運命のパズル

葉羽

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3章

学園祭の準備と謎の予告状

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第3章: 学園祭の準備と謎の予告状

夏の日差しが強くなり始めた7月中旬、神藤葉羽の日常は少しずつ変化していた。放課後の時間は、もはや図書室で一人推理小説を読むだけのものではなくなっていた。
「葉羽くん、この謎はどう?」
望月彩由美の声に、葉羽は考え事から我に返った。二人は放課後の教室で、学園祭の準備に没頭していた。
「ああ、それは...」葉羽は彩由美が書いたメモを覗き込んだ。「もう少し複雑にした方がいいかもしれない。でも、ヒントはもっと明確に」
彩由美は真剣な表情で頷いた。「そっか、分かった!じゃあ、こうしてみようかな...」
葉羽は彩由美の熱心な様子を見て、思わず微笑んだ。彼女と一緒に企画を進める中で、葉羽は徐々に学園祭に対する興味を持ち始めていた。
「ねえ、葉羽くん」彩由美が突然顔を上げた。「私たちの企画、結構評判いいみたいだよ。他のクラスの人たちも楽しみにしてるって」
葉羽は少し驚いた顔をした。「そうなのか...」
「うん!みんな、葉羽くんが考えた謎解きゲームを楽しみにしてるんだって」
葉羽は照れくさそうに頭をかいた。他人から評価されることに慣れていない彼にとって、この状況は新鮮だった。
そのとき、教室のドアが勢いよく開いた。
「大変だ!」
慌てた様子で飛び込んできたのは、学園祭実行委員長の佐々木だった。彼の手には一枚の紙が握られていた。
「どうしたの、佐々木くん?」彩由美が心配そうに尋ねた。
佐々木は息を整えながら、二人に紙を差し出した。「これ...今朝、職員室の前に置いてあったんだ」
葉羽は紙を受け取り、目を通した。そこには、不規則な文字で次のような文章が書かれていた。
「学園祭当日、君たちの大切なものを奪う。止められるものなら止めてみろ」
葉羽の眉間にしわが寄った。「これは...予告状?」
「そう見えるよね」佐々木は深刻な表情で言った。「でも、誰が何のために...」
彩由美は不安そうな顔で葉羽を見た。「葉羽くん、これってどういうこと?」
葉羽は黙って予告状を見つめていた。その目には、これまでにない光が宿っていた。
「面白い...」葉羽は小さく呟いた。
「え?」彩由美と佐々木が同時に声を上げた。
葉羽は二人を見て、珍しく笑みを浮かべた。「これは、僕たちの謎解きゲームの一部じゃないのか?誰かが盛り上げようとして...」
「違うよ!」佐々木が慌てて否定した。「僕たちはこんなの作ってない。本物の脅迫状かもしれないんだ」
葉羽の表情が真剣になった。「なるほど...」
彼は予告状を丁寧に折りたたみ、ポケットにしまった。
「佐々木、これのことは他の人には言わないでくれ。僕が調べてみる」
「えっ、でも...」
「大丈夫」葉羽は珍しく自信に満ちた声で言った。「これが本物だとしても、僕が解明してみせる」
彩由美は心配そうな顔をしながらも、葉羽の決意に満ちた表情に心を打たれた。
「私も手伝うわ」彩由美は葉羽の隣に立ち、強く言った。
葉羽は少し驚いた顔をしたが、すぐに頷いた。「ああ、助かる」
佐々木は二人を見て、少し安心したような表情を浮かべた。「分かった。じゃあ、二人に任せるよ」
佐々木が去った後、教室には葉羽と彩由美だけが残された。
「ねえ、葉羽くん」彩由美が静かな声で言った。「本当に大丈夫?危なくないかな...」
葉羽は彩由美をまっすぐ見つめた。「心配するな。これは僕にとって、現実の謎解きゲームだ。必ず真相を明らかにしてみせる」
彩由美は葉羽の決意に満ちた表情に、胸が高鳴るのを感じた。
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