グレイマンションの謎

2章

不気味な訪問者

薄暗い廊下を進むにつれ、葉羽と彩由美の心には不安が広がっていた。館内の静けさは、まるで何かが待ち受けているかのように感じられる。彼らは互いに目を合わせ、無言のまま進んでいく。葉羽は冷静さを保とうと努力するが、背中に冷たい汗が流れるのを感じていた。

「この家、ほんとに何かがあるよね…」彩由美がぽつりと呟いた。

「そうだな。過去の事件が影を落としているのかもしれない。」葉羽は、その言葉に同意しながら、さらに奥へと進む。

廊下の終わりには、巨大なドアが待ち構えていた。葉羽はそのドアを開け、部屋の中へ足を踏み入れる。そこは広々としたリビングルームで、家具は埃をかぶり、長い間使われていない様子だった。大きな窓からは、外の薄暗い森が見え、まるで二人をじっと見つめているかのように感じられた。

「この部屋、なんだか不気味だね。」彩由美が声を潜める。

「うん、何かがいる気がする。」葉羽は、視線をあちこちに動かしながら、注意深く周囲を観察した。

その時、突然、背後で物音がした。振り返ると、何もないはずの廊下に、黒い影が一瞬現れたように見えた。葉羽は目を細めて確認しようとしたが、すぐに消えてしまった。

「葉羽、今の…見た？」彩由美は怯えた様子で尋ねる。

「見た気がするけど、気のせいかもしれない。」葉羽は自分を励ますかのように言った。だが、心の奥では不安が膨らんでいた。

二人はリビングルームを調べ始めた。棚には古い本が並び、壁には家族の肖像画がかけられている。中でも、一枚の絵が特に目を引いた。それは、失踪した家族の絵だった。葉羽はその絵をじっと見つめ、何か引っかかる感覚を覚えた。

「この家族、どこかで見たことがある気がする…」葉羽はつぶやいた。

「私も…どこかで見たことがあるかも。」彩由美も絵に目を凝らしながら言った。

その瞬間、葉羽の脳裏に過去の新聞記事の内容がよみがえった。失踪した家族の名前、そして彼らが最後に目撃された場所がこの洋館であることを思い出した。彼は心の中で、何かが繋がっていることを感じた。

「この家族、ここで何が起こったのか、もっと調べなくちゃ。」葉羽は決意を固めた。

次に、彼らは別の部屋に移動することにした。廊下を進むと、突如として一陣の冷気が彼らを襲った。葉羽は思わず身震いした。

「寒い…」彩由美が言った。

「こんなに暑い夏なのに、どうしてこんなに冷たいんだ？」葉羽は不思議に思ったが、彼はそれを気にせず、ドアを開けた。

中に入ると、そこは書斎だった。古びたデスクがあり、周囲には本が散乱している。葉羽はデスクの上に置かれた一冊の本に目を留めた。それは古い日記のようで、ページが黄ばんでいた。

「これ、何かの手がかりになるかもしれない。」葉羽は日記を手に取り、ページをめくり始めた。

日記には、家族が過ごした日々や、次第に起こり始めた奇妙な現象についての記録が綴られていた。「音がする」「誰かが見ている」「時間が狂っている」といった内容が、まるで彼らが体験していることをそのまま反映しているようだった。

「これ、すごい…」彩由美が興味津々で覗き込む。

「でも、これを書いた人は、どうなったんだろう…」葉羽は不安を感じながら、日記を読み進めた。

その時、再び後ろで物音がした。振り返ると、今度は明らかに誰かがいる気配を感じた。葉羽は心臓が高鳴るのを感じ、彩由美の方を見た。彼女の表情も緊張に包まれている。

「誰かいるのか…？」葉羽が声を低くして言った。

その瞬間、部屋の隅にあった大きな鏡に目が止まった。鏡の中には、何かが映っている。葉羽は息を呑んだ。鏡に映る自分たちの後ろに、ぼんやりとした影が見えたのだ。

「彩由美、あれ…見える？」葉羽は恐る恐る尋ねた。

「見える…でも、あれは…誰なの？」彩由美の声は震えていた。

二人は恐怖と好奇心が交錯する中、その影をじっと見つめた。影は徐々に形を持ち始め、まるで彼らに向かって手を伸ばしているように見えた。葉羽は思わず後退り、彩由美も彼に寄り添った。

「逃げよう、葉羽！」彩由美が叫ぶ。

葉羽は彼女の手を引き、急いで書斎から飛び出した。廊下を駆け抜け、リビングルームへと戻る。心臓が激しく鼓動し、冷や汗が背中を流れる。

「どうしてこんなことが…」葉羽は息を切らしながら言った。

「私、もう帰りたい…」彩由美も不安そうに呟く。

だが、葉羽は冷静さを取り戻そうとした。「まだ何かを解明しないといけない。これが呪われた洋館の真実なんだ。」

二人は再びリビングルームに戻り、今度は何か手がかりを見つけるために別の部屋を探し始めた。彼らの心には、恐怖が迫る一方で、真実を求める探求心が燃え上がっていた。

その時、ふと廊下の奥から、低い声が聞こえた。「助けて…」

葉羽はその声に驚き、思わず振り返った。彩由美の目は大きく見開かれ、二人は再び言葉を失った。彼らはその声がどこから来ているのかを確かめるために、恐る恐るその方向へと向かうことにした。恐怖の中に隠された真実が、彼らを待っているのかもしれない。