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103.解放
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魂に刃が届くなら、魂を覆っている魔力の殻にも当然届くはずだ。
鞘を捨てて、シャツのボタンを外し、刃をはだけた左胸に当て、柄を両手で握った。
「楓ちゃん!」
背後でバチバチと音がして、声は遮られた。
刀に魔力をありったけ込めて胸に押し当てた。
「刺され。」
切れない刃が胸に食い込む。
「刺され。刺され・・・!」
強く念じ続けて押し込んだら、ガラスが割れる様な音と共に、刃が砕けた。
けれど、私にはぼんやりと刀身が見えた。
胸に押し当てた刀身は押し込まれた感覚で胸に刺さった。
まだ心臓には至っていないのに、切っ先は何か固いものに当たった。
これが魔力の殻だ。反射的に気付いた私は、もう一度魔力を刀に込めて差し込んだ。
でも、ほんの少しだけしか刺さらなかった。
「刺され・・・!!」
がむしゃらに何度も何度も刀を引き抜いては勢いを付けて魔力の殻に切っ先を突き立てた。
なんとしても、私は行かなきゃならないから。
「壊れろ!壊れろ!壊れろ!」
殻には徐々に刺傷が付いていって、後一回、全力で刺せば壊れると直感するところまで来た。
魔力が切れかけてふらつく体。足を踏ん張って耐えながら、最後の一刺しをした。
その時確かに体の中で何かが割れた感覚がして、直後に重りが取れた様に体が軽く感じた。
やっと壊れたんだ。今までが嘘のように全身で魔力の流れを感じられる。
意識を持っていくだけで、自然に手に魔力を集中させることもできた。良かった、今までの訓練は無駄じゃなかった。
私は刀を鞘に収めると、感謝をして置いた。
魔力をどう使って行けばいいのか考えを巡らせながら、重々しく鎮座するドアに向き直った時だった。
急何かに包まれたような温もりを感じて、耳元で誰かが言った。
『私が導くよ。』
それは、とても優しくて温和な男性の声だった。
私はその見えない誰かに操られるように自然とドアに手をかざした。
鞘を捨てて、シャツのボタンを外し、刃をはだけた左胸に当て、柄を両手で握った。
「楓ちゃん!」
背後でバチバチと音がして、声は遮られた。
刀に魔力をありったけ込めて胸に押し当てた。
「刺され。」
切れない刃が胸に食い込む。
「刺され。刺され・・・!」
強く念じ続けて押し込んだら、ガラスが割れる様な音と共に、刃が砕けた。
けれど、私にはぼんやりと刀身が見えた。
胸に押し当てた刀身は押し込まれた感覚で胸に刺さった。
まだ心臓には至っていないのに、切っ先は何か固いものに当たった。
これが魔力の殻だ。反射的に気付いた私は、もう一度魔力を刀に込めて差し込んだ。
でも、ほんの少しだけしか刺さらなかった。
「刺され・・・!!」
がむしゃらに何度も何度も刀を引き抜いては勢いを付けて魔力の殻に切っ先を突き立てた。
なんとしても、私は行かなきゃならないから。
「壊れろ!壊れろ!壊れろ!」
殻には徐々に刺傷が付いていって、後一回、全力で刺せば壊れると直感するところまで来た。
魔力が切れかけてふらつく体。足を踏ん張って耐えながら、最後の一刺しをした。
その時確かに体の中で何かが割れた感覚がして、直後に重りが取れた様に体が軽く感じた。
やっと壊れたんだ。今までが嘘のように全身で魔力の流れを感じられる。
意識を持っていくだけで、自然に手に魔力を集中させることもできた。良かった、今までの訓練は無駄じゃなかった。
私は刀を鞘に収めると、感謝をして置いた。
魔力をどう使って行けばいいのか考えを巡らせながら、重々しく鎮座するドアに向き直った時だった。
急何かに包まれたような温もりを感じて、耳元で誰かが言った。
『私が導くよ。』
それは、とても優しくて温和な男性の声だった。
私はその見えない誰かに操られるように自然とドアに手をかざした。
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