ、答えた。

「…なぜって？簡単さ。金のためだよ。私は、巨額の借金を抱えていてね。五十嵐の遺産を手に入れる以外に、助かる道はなかった」

瑠璃堂の言葉は、冷酷で、一切の反省の色が見られなかった。

「…金のためだけに、人を殺すのか…？」

彩由美は、怒りと悲しみが入り混じった声で言った。瑠璃堂は、彩由美の言葉に耳を傾けることなく、葉羽に視線を戻した.

「…葉羽くん、君は本当に優秀な探偵だね。私の計画を、ここまで見破るとは思わなかったよ」

瑠璃堂は、まるで感心しているかのような口調で言った。

「…だが、一つだけ、君の見落としがある」

瑠璃堂は、意味深な言葉を口にした。

「…見落とし…？」

葉羽は、聞き返した。

「…ああ。君は、私が量子複製装置を使って、自分の魂を五十嵐の複製体へと転写したと考えている. しかし、それは違う」

瑠璃堂の言葉に、葉羽はハッとした。

「…どういうことだ…？」

葉羽は、瑠璃堂に尋ねた.

「…私は、量子複製装置を使って、五十嵐の魂を私の体へと転写したのだ」

瑠璃堂の言葉に、葉羽と彩由美は驚愕した. つまり、今、目の前にいる瑠璃堂は、五十嵐の魂が宿った複製体だったのだ。

「…ば、馬鹿な…そんなことが…」

彩由美は、信じられない思いで呟いた.

「…本当さ。私は、五十嵐の記憶と人格をすべて受け継いでいる. 私は、五十嵐進太郎そのものなのだ」

瑠璃堂…いや、五十嵐は、冷酷な笑みを浮かべた。

「…なぜ、そんなことを…？」

葉羽は、五十嵐に問いかけた。

「…なぜって？簡単さ。永遠の命を手に入れるためだよ. 私は、量子力学の研究に人生を捧げてきた。そして、ついに、永遠の命を手に入れる方法を見つけたのだ」

五十嵐は、狂気に満ちた目で言った.

「…だが、それは間違っている！貴様は、多くの人々の人生を犠牲にして、自分の欲望を満たそうとしている！」

葉羽は、怒りを込めて叫んだ.

「…フフフ…何を言っている。私は、神になったのだ. 神に、善悪の区別など必要ない」

五十嵐は、高笑いした.

「…貴様を、絶対に許さない！」

葉羽は、強い意志で言った。彼は、五十嵐を逮捕することを誓った。

その時、取調室のドアが開き、数人の警察官が突入してきた。

「…瑠璃堂蓮、貴様を逮捕する！」

警察官は、五十嵐に手錠をかけた. 五十嵐は、抵抗することなく、静かに逮捕された。

事件は、ついに解決した。しかし、葉羽の心には、まだ拭いきれない不安が残っていた。

(…量子複製装置、そして魂の転写技術。これらの技術は、今後、どのように使われるのだろうか…？）

葉羽は、科学技術の進歩が、必ずしも人類の幸福に繋がるとは限らないことを、改めて認識した.