推理の果てに咲く恋

葉羽

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14章

最後の晩餐

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第14章: 最後の晩餐

工場の裏手、月明かりに照らされた空き地。葉羽、彩由美、佐々木の三人は、中村先生と武装した男たちに完全に包囲されていた。逃げ場はない。

「さて、どうしましょうか」中村先生が不気味な笑みを浮かべる。「君たち、ここまで良くやったね」

葉羽は冷静さを保とうと努めながら言う。「なぜですか、先生。なぜこんなことを...」

中村先生は肩をすくめる。「なぜって...そりゃあ金だよ。権力だよ。世の中、そんなもんさ」

彩由美が震える声で言う。「でも、生徒たちを裏切るなんて...」

「裏切り?」中村先生が笑う。「世の中、裏切りの連続さ。君たちもいずれ分かるさ」

その時、佐々木が一歩前に出る。「私たちには証拠がある。全てを明らかにしてみせます」

中村先生の表情が一瞬曇る。しかし、すぐに余裕の笑みを取り戻した。

「そうか。だが、その証拠も、君たちも、ここで消えてもらうよ」

彼が手を上げた瞬間、武装した男たちが動き出す。

「待ってください!」

突然の声に、全員が振り向く。そこには...校長先生の姿があった。

「もういい。全て警察に話す」

校長の声には、疲れと後悔の色が滲んでいた。

中村先生の表情が凍りつく。「校長...まさか裏切るつもりじゃ...」

その瞬間、遠くからサイレンの音が聞こえてきた。

「警察だ!」誰かが叫ぶ。

場内が混乱に陥る中、葉羽は咄嗟の判断で二人の手を取った。

「逃げるぞ!」

三人は全速力で走り出す。背後では銃声が響き、叫び声が聞こえる。

彼らは必死に走り続けた。街灯の少ない裏道を抜け、人気のない公園を駆け抜ける。

ようやく安全そうな場所に辿り着いた時、三人は崩れるように地面に座り込んだ。

「はぁ...はぁ...無事だったんだね」彩由美が安堵の表情を浮かべる。

佐々木も深く息をつく。「ええ...でも、まだ安心はできないわ」

葉羽は真剣な表情で二人を見つめる。「ああ。でも、俺たちにはまだやるべきことがある」

月明かりの下、三人は互いの顔を見合わせた。そこには疲労の色が濃くにじんでいたが、同時に強い決意の光も宿っていた。

「私たち...最後まで真実を明らかにする?」彩由美が小さな声で尋ねる。

葉羽は静かに頷く。「ああ。ここまで来たんだ。最後までやり遂げよう」

佐々木も同意する。「そうね。私たちにしかできないことがあるはず」

三人は再び立ち上がる。疲れた体に鞭打ちながら、彼らは歩き出した。

行き先は、まだ分からない。しかし、彼らの心の中には、真実を追い求める強い意志が燃えていた。

そして、彼らはまだ知らなかった。この夜の出来事が、彼らの人生を大きく変えることになるとは。学校の闇、大人たちの裏切り、そして彼ら自身の成長。

全ては、まだ始まったばかりだった。

夜空に輝く星々が、静かに彼らの旅立ちを見守っていた。
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