退屈な日常に潜む謎

葉羽

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3章

未来からの警告

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警察の捜査が始まって数日が経過した。葉羽は自宅の書斎で、事件の全容を把握しようと奮闘していた。壁には様々な写真や資料が貼られ、赤い糸で繋がれている。彩由美は心配そうに葉羽を見つめていた。

「葉羽くん、少し休憩しない?」

葉羽は首を振った。「まだだ。この事件、単なる殺人じゃない。もっと大きな何かが...」

その時、突然部屋が明るく光った。まるで雷が落ちたかのような閃光。葉羽と彩由美は反射的に目を閉じる。

光が収まると、そこには見知らぬ青年が立っていた。

「やあ、お父さん。お母さん」

葉羽と彩由美は唖然とした。青年は葉羽にそっくりだが、彩由美の目の形をしている。

「え?何...?」彩由美が困惑した声を上げる。

青年は苦笑いを浮かべた。「驚かせてごめん。僕は神藤翔。君たちの...未来の息子だよ」

葉羽は冷静さを取り戻そうとしながら言った。「証拠は?」

翔は頷き、ポケットから小さなデバイスを取り出した。それを操作すると、部屋に立体映像が浮かび上がる。そこには年老いた葉羽と彩由美、そして大人の翔が映っていた。

「信じられないかもしれないけど、僕は2050年からやってきた」翔は真剣な表情で続けた。「お父さん、君が今追っている事件。あれは未来を変えようとする組織の仕業だ」

葉羽の目が鋭く光る。「組織?」

翔は頷いた。「彼らは過去を操作して、自分たちに都合の良い未来を作ろうとしている。望月栄一郎博士の研究が、その鍵になっていたんだ」

彩由美が驚いて声を上げた。「叔父さんの研究が?」

「そう」翔は続けた。「博士は時間を局所的に操作する技術を開発していた。組織はそれを利用して、歴史を書き換えようとしているんだ」

葉羽は眉をひそめた。「なぜ君が来たんだ?未来の私たちは?」

翔の表情が暗くなる。「...未来では、君たちはもういない」

部屋に重い沈黙が落ちた。

「だから僕が来た」翔は決意を込めて言った。「この事件を解決し、組織の計画を阻止しなければ、未来は破滅する」

葉羽は立ち上がり、翔の目をまっすぐ見つめた。「わかった。どうすればいい?」

翔は安堵の表情を浮かべた。「まず、学園に潜む組織のスパイを見つけ出す必要がある。そして...」

突然、外から物音が聞こえた。翔の表情が変わる。

「やばい、見つかった」翔は急いでデバイスを操作し始めた。「二人とも、気をつけて。組織の手が及んでいるのは学園だけじゃない。誰も信じちゃダメだ」

そう言うと、翔は来た時と同じ光に包まれ、消えていった。

部屋に取り残された葉羽と彩由美。二人は言葉もなく見つめ合った。

葉羽が静かに言った。「行こう、彩由美。学園の秘密を暴くんだ」

彩由美は不安そうな表情を浮かべながらも、強く頷いた。二人の前には、想像を絶する危険が待ち受けていた。しかし、未来を守るため、二人は歩み出す決意を固めたのだった。
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