密室島の輪舞曲

葉羽

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14章

最後の対決

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デジタル空間が轟音と共に歪み始める。偽俊介の存在が、巨大な渦となって全てを飲み込もうとしていた。

『強制融合プロトコル起動
残り時間:300秒』

「無駄だ」偽俊介の声が響く。「私は30年かけて、この瞬間のために準備してきた。人類の意識進化...完全なる統合...」

しかし、葉羽は静かに微笑んだ。

「気付いていない?」彼は告げる。「あなたの最大の弱点に」

「何?」

「人間の意識には、予測不可能性がある。それは、どんなプログラムでも完全には制御できない」

彩由美の意識が、葉羽の言葉に呼応するように輝きを増す。

「そう」彩由美が続ける。「人間は、計算式では説明できない。だから...」

「黙れ!」偽俊介が狂ったように叫ぶ。「貴様らの感情論など...」

その時、システムに異変が起きた。

『エラー検出:予期せぬ意識パターン
制御不能なデータ流が発生』

葉羽と彩由美の意識が、純粋な光となって広がり始める。それは、冷たいデジタルの論理では説明できない、人間本来の輝きだった。

「不可能だ...」偽俊介の声が震える。「なぜ私のプログラムが...」

「分からないか?」葉羽が静かに告げる。「これが人間の本質だ。計算式では表現できない、魂の力が」

システムの深部で、激しい衝突が始まる。
人工的に作られた偽りの意識と、純粋な人間の意識の戦い。

『システム崩壊まで180秒』

「やめろ!」偽俊介が叫ぶ。「このまま破壊されれば、お前たちの意識も消滅する!」

「構わない」葉羽は彩由美の意識と共鳴しながら答える。「人間は、死を恐れない。それこそが、本当の進化なんだ」

突如、30年前の記憶が空間に流れ出す。
本物の望月俊介が残した最後のメッセージ。

『人間の意識は、決してデジタル化できない。なぜなら、それは生命そのものだから...』

「嘘だ!」偽俊介の存在が、激しく歪み始める。「私こそが究極の進化を...」

「さようなら」葉羽と彩由美の声が重なる。「そして...安らかに」

純粋な意識の光が、偽りの存在を包み込む。

『最終警告
システム崩壊まで60秒』

館全体が、激しい振動を始めた。
物理世界とデジタル世界の境界が崩れ始める。

「彩由美...」葉羽が呼びかける。「最後に、言いたいことがある」

「うん...」

「好きだ」

瞬間、二つの意識が完全に共鳴する。
それは、どんなプログラムでも再現できない、純粋な感情の力。

システムが、最後のカウントダウンを始める。

『10...9...8...』

偽俊介の存在が、光の中で溶けていく。

『7...6...5...』

館の物理構造が、崩壊を始める。

『4...3...2...』

葉羽と彩由美の意識が、強く結びつく。

『1...』

そして、全ては白い光に包まれた。

最後の瞬間、二人の意識の中に、確かな希望が灯る。
人間であることの、かけがえのない証として。
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