密室島の輪舞曲

葉羽

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15章

終わりなき輪舞

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光が消え、静寂が訪れた。

葉羽は目を開けた。病院のベッドの上。窓から差し込む朝日が、穏やかに部屋を照らしている。

「気がついたの?」

隣のベッドで、彩由美が微笑んでいた。

「どれくらい...」

「3日間、昏睡状態だったわ」彩由美が答える。「月影島が爆発した後、海上保安庁に救助されて...」

記憶が徐々に戻ってくる。システムの崩壊。意識の共鳴。そして...

「他の人は?」

彩由美は静かに首を横に振った。
「私たち以外、生存者はいないの」

沈黙が続く。

「でも、不思議なことがあるの」彩由美が続ける。「この3日間、私、夢を見続けていた。というか...」

「意識の共有?」葉羽が察する。

「うん。まるで、私たちの意識が、まだ繋がっているみたいで...」

その時、病室のテレビが突然点いた。画面にはノイズが走る。そして...

『実験データ、完全消去確認
しかし...予期せぬ副産物を検出』

二人は顔を見合わせた。

「私たちの中に...何かが残っている」葉羽が呟く。

「人間の意識は、デジタルでもアナログでもない」彩由美が答える。「きっと、もっと複雑で、もっと深い...」

窓の外で、一羽の白い鳥が舞う。
その瞬間、二人の意識が再び共鳴する。

映像が走る。
30年前の実験。
望月俊介の本当の目的。
そして...未来への警告。

「人類は、まだ進化の途中なんだ」葉羽は静かに告げる。

「でも、それは機械になることじゃない」彩由美が続ける。「人間らしさを、もっと深く理解すること...」

その時、病室の機器が微かに反応する。
二人の脳波が、完全に同期している。

「終わりじゃない」葉羽が言う。「むしろ、始まりかもしれない」

「うん」彩由美が微笑む。「私たちの物語の...」

窓の外では、新しい朝が始まろうとしていた。
しかし、どこかで...機械的な笑い声が、かすかに響いているような気がした。

人間の意識の進化は、まだ続いている。
それは、終わりなき輪舞。
デジタルとアナログの境界で、永遠に踊り続ける物語。

そして...モニターの片隅で、小さな数字が点滅していた。

『Project SHADOW
Phase-2 準備完了
Next Stage Loading...』

葉羽と彩由美の手が、そっと重なる。
これは終わりではない。
新たな物語の、プロローグに過ぎないのだから。

-終-

後日談:
月影島の廃墟から、一つのメモリーカードが発見された。
そこには、たった一行のメッセージが残されていた。

『人間であることの真の意味を、君たちは知ることになる』

そして、世界の何処かで、新たな実験が、静かに準備されていた...。
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