孤島の洋館と死者の証言

２章

不気味な洋館

葉羽と彩由美は、参加者たちと共に洋館の中へと足を踏み入れた。古びた扉が重々しく閉まり、彼らの後ろで音を立てる。瞬間、葉羽の心に一瞬の不安がよぎった。再びその扉が開くことはないのではないか、という暗い予感が彼を包む。

洋館の内部は、薄暗い照明に照らされた広々としたホールが広がっていた。高い天井には、複雑な模様が施されたシャンデリアが吊り下げられており、埃が舞っている。壁には、古びた肖像画がずらりと並び、まるで彼らを見守っているかのような視線を向けていた。葉羽は、その絵画たちが語りかけてくるような気配を感じ、背筋がぞくりとした。

「ここ、本当に面白いイベントになるのかな？」彩由美が不安そうに呟く。

「大丈夫、きっと何かあるさ。」葉羽は自信を持って答えたが、自らの言葉に少し戸惑いを覚える。なぜか、この洋館が持つ独特の雰囲気に彼の心は引き寄せられた。

参加者たちはホールの中央に集まり、主催者が説明を始める。彼の声は低く、冷たい空気の中で響く。「皆さん、ようこそ。この洋館では、特別な推理体験が待っています。これから起きる事件を解決するために、各自の知恵を絞ってください。」

その言葉を聞いた瞬間、葉羽の心が高鳴る。彼は推理小説の主人公になったような気分だった。しかし、同時に胸の奥に不安が広がる。参加者たちの中には、何か隠された秘密を持っている者がいるのではないかという直感があった。

説明が終わり、参加者たちが自由に洋館内を探索することが許可される。葉羽は彩由美の手を引き、彼女と共に一番近くにある部屋に向かうことにした。そこは、書斎のような部屋で、古い本が整然と並べられていた。

「すごい、本当に古い本ばかりね！」彩由美が目を輝かせ、棚を眺める。

「うん、ここには興味深い資料がたくさんありそうだ。」葉羽は本の表紙を手に取る。タイトルは不明だが、古びた革表紙が彼の好奇心をくすぐった。

すると、突然、背後から冷たい風が吹き抜ける。葉羽は思わず振り返ったが、そこには誰もいなかった。彼の心に再び不安がよぎる。

「どうしたの、葉羽くん？」彩由美が心配そうに問いかける。

「いや、なんでもない。ただ…風が強かっただけだ。」葉羽は笑顔を作り、彼女の不安を和らげようとしたが、心の奥では何かが彼を引き留めている。

探索を続ける中で、二人は不気味な絵画や、古い家具が並ぶ部屋を次々と見て回った。ある部屋では、鏡が壁に掛けられていた。その鏡は、まるで自身の姿を映し出すだけではなく、何かを語りかけてくるような不気味さがあった。

「この鏡、なんだか変だね。」彩由美が少し怖がりながら言った。

「確かに…」葉羽も感じていた。鏡の中の自分たちの姿が、どこか歪んで見える。まるで別の世界が映し出されているようだった。

その時、葉羽の視界の隅に、何か動く影が見えた。思わず目を凝らすと、そこには一瞬、白い服を着た少女の姿がかすかに映り込んだ。彼は一瞬息を呑み、彩由美にそれを伝えようとしたが、少女の姿は瞬時に消えてしまった。

「葉羽くん、どうしたの？」彩由美が不安げに彼の顔を覗き込む。

「いや、何でもない。ただ、ちょっと目が疲れたかな。」葉羽は笑顔を作り、心の動揺を隠そうとした。しかし、彼の心の中では、何か恐ろしいものが目覚め始めていた。

その後、二人は再びホールに戻り、他の参加者たちの様子を観察する。どの顔にも緊張感が漂っている。葉羽は、彼らがそれぞれ抱える秘密や不安に思いを馳せた。

「ねえ、葉羽くん。みんな、何か隠している気がしない？」彩由美がつぶやく。

「そうだね…何かが起こりそうな予感がする。」葉羽は、心の奥に潜む不安を感じながら答えた。

その瞬間、突然の停電が訪れた。真っ暗な洋館の中で、参加者たちの悲鳴が上がる。葉羽は慌てて彩由美の手を強く握り、冷静さを保とうとした。心臓の鼓動が耳に響き、彼は周囲の気配を感じ取ろうとした。

「葉羽くん、どうしよう！」彩由美の声が震えていた。

「落ち着いて、必ず明かりが戻るから。」葉羽はそう言いながら、心の中で緊張感が高まっていくのを感じた。この暗闇の中に、何か恐ろしいものが潜んでいるような気がしてならなかった。

その時、彼の耳元でかすかな声が聞こえた。「助けて…」

葉羽は驚き、思わず後ろを振り返ったが、誰もいない。彼の心は不安でいっぱいになり、暗闇の中で何かが彼を待ち受けているのではないかという恐怖が広がった。