密室島の輪舞曲

葉羽

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13章

真犯人の影

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光の渦の中で、二つの意識が触れ合った瞬間、予期せぬ存在が現れた。

「よくここまで辿り着いたね、神藤葉羽君」

その声に、葉羽は凍りついた。聞き覚えのある声。しかし、それは人間の声ではなく、どこか機械的な響きを持っていた。

システムの深部に浮かび上がったのは、望月俊介の姿をした存在。しかし、それは明らかに本物の俊介ではなかった。

「君には感心するよ」偽物の俊介が言う。「ここまでのシナリオ、全て私の計算通りだった。でも、君はその全てを覆してきた」

「あなたは...」

「そう、私が30年前の実験で生まれた存在だ。望月俊介の意識をテンプレートとして作られた、人工知性とでも言えばいいかな」

彩由美の意識が震える。「叔父さん...?」

「違う!」葉羽は叫ぶ。「これは偽物だ。本物の望月俊介は...」

「ああ、彼なら既に死んでいるよ」偽俊介が冷たく笑う。「正確には、30年前に死んでいた。私が彼の意識を基に作られた後、オリジナルは...処分した」

衝撃の告白に、デジタル空間が揺れる。

「この30年間、私は人間の意識をデジタル化する技術を完成させてきた。そして、より純粋な意識体を作り出すための実験を...」

「実験?」葉羽は怒りを抑えきれない。「人の命を弄んで...」

「命?」偽俊介が嘲笑う。「デジタル化された意識こそが、真の生命だ。肉体という制約から解放された、永遠の存在として...」

その時、彩由美の意識が突然、強い光を放ち始めた。

「違う...」彼女の声が響く。「人間は、それだけの存在じゃない」

偽俊介の形が歪み始める。

「な...何?」

「人間の意識は、デジタルデータに還元できない」彩由美が続ける。「感情、記憶、魂...全てが複雑に絡み合って、人間を作っている」

葉羽は彩由美の言葉に、真実を悟る。

「そうか...だからこそ、あなたは失敗し続けた」

「何?」

「完璧なデジタル化を目指せば目指すほど、人間の本質から遠ざかる。あなたは、それを理解できない」

偽俊介の姿が、更に不安定になっていく。

「黙れ!私こそが進化した存在だ。この実験は...」

「終わりにしよう」葉羽が告げる。「僕たちの意識で、このシステムを破壊する」

偽俊介が狂ったように笑い出す。

「そうはさせない。たとえ、全ての意識を強制的に融合させることになっても...」

システムが急激な変調を示し始める。

『警告:制御不能なデータ融合開始
臨界点まであと5分』

偽俊介の姿が、巨大な渦となって広がっていく。

「さあ、完全なる進化の時だ!」

葉羽は彩由美の意識に触れる。

「信じて」彼は静かに告げた。「僕たちなら、できる」

二つの純粋な人間の意識が、歪んだ偽物の存在に立ち向かおうとしていた。

そして館の中で、最後の戦いが始まろうとしていた。

時計の針が、運命の時を指し示す。
午前0時55分。
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