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4章

時計が語る真実

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第4章:「時計が語る真実」

神藤葉羽は、事件の核心に迫りつつあった。時計が犯行時刻を偽装していたという推理は正しいと確信したが、まだ見えないピースが残っていた。犯人が時計を操作して作り上げた「偽のアリバイ」と、真の犯行時刻——そして、動機。そのすべてが繋がる瞬間は近いはずだった。

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葉羽は彩由美と共に洋館の周辺をさらに調査するため、再び洋館に戻った。今回は事件の裏に潜む「人間関係」を明らかにし、動機を突き止めることを最優先に考えていた。

「彩由美、もう一度確認するけど、この洋館には最近まで誰が出入りしていたんだっけ?」

「確か……被害者と少し前に連絡を取っていたのは、近くに住んでいる男性だったと思う。親戚でもないけど、何かトラブルがあったみたいって友達が言ってたよ。」

「なるほど……その人が犯人かもしれないな。となると、動機は財産ではなく、何か個人的な理由かもしれない。」

葉羽はその情報を基に、事件の背景にある人間関係を調べるため、地元の記録や被害者の交友関係を洗い出した。徐々に見えてきたのは、被害者と最近まで頻繁に接触していた一人の男性の存在だった。その人物は、被害者と長年の友人関係にあったが、何らかの理由で最近関係が悪化していたという噂が流れていた。

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葉羽と彩由美は洋館に再び戻り、時計の動きや犯行時刻をさらに深く追求した。被害者が発見されたのは午後2時。しかし、葉羽の推理によれば、時計は午前6時を指していた。この時間の違いが事件のカギだ。

「葉羽、どうして時計をいじる必要があったの?その人は、ただ普通に殺せばいいのに……」

彩由美は少し困惑しながら葉羽に尋ねた。彼女の疑問はもっともだ。犯人がわざわざ複雑なトリックを仕掛ける理由は何だったのか?

「犯人は、自分が殺人を犯したことを絶対に隠したかったんだ。だから、アリバイを作るために、時間を操作した。もし普通に犯行を行えば、警察に疑われるリスクが大きくなる。だが、時間をずらして、全く別の時刻に殺人が起こったように見せかければ、自分が犯行時刻に別の場所にいたと証明できるんだ。」

葉羽は冷静に推理を進めながら、時計の細工を再度確認した。時計の内部は犯人によって改造され、指定された時間帯だけが進むように設定されていた。犯行直後、犯人は時計を操作し、実際の時間よりも早く進ませることで、被害者の死亡時刻を錯覚させたのだ。

「つまり、犯行時刻は午前6時ではなく、もっと後だったんだ。犯人は午前6時に殺人が起こったように見せかけ、外部から発見されるまでの時間を操作した。これによって、犯行時刻にアリバイを作り上げたんだ。」

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葉羽の頭の中で、ついに全てのピースが繋がった。犯人が時計を操作し、アリバイを偽装した理由は明確だ。だが、肝心の動機がまだ完全には見えてこない。そこで葉羽は、事件をもう一度整理し、動機に迫るための手がかりを探し出すことにした。

「彩由美、この事件の動機は何かもっと複雑なものだと思う。ただの財産争いじゃない。犯人は、被害者に何か深い恨みを抱いていたはずだ。」

彩由美はその言葉を聞きながら、ふと何かを思い出したように葉羽に言った。

「そういえば、あの洋館のオーナーって、昔かなり強引なやり方で土地を買い取ってたらしいよ。近くの住人とトラブルになったこともあるって、聞いたことがあるの。」

「それだ……」

葉羽の瞳が一瞬輝いた。犯人はおそらく、そのトラブルの中で被害者に強い恨みを抱くようになった。だが、その恨みをただ単に表に出すのではなく、極めて緻密な計画を立てて完全犯罪を目論んだのだ。時計を操作するという大胆なトリックを使い、完璧なアリバイを構築しようとしたのだろう。

「動機は個人的な恨み、そして完璧なアリバイを作るために時計を使った。それで犯人は、自分が絶対に疑われない状況を作り上げたんだ。」

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葉羽は全ての推理を組み立て直し、ついに事件の全貌を解き明かした。犯人が時計を操作して犯行時刻を偽装し、アリバイを作り上げたこと。動機は、過去のトラブルによる深い恨みだった。時計は単なる時間を示す道具ではなく、犯人の完璧な計画の一部であったのだ。

「彩由美、これで全てが繋がった。犯人の計画は極めて巧妙だけど、僕たちはそのトリックを暴いたんだ。」

彩由美は驚きと感嘆の表情で葉羽を見つめた。

「葉羽、本当に解けたんだね……すごいよ、さすが!」

葉羽は軽く微笑みながら、彼女の肩に手を置いた。

「まだ終わりじゃないよ。これから真犯人を告発しなければならない。でも、犯人が時計を操作した証拠は揃った。これで、犯人のアリバイは崩れるはずだ。」

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**次章予告**  
次の章では、ついに葉羽が犯人を暴く最終局面へと突入する。動機とアリバイを解明した葉羽が、最後に挑むのは犯人を追い詰める「証拠」。犯人は自分の完璧なトリックが暴かれるとは夢にも思っていない——だが、葉羽はその真実を突きつける時が来た。

果たしてあなたも、時計のトリックと犯人の動機を解き明かせたか?
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