運命のパズル

葉羽

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4章

消えた文化祭の資金

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第4章: 消えた文化祭の資金

予告状が届いてから3日後、学園は突如として騒然となった。
「なんだって?文化祭の資金が消えた?」
教室中に驚きの声が広がる中、葉羽は静かに状況を観察していた。彼の隣では、彩由美が心配そうな表情を浮かべていた。
「葉羽くん、これって...」
葉羽は小さく頷いた。「ああ、おそらくあの予告状と関係があるな」
突然、教室のドアが勢いよく開き、学園祭実行委員長の佐々木が飛び込んできた。彼の顔は青ざめ、汗が滝のように流れていた。
「大変だ!会計係の山田が姿を消した!」
教室は一瞬静まり返った後、さらに大きな騒ぎとなった。
葉羽は眉をひそめた。「山田...あの地味な眼鏡の子か」
彩由美が小声で付け加えた。「うん、いつも一人で会計の仕事をしてた子...」
葉羽は立ち上がり、佐々木に近づいた。「詳しく説明してくれ」
佐々木は深呼吸をして落ち着きを取り戻そうとした。「今朝、会計を確認しようとしたら、金庫が空っぽだった。そして山田の机に...」
彼は trembling hand で一枚の紙を取り出した。葉羽はそれを受け取り、目を通した。
「さようなら。もう戻りません」
簡潔な文面に、葉羽の目が鋭く光った。
「これは...」
「自殺の遺書...なのかな」彩由美が心配そうに言った。
葉羽は首を横に振った。「いや、違う。これは偽装だ」
「え?」佐々木と彩由美が同時に声を上げた。
葉羽は二人を見つめ、冷静に説明を始めた。「まず、この文面。山田のノートを見たことがあるが、彼女の筆跡とは明らかに違う。それに、なぜ『さようなら』と書いた後に『もう戻りません』と重ねて書く必要がある?不自然だ」
佐々木は目を見開いた。「じゃあ、これは...」
「ああ、誘拐だ」葉羽は断言した。「おそらく、資金を持ち去った犯人が山田も連れ去ったんだろう」
教室は再び静まり返った。葉羽の推理に、誰も反論できなかった。
「でも、なぜ...」彩由美が小さな声で言った。
葉羽は窓の外を見つめながら答えた。「それを解明するのが、僕たちの仕事だ」
彼は突然、クラスメイトたちに向き直った。「みんな、聞いてくれ。これは単なる資金の盗難事件ではない。山田の安全も関わっている。僕たちで真相を突き止めよう」
クラスメイトたちは驚いた表情を浮かべていたが、徐々に頷き始めた。葉羽のリーダーシップに、誰もが従う空気が生まれていた。
「よし、じゃあ手分けして調査しよう」葉羽は指示を出し始めた。「佐々木、君は教職員に事情を聞いてくれ。彩由美、君は山田の友人たちから情報を集めてくれ。僕は現場を調査する」
みんなが動き出す中、彩由美は葉羽の袖を引いた。「葉羽くん、大丈夫?」
葉羽は珍しく優しい表情を浮かべた。「ああ、心配するな。必ず真相を突き止めてみせる」
彩由美は頬を赤らめながら頷いた。「うん、私も頑張るね」
二人が別れ際、葉羽の脳裏に一つの考えが浮かんだ。
「これは...単なる盗難や誘拐じゃない。もっと大きな何かが...」
彼はその考えを振り払うように首を振り、調査に向かった。真相への第一歩を踏み出す時が来たのだ。
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